英雄の息子達3
それは今はどうでもいいことだと切り捨てるから、エシェルがクスリと笑う。
「西の大陸へレインは捜しに行った」
そこへディアンシ、ヴェストリア、クレドが付き添い、当時メリシル国で勉学を学んでいた姫と護衛の二人も合流した。
紹介するように姿を映し出したのは一人のセイレーン。
さすがに似すぎていて三人ともわかる。このセイレーンが娘なのだと。
「子供は二人だけなのか?」
「あぁ。俺のところはな。娘のリファラだ。能力はアクアと同じようなもので、神官に教わった方がいいかとやった」
次の瞬間、三人ともが不思議そうにグレンを見る。妻は元神官ではないのかと。
「あれに教えるのは無理だ…」
そして、その一言でなんとなくだがすべてを察した。
「わかった。納得した」
代表するようにシュレが言うと、二人とも頷くからイリティスが苦笑いを浮かべて紅茶を飲む。
これで納得されてしまうのだから、アクアはいいのだろうかと思ってから、すぐにこれでいいかと思い直す。
姫であるリファラの護衛としてついていたのがイェルク・ソレニムスとフェーナ・ノヴァ・オーヴァチュアの二人。
映し出された二人に、イェルクはセイレーンとのハーフだ言われれば、この時代では珍しいのではないかとエシェルが言う。
「珍しいもなにも、初めてだったらしい。あとで知った」
すべて終わって落ち着いた頃、シオンが教えてくれたことだった。この後、増えていくかもしれないからと。
「だから、イェルクのことは色々と助けられたな。本当に増えてきて、困ったときはあいつのことを例えにしてたときもある」
本人の了承を得た上で、記録として残しておいたのだ。
今現在でも、数は多くないことからその記録が大切にされている。
「反れて悪いが、なんでそいつだけなんだ」
「ソレニムス家は対象に入らないかってことだろ。妻がハーフエルフだからな。その先は記録として残してない」
エルフの血が入ったことで、セイレーンとしての影響が薄くなったからだと言えば、納得したようにシュレは引いた。
今はこの話題を広げている場合ではないから。
話を戻し、そこでイェルクが捜し人を知っていたことから、会いに行った話までする。
「スレイ・アルヴァースとシリン・アルヴァースの二人だ」
二人の姿を見せれば、息を呑む音がはっきりと聞こえた。
絵を見ているからこそ、アイカとエシェルでもわかる。二人は両親と瓜二つだと。
「これ、さすがに驚いたわよね」
「あぁ。本人だと言われても信じそうなぐらいにな」
『俺でもびっくりだぜ』
成長した姿は知らなかったからな、と言いながらヴェガがチョコを食べる。
似ているのは見た目だけではなく、中身もだからまた驚きなのだ。
「どいつもこいつも、自分の二代目育てたようなものだ」
そこには当然ながら自分も含まれているのだが、グレンは息子に限ってはクレドにも似てしまった気がしていた。世話のほとんどを任せていたから。
「否定しないけど…」
『だな…』
どことなく遠いところを見る一人と一匹に、三人ともが呆れたように見ていたのは見間違いではないだろう。
捜し出した先、そこでも魔物との戦いがあった。
とはいうものの、この辺りはすべて聞いた話だということを忘れるなと言う。実際にグレンが見てきたことではないのだと。
「喋る魔物だったのかい?」
あれだけではないのだろうと、アイカが問いかけると頷いて応える。
「喋ったそうだ。それは、スレイを狙っていたと」
レインが力を放った際に共鳴を起こしてしまったことから、居場所を察知されたのだろう。あとで状況整理をしていたときに判断したことだ。
「なるほどな。それがなかったら巻き込まれなかったかもしれないわけか」
「けれど、月神の息子なら無理でしょうね」
その可能性があっただけでしょうとエシェルが言うから、わかっていますとシュレも答える。
アイカもあまり発言しないだけで、ある程度は理解しているようだ。人選は間違いではなかったな、とグレンは内心笑った。
これならこの先も問題ないと。
同じようなことをイリティスも思ったのか、グレンを見て微笑んだ。
それまでなにも知らずに育ったスレイとシリン。二人へすべてを話すと決めた、二人の保護者達によって語られたのは、ヴェガが話した内容だとグレンは言う。
「それによって、本当はなにがしたかったのか知った。シオンは気付いていたようだが」
どのタイミングで知っていたのかわからないが、彼は知っていた。本当は弟がなにを望んでいたのか。
そして魔王の封印の秘密も。
「すべてが語られ、リオンが唯一子供達に残した物が渡ったとき、ひとつの地図が隠されていたことに気付いた」
『いやぁ、あれに気付いてよかったぜ。月明かりじゃないと浮き出ない仕掛けだったからな』
軽い口調で言うから、誰もが苦笑いを浮かべながら先へ進もうと頷く。
「そこに残されていたのは、スレイの聖獣だった」
補足しておくと、とグレンが言う。レインには聖獣がいないと。
いない一番の理由は、シオンが力を繊細に使うことが苦手だからと言われれば、仕方ないとヴェガが頷いてみせた。
『あいつにはどう頑張っても無理だ』
聖獣を作ったのはリオンで、その理由は力を抑える目的だった。関係は剣と鞘だと例えれば、三人ともが納得する。
スレイの聖獣が使った例えだが、案外わかりやすいとグレンも思っているのだ。
「俺は力の一部を使うだけだが、これより強いのがイリティスの使う力。さらに上がレインとスレイの二人だった」
イリティスですら聖鳥を連れている。そうすることで力をある程度抑えているのだと言われれば、どれだけ強いのかと思わされた。
神の力とは、それほどまでに強い力となるのか。
「少しばかり差があるみたいだけどね」
『太陽が一番強い。感情で左右する欠点付きだが』
それを抑える存在として虹の女神がいるのだとヴェガは説明した。
月神も太陽あっての強さであり、星の女神は一番弱い。ただし、月神といると力が増幅するのだと。
「特性があるわけか……」
けれど自分が手にした力は、それとは少し違うような気もしていた。持っているからこそ、シュレはそう感じるのだ。
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