コント【図書室】
場所:公立高校の図書室
ボケ:図書委員、ツッコミ:一般学生
ツッコミ「あのー、図書委員の人ですよね」
ボケ「どうした? 牛乳瓶だけど成績は中間くらいのがり勉君」
ツッコミ「何でキャッチボールでドッジボールしてくるの?」
ツッコミは一瞬だけ唖然とするものの、すぐに気を取り直す。
ツッコミ「シェイクスピアの本、どこにある?」
ボケ「あっちだよ。ほら。外国の本って目印があるだろ」
ボケが指差し、ツッコミは目を細める。
ツッコミ「……もう少し詳しく教えてくれ。外国の本って、範囲が広過ぎるだろう」
ボケ「パソコン使ってくれ。人間より有能だ」
ツッコミ「それ言っていいのかよ。……まあ分かった」
ボケ「俺はこっちをやらないといけないし」
ボケが本の山を抱え上げる。
ツッコミ「多いな!? え、それ返却された本だろう? 君一人でやるのか!?」
ボケ「ああ」
ツッコミ「他の人は? こういうのって当番制だろ?」
ボケ「今週の当番は俺なんだ。つい面倒で、溜め込んでしまった」
ツッコミ「自業自得だろ。しかも今日、金曜日だぞ」
ツッコミはパソコンで調べるが、首を捻る。
ツッコミ「多過ぎるな。どうしようか」
ツッコミはカウンターに行く。
ボケが、床の上に本を置いて、うずくまっていた。
ツッコミ「どうした!? 熱中症か!? でも、クーラーは効いてるし」
ボケ「筋肉痛が……」
ツッコミ「自業自得じゃないか」
ボケ「それはそうと、どうした?」
ツッコミ「いや、早く本を戻しに行けよ」
ボケ「レファレンスサービスも図書委員の仕事だ」
ツッコミ「何か急に格好良くなったな。実はさ、文化祭でやる劇の脚本を書く事になってさ」
ボケ「パクるんだな」
ツッコミ「違うよ!? 何か、参考になりそうな本があるかなって。それでシェイクスピアを読もうとしたんだけど」
ボケ「安直だな」
ツッコミ「知ってるよ。でも、数が多過ぎてさ」
ボケ「なら、これはどうだ? ロミジュリ」
ボケが一冊の本を見せる。
ツッコミ「カップリング名か。でも王道だな。じゃあ、それ借りるよ」
ボケ「毎度」
図書委員が、本のバーコードにスキャナーを当てる。
ピッという音が鳴る。
ボケ「六百円です」
ツッコミ「だから図書室でしょ!?」
ボケ「この本の値段だ。大事に読んでくれ」
ツッコミ「あ、おう」
ボケ「それと、読みたい本があるのに無かった場合、このリクエスト用紙に書くのをお勧めする」
ツッコミ「急に真面目だな」
ボケ「元は俺達の税金だしな」
ツッコミ「まあ、そうだな」
ボケ「そんな君には〝はじめての税金〟がお勧め」
ツッコミ「やっぱり商売か? まあ有り難う」
ツッコミは本を受け取ると、閲覧用のスペースで読み始める。
ボケ「脚本は書けそうか?」
ツッコミ「まだ読み始めたばかりだっての。お前は本を戻せよ」
ボケがおもむろに、床の上に本を置き、その上に腰を下ろした。
ツッコミ「本を椅子にしちゃ駄目だろ」
今度は頭を載せて横たわる。
ツッコミ「枕にしても駄目だって! お前、本は大事にしないと!」
ボケ「本は確かに大事だ! だがな、外側だけ大事にしても意味が無い。大事なのは、中身を読んで、どれだけ活かすかだ!」
ツッコミ「お、おう。そうだな、中身は大事だな。何だよ、急に真面目に」
ボケ「がー」
ツッコミ「いや寝るんかい!」
急にボケが起き上がり、手元のメモ帳に何かを書き始める。
ボケ「この本は、良く、眠れる」
ツッコミ「まさかお前……不眠症を治す本で、その書評を……?」
ボケ「つまらなさすぎて」
ツッコミ「駄目じゃんか! それ、本の書評に書いたら駄目な一文だろ!」
ツッコミはとうとう手元の本を閉じた。
ツッコミ「何かお前、書店のバイトにでも行ったら?」
ボケ「確かに、そういうスカウトもあった。だが、俺はここにいる」
ツッコミ「何か……わけでもあるのか」
ボケ「小さい頃から、憧れていたんだ。カウンターの、ピッピッに」
ツッコミ「スキャナーかよ! 全国どこにでもあるだろ!? コンビニでも書店でも!」
ボケ「それはそうと、脚本はどうだ」
ツッコミ「だから、読み始めたばかりだって……そもそも脚本の書き方も分からねえし」
ボケ「君は演劇部か? だったら、歴代の脚本が部室にあるはずだ。それを見たらどうだ」
ツッコミ「そんなのあるの!? 良く知ってるなぁ」
ボケ「図書委員だからな」
ツッコミ「図書室に置いてない本まで知ってるって事か?」
ボケ「図書室にも納品したいんだが、なかなか承諾してくれない」
ツッコミ「商売かよ。まあいいや。行ってくる。色々と有り難うな!」
図書委員が、人差し指を立てる。
ボケ「図書室では静かに」
ツッコミ「そういえばお前、図書委員だったな!」
おわり