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七英雄2

 七英雄とは、遥か昔に魔王と戦った者達のことを示す。人間であったシオン・アルヴァースとリオン・アルヴァースは双子の兄弟。


「西には別の名で知られていてね、太陽神と月神って呼ばれてる」


「太陽神と月神…」


 初耳だと思ったが、西の国は神聖国。確か神話が基本になっていたなと思い直す。


「実際的にも、この世界を創られた女神メルレールの息子なんだって言うよ」


 どこで知った情報なのかと思うが、長く生きているエルフだ。自分にはわからない情報網や、伝えられている歴史があるのだろう。


「まぁ、事実かどうかは本人に会うしかないけど」


「もういないですよね」


 魔王が現れたのは遥か昔。どれぐらい前かもわからないぐらいだ。


「いるよ。三千年前には、この国へ関わってる」


 思わぬ返しに、クオンは驚いたようにイクティスを見る。


 三千年前となれば、英雄王が現れた頃かと思いだす。


 確かに、英雄王は太陽神の加護を持つと言われていた。それは聖剣を意味すると思っていたのだ。


「太陽神は今でも、この世界を見守ってるんだ」


「月神は?」


 二人は一緒なのではないか。夢が二人を示すなら、絶対にそうだと言い切れた。


 境遇が関係しているのか、二人の絆はとても強い。離れるようには思えないのだ。


「その答えは、もうしばらくしたらわかるよ」


 ニッコリと笑う姿に、この問いかけはこれ以上無駄だと悟る。どことなくこの話は終わりだと、そう言われてる気がしたのだ。


「太陽神と月神には恋人もいるんだよ」


 聞いた瞬間、夢に出てきたセイレーンが脳裏に浮かぶ。なぜか彼女だと思ったのだ。


 虹の女神と呼ばれるイリティス・シルヴァンと、星の女神と呼ばれるエリル・シーリス。


 四人の力を分けられた残りの英雄。本来は八人だったのだと聞けば、それは知らないなと思う。


「三千年前にわかったことだけど、訂正はしなかったんだ。最後の戦いにはいなかったからって」


「それって」


 誰のことを言っているのだろうか。少しばかり気になった。


「ティア・マリヤーナ。フォーラン・シリウスの奥方だよ」


「ティア・マリヤーナ…」


 身体の奥底でなにかが反応する。その名前を知っていると。


 バルスデ王国では、ティア・シリウスという名で教えられているはずなのにだ。


「身籠られて、自分が受け取った聖剣をフォーラン・シリウスへ渡したようで」


 経緯はどうであれ二本の聖剣がこの国にあったのは、そういうことだったのかと納得する。


 現在、この国にフォーラン・シリウスが使っていた聖剣はない。三千年前に、当時の王が退位と同時に持っていってしまったから。


「フォーラン・シリウスは基本的に知っているよね」


 今の学校がどう教えているのか、さすがに知らないけどと笑いながら言う。


「ハーフエルフの英雄ですよね」


 七英雄の中で唯一ハーフエルフである人物。剣技は七英雄で最強とも言われていて、二刀流の剣士。


 北の大陸でシオン・アルヴァースと出会い、行動を共にしたと言われている。


「変わり者だとか」


 そして、当時の世界では変わり者と称されていた。今の時代でもそうなのかは、さすがにわからないことなのだが。


「そうだったらしいね。当時の話だけど」


 優しい笑みを浮かべる騎士団長は、なにもかも見透かしているようだなと思う。




「まだ話してるのか」


 そのまま他の六人についてイクティスが話し、クオンはおとなしく聞いていた。


 もとから薄暗い書庫だったこともあり、すでに夜だということに気付いていなかったようだ。


「セルティ、もうそんな時間?」


「あぁ。まさか、まだいようとは思いませんでした」


 明かりが廊下に漏れていて、気になり覗いただけだった。すでに城に勤める者は帰っていて、誰もいないと思っていたから。


「クオンと話すのが楽しくてね」


「すみません。こんな時間まで」


 さすがにまずいと思ったのか、クオンは慌てたように立ち上がる。


 時間ぐらいは気にするべきだったと後悔した。残りの職務をサボった、というレベルではない。


「いいんだよ。僕が誘ったんだから」


 クオンが気にすることではないとイクティスは笑う。


 途中から話に熱中していたこともあり、残ってしまったマフィンを包む騎士団長にクオンはさらに慌てる。


「持って帰っていいよ。僕は食べないし」


 いや、しかし、と口ごもる姿に、セルティも笑った。


「イクティス様は、あまりこういったのを食べないんだ」


 口の中がパサパサするからだと言われれば、確かにずっと紅茶を飲むだけだったと思いだす。


「では、頂いていきます」


 残した場合、処分されてしまうかもしれない。そう思ったら、残すこともできなかった。もったいないと思ったのだ。


「今日はありがとうございました」


「なにかあれば、いつでも聞きにおいで」


 ここにいるときはサボってるときだ、などという、嘘か本当かわからないことを言うから苦笑いを浮かべる。






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