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メルレールの英雄-クオン編-前編  作者: 朱漓 翼
3部 永久の歌姫編
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星視と予言の力

 結局のところ、フィフィリスがティア・マリヤーナの転生者である、ということしかわからないままだ。


 とはいっても、これは特に問題ないこと。昔など気にしていては仕方ない。


(北に……ディアの星! ディアの聖剣を持つ者がいる!)


 突然光りだした星に、アクアが驚いたように見入る。これは間違えようがない。どこからどう見ても、彼女の知っているディアンシ・ノヴァ・オーヴァチュアの星だ。


 すでに動いているとは聞いていたが、ここにいるとは思っていなかった。


 問題はこれが誰かなのだが、今の段階ではわからない。それとも、動いているが得られていないのか、と思い直す。


(ひとまず、北で動いてることはわかった。次は…)


 フェーナを確認しようと思ったとき、以前も視た三つの星に変化が起きていると気付く。


(あった、あれが月神の転生者! もう兆しが出てる!)


 つまり、覚醒が始まっているということ。月神が目覚めれば、この状況は変わるかもしれない。変わってくれと願いたくなる。


 隣に寄り添う群青色の輝き。そちらに変化はないが、月神の加護を感じ取ることはできる。


「月神の覚醒が始まった……」


「星の女神はどうでしょうか?」


 想定内の出来事であり、そちらよりも星の女神が気になるはずだと言われれば、そうだねと頷く。


「想定している人物に変化はないけど、あれは……たぶん聖鳥」


 微かにだが、深い緑の星周辺にそれらしい輝きをちらつかせている。おそらく、聖鳥の輝きだろうとアクアは思っていた。


 エリルが連れていた聖鳥はどこかへ飛び去っていったが、その後どうなっているのかを誰も知らない。シオンですらわからないのだ。


 消えてしまった可能性もあるが、月神の聖獣が残っているのを考えれば、消えていない可能性もある。どちらなのかは、そのときになってみなければわからないだろう。


「どのように視えますか?」


「まだ小さい光。欠片みたいな感じかな」


 それがいくつもあるような状態だと言えば、さすがにセネシオでもわからない。予測はつかないというのが正解だ。


「触れてもいいですか?」


「えっ…」


 急にどうしたのかと思ったが、セネシオの言うことなら意味があるはずだ。


 頷くと肩に触れる手。夫ほどではないが、それでも剣を握ってきた手だとわかる。争いとは無縁である神官の手ではない。


(視え方が変わった…)


 どんな考えだったのか、星を視て気付く。先を視る力が加わることで、星が先を示しだしている。


 この変化が起きるかもしれないと狙ってのこと。さすがだとアクアは笑う。


「欠片が集まって聖鳥になる……でも、これはエリルちゃんの聖鳥とは少し違う」


「なら、新しい聖鳥ということですね。エリル様の転生者ではないですし、新しい女神のための聖鳥となるのかもしれません」


 それは正しいかもしれない、と思えた。月神はリオンの転生だが、星の女神はそうではない。新しい女神に合わせた聖鳥となるのだろう。


「これで……んー」


「まだなにか?」


 ひとつの星を視ながら悩む姿に、なにかあるのだろうかとセネシオも視てみる。


 けれど、さすがになにかを感じることはなかった。セネシオでは手助けができても、視ることはできないようだ。


「えっと……あれが、グレン君に似てるんだよね」


 どうしてだろうかと悩む姿に、情報が足りないなとセネシオが求める。


「星は表すのに、前世も含まれますよね」


 いない、ということを読み解けたのだから、前世の人格が存在すれば読めるのかという確認。


 もしもそうなら、それは前世を表すのではないか。


「グレン君と繋がる前世かぁ、そんな、の……」


 いるわけないと言おうとしたアクアが固まった。彼は死んでいないので、グレンという転生者は現れない。


 けれど、彼の元になっている人物がいる。ほぼ同じ存在と言える人物がだ。


「フォーラン・シリウスがこの時代に転生してる……」


 まさかと言いたそうに星を視るが、間違いなくその星は輝いている。どこかにいることを示しているが、本人が隠しているのか、自覚していないのか。


 どこにいるかまではわからなかった。


「偶然じゃ、ないよね」


「そうでしょうね。おそらく、月神の近くにいるのではないでしょうか」


 近くと言われ、フィフィリスにも言われていたと思いだす。近くにいるかもしれないと、彼女は気付いていた。


 情報だけ持っていけば、グレンの方が気付いてくれるだろう。


「次は……星が……」


「アクア様」


 驚いたように星を視る姿に、どうしたのかと問いかける。


「空が闇に覆われていく。これ、セネシオの予言と同じ…」


 星がなにかを訴えているのだ。それが予言と同じ内容だと思えた。


 空を覆う闇。星々が消えていく中、希望の光が輝いていく。けれど輝きが足りないと、今のアクアにはわかる。イェルク達と話していたことで、このままだと消えると知ってしまったからだ。


 この輝きではダメなのだ。もっと強い輝きが必要なのだが、どうしたらいいのかわからない。


(あれは……外からの来訪者を表すのかな)


 見慣れない輝きがひとつ。希望の光と似た輝きを放っていた。


(お願い…それを視せて)


 願ってみたが、輝き以上を視ることはできない。おそらく外から来た者だからだろう。この世界とは異なるところから来たのだから、星に表れただけでも十分だ。


(希望ってことは、シリンが言う通りだね)


 ただ、悪いものではないと確認できたのはよかったことだろう。あとはイリティスが動くのを待つだけ。


 最後にダメ元でシオンを視ることにしてみた。外へ行ってしまったことで、視ることはできないかもしれない。


 そう思っていたが、セネシオがいる影響だろうか。シオンを表す星の輝きが視られた。


(とりあえず、シオン君は無事みたいだけど……わかるのはそれだけ)


 いいことだけど、知りたいのはもっと深いところなだけに、素直に喜ぶことはできない。


「シオン君は無事みたい」


「そうですか。まずはよかったと思うことにしましょう」


「うん…」


 わかっているのだが、それでも複雑な気持ちになってしまう。星を視るだけしかできないことが歯痒い。


「アクア様! あれ!」


 ふと星空を見上げたセネシオは、彼でもわかるほどの闇が膨れ上がるのを見つける。


 自分でもわかるということは、普通ではないということ。


「闇の星……あれが、外から攻撃してきてるのかも」


 長時間視ていたら、影響を受けてしまうかもしれない。すぐに視るのをやめれば、身体がざわつくのを感じる。


 おそらく、闇を表す星が原因だ。もっと視たいが、なにかあってはいけない。セネシオも巻き込んでしまうかもしれないのだ。








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