第10話 アリシア視点
鍛冶師の婚約者を探すため、宮廷鍛冶師の元を訪れたのだが、そんな時、私はフェイクと出会った。
彼はエンチャントを行っていた。その技術に目を見張るものがあるのは当然ながら、何よりも彼のひたむきさ、一生懸命さに惹かれていった。
だから、だから――!
こうして彼と婚約関係を結べたことがただただ嬉しかった!
私が通路を歩きながら、そこでようやく口元をニヤニヤと緩めることが出来た。
引き締めようと思っても、引き締め直すことはできなかった。
「アリシア様お久しぶりです」
「久しぶり」
「今回は体調を崩してしまい、申し訳ございませんでした」
こちらに頭を下げてきたレフィ。
彼女は私の専属メイドだ。本来、私とともに同行する予定だったのだが、前日に熱を出してしまったため欠席となっていた。
そのことを彼女は謝罪していた。
「うん、大丈夫だったよ」
「それは良かったです。さて、その話はそこまでとしまして……それで、どこまで行ったのですか?」
それは恐らく、フェイクとのことだろう。
レフィにはたびたびフェイクのことを相談していたからだ。
……私は彼女になんといえば良いのか分からなかった。
「そ、その……まあ、うん」
「歯切れが悪いですね。屋敷を出発するときは結婚を申し込むって息巻いていたじゃないですか」
「い、言わないで!」
恥ずかしくなる。
……ああ、もう。
屋敷を出発するときの私はどうしてそんなとち狂ったことを彼女に宣言してしまったのだろうか。
私が恥ずかしくて顔を俯かせていると、レフィが眉間を寄せた。
「結婚、申し込んだんですよね?」
「も、申し込んだよ」
……先ほどのフェイクとのやり取りを思いだす。
ぎ、偽装の関係とはいえ、結婚の話をしたんだから、問題ない……はず。
というか、いきなり結婚って……。
大胆な行動をしてしまい、いまさらながらに恥ずかしさがこみあげてくる。
「……アリシア様。なんだか少し引っかかるのですが。これから屋敷に戻って式を挙げる準備をすると言っても良いのでしょうか?」
「そ、それは……ダメ」
……まだ、そこまでの関係ではない。
私がレフィを制止すると、彼女はちらとこちらを見てきた。
どうせ明日には分かることなんだ。私はため息をついてから、彼女に事情を説明した。
「……なるほど、偽装結婚のお願いをした、と」
「そ、そうなんだ……それ以上は、無理だった……」
恥ずかしくなって誤魔化したときのことを思いだすだけで、また恥ずかしくなってくる。
私の方をじっと見ていたレフィは、考えるように顎に手を当てた。
「……まあ、よほど抜けている人でなければアリシア様の態度から察するとは思いますが」
「私そんなに分かりやすい態度してる……?」
「ええ、たいそう。恐らく、フェイク様にも筒抜けかと」
そ、そんな……またも恥ずかしくなってきてしまった。
彼女の言葉は想像もしていなかった。
私としては、立派に隠し通していた。
「偽装結婚、とはいえ籍を入れてしまえばこちらのものですから速やかに結婚の準備を勧めましょう」
「で、でもお父さんに認めてもらわないと、難しい……」
「……そうですね。とりあえずは鍛冶師として活動してもらい、その能力をゴーラル様に認めてもらうしかありませんね」
……やっぱりそうだよね。
私の家は昔は鍛冶の家として有名だった。
だから、家族の誰かは鍛冶師の才能を持った人と結婚することになっていた。
け、結婚……。
「……ふふふ!」
私はフェイクと結婚している姿を思い浮かべ、嬉しくなった。
貴族に生まれた時点で、自分の色恋に関しての自由はないと思っていた。
でも、でも――!
「大好きな人と結婚できるんだよね……!」
「喜ぶのはまだ早いと思いますが」
レフィが何か言っていたが、私はもうフェイクとの結婚を前提に考えていた。
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