預言者と対面3
少しばかり悩んだアクアは、素直にわからないと告げた。こればかりは、彼女にもわからないことだ。
「シオン君はなにか知ってるかもしれないけど、あたし達は知らない。わかってるのは、女神ファラーレ様が味方だということだけ」
それと、外に今でもこの世界を壊したいと思う誰かがいること。それだけは間違いないと思っていた。
今回シオンが外へ行ったのも、その辺りが関係している。だから戻ってこないのだと、少なくとも三人が思っていることだ。
「味方である女神様を助けるため、太陽神は出かけられたわけか。で、その隙にここを壊そうとか言うのかな。嫌な奴らだ」
もはや隠すことをやめたのか、どうせすべて知っているのだからいいかと思っているのか、胡坐で頬杖つくシルベルト。
注意するべきかと思いつつ、ルアナもすべて知っているのだからいいかと思う。
「セネシオ、例の予言を教えてやれ」
新しく下った予言、それはこの事態を表すのかもしれない。シルベルトは表情を引き締めて言った。
「今月の頭に、予言が下りました。太陽が翳り、闇が訪れるとき、月の輝きが戻るだろう。星は輝き、森への入り口開かれる」
セネシオの紡ぐ言葉は、わかるけどわからないというのが本音。
(太陽はシオン君、月はリオン君。星って誰だろ。森への入り口…)
森の意味はおそらくそうだろう、と思うことがある。けれど道が開くという意味がわからない。
(やっぱグレン君の方が詳しいよなぁ)
考えたりするのは苦手だと思うと、すぐさま放棄する辺りがアクアらしいとも言えるだろう。
情報は情報として頭に入れておいて、あとで考えるのが得意な人達に丸投げしようという考えだ。
「これで月神の転生と覚醒は確定したと思っていいんだろ、姉さん」
「うん、そうだね」
姉さんという言葉に、女王とルアナが鋭い視線を向けたものの、なにか言われる前にとアクアが答える。
自分としてはこの方がいいため、シルベルトの変わらない態度は気に入っていた。むしろ、女王やルアナもこうであってほしいほどだ。
大人になると態度が変わってしまうのは、少し悲しいなと思いつつも思考を戻す。
「お聞きしたいのですが、これでアクア様がわかることはどれほどでしょうか」
予言者とはいえ、すべてを知っているわけではない。月神の転生を予言したことで、ある程度のことは知らされている。
それでも他の者よりは詳しいといったレベルだ。
「太陽はシオン君だよね。翳るの意味はわからないけど」
誰よりも彼の強さを知っているからこそ、簡単にどうこうすることはできない。
この世界では絶対的な力を持つ太陽神が、やられることなどないと信じているのだ。
「では、それは留守にすることと捉えておきましょう。もしくは、外へ行ったことで太陽がないという意味かもしれません」
「おぉー」
考えてくれる人とわかれば、セネシオにすべて丸投げしようと考えを改める。
結果を仲間達に報告すればいい。仲間達も、今は他で異変がないか調べているのだから、なるべくなら負担をかけたくはなかっただけに、助かったと思った。
次というようにセネシオが問いかければ、それにたいしてアクアがわかることを教える。
「闇は外から来たものを表すのか。星視でも闇がどうのって言われて、さっぱりだったんだよな」
納得したようにシルベルトが言えば、女王も頷く。星視の結果として、定期的に闇という言葉が出てくるようになったのは、つい最近のこと。
さすがに意味がわからなかった。闇がなにを示すのか、見当もつかなかったのだ。
ようやくわかったと二人は言う。
「太陽神がいない間に、外から闇がやってくる。攻撃をしてくるということですね。そして、月神が覚醒する」
月神が転生していることは、アクア達だけが把握していること。それが誰なのか、そのことも当然ながら知っていた。
シオンが一度だけ見に行ったからだ。
「星の意味は、ちょっとわからない。星の女神を表すのかもしれないけど」
月神の転生と同時に、星の輝きはなかった。アクアが知っている星の女神を表すわけではない。それだけは言い切れたのだ。
(エリルちゃんではない……星を表す誰かがいる)
けれど、今の段階では誰なのかわからない。
誰なのか気になるところではあるのだが、そのときがくればわかるだろうとも思う。
「星は置いておくとしましょう。問題なのは外からの攻撃ですから」
太陽神がいないと知ってしまった以上、今の問題は彼が戻るまでどうやって外と戦うか、ということになる。
外というものも詳しくない上に、一番情報を持っているであろう人物が太陽神のみとなれば、その都度対処していくしかない。
「ちなみに、森の意味はわかりますか?」
この世界で森を表すような人物がいるのか。その辺りは心当たりがなかった。
「たぶん、女神ファラーレ様かなって」
大地の女神であることから、示す言葉が森になったのかもしれない。
だが、それでなぜ彼女への道が開くのかがわからないのだ。
「……つまり、月神が覚醒し、星と例えられた人物になにかがあったとき、外への道が開くということでしょうか。外への出入りはどうなっているのでしょう」
「えっと、えー……」
外へ行けるとは考えもしなかった。彼女の中では、シオンにしかできないことだと思っていたから。
どうなのかと考えたところで、やはりアクアではわからない。外に関しての知識がないのだ。
「月神なら、外へ行けるってことかもしれませんね」
女王の言葉に、それはあり得るかもしれないとアクアは頷く。
外へ行くことができるのはシオンだけ。もしかしたら、グレンも行けるのかもしれないと思っているのだが、それを確認することはできない。
今現在、道は閉じてしまっているからだ。
「だとしたら、やっぱ星って星の女神じゃねぇの。月神が新しくなるんだから、エリル様じゃなくなったんだろ」
「んー、そうなのかな。どうやって選ばれるんだろ」
もしそうなら、どうやって選ばれるのだろうか。選ばれる基準が気になるところ。
「調べてみましょう。月神の周辺にそれらしい人がいないのかどうか」
「そうだね。あたしも視てみようかな」
星が教えてくれるかもしれない。彼女にとって、星は真実だけを教えてくれる存在。
今までも、一度だって外れたことはない。なによりも信用できるものなのだ。
「では、それぞれが情報を集めて話をしましょう」
女王の一言で、その場はお開きとなった。
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