表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

閑話 1

 別にどこかに行きたかった訳ではないの。ただ、少しだけお外に出たかっただけ。生まれてからずっと、お父様にもお母さまにも、里の皆にも外には出てはいけないって言われてきた。

 私はまだ『マナ』を上手く使いこなせないから、結界が張られている里の外に出たらダメなんですって。

 

 外に出なくても、里の皆と遊んだりお喋りしたり楽しいよ?あ、でも何処に行くにも護衛?っていって、ハーガス達が付いて来るの。しかも7人(・・)も!


 もう!意味わかんない!


 私が小さいからって、どうにかならないのかしら。

 お父様は「今は我慢しなさい」って言うし。


 あ、お父様はこの里の長なんだって!偉いんだって!えっへん!


 いつも知らない人と(・・)難しそうなお話をしてる。


 お父様は昔、世界?を旅した事があるって言っていた。私もいつか世界?を旅して色んなモノを見たいなぁ。世界ってなんだろう。里の外の森の事かなぁ?


 あの日は里の外の森に妖精さんが来ていて、お話できないかな。ってうっかり結界を超えてしまったの。その時は別に何もなかったのだけど、私に気付かず妖精さんが転移する魔法を使ったの。もう帰るところだったみたい。


 私は中途半端に魔法の範囲に入っていたから、妖精さんとは別の場所に転移してしまったみたい。勿論私だけ。ハーガス達は居なかったわ。


 初めて里以外の景色を見たわ。


 

 森とは違って、お空が綺麗に見える。遮るものは何もない。見渡す限りの草原。夢中で走ったわ。自分が『金狐(・・)』の姿になっている事も忘れて。


 里の中に居る時は、意識しなくても獣人の姿になれるけど、外に出たら上手く獣人になれなかったの。でも、今はだれも見ていないし良いよね?


 途中でおっきい木が在ったの。そこに不思議な匂いのする人間が寝てたんだけど…。


 獣人とは違う人間。尻尾も無いし、どっちかと言うとエルフさんみたいね。


 何か気持ち良さそうに眠っていたわ。変な恰好。


 近づいて顔をみたの。そうしたら、楽しい夢でも見ているのかしら、ふふ、微笑んでいたの。それを見ていたら、つい?悪戯しようと思っちゃって。

 お顔をね、舐めたのよ。たくさん!


 そうしたら、その人間は苦しそうに目を覚ましたの。もう!可笑しかったわ!


 でも、私の今の姿は『金狐』だから、やっぱりビックリするよね?って思ったのだけど。

 里ではね、この姿になると皆遠ざかって行って、見てはいけないモノを見るような目で私の事を見るの。

 だから、一瞬身構えちゃったの。でもね、その人間は、私の事を怖がらずに……その、なんていうの?撫でてくれたの。撫でてくれたのよ?!

 だからね、凄く嬉しかったの。


 時々キツネさんって言ってたけど、キツネさんって何かしら。


 そう、それでね、撫でられている内に安心?っていうのかな。心地良くなって来ちゃって、人間かれ(・・)の足の上で寝ちゃってたんだ。ほんとに不思議な匂いのする人間だったの。


 でね、起きた時にビックリしたんだけど、ハーガス達が私のマナを感知してここまで来ていたの!凄いよね!

 後から聞いたんだけど、里からそんなに遠い場所じゃなかったから感知できたんだって。

 

 それからハーガスが、彼に(・・)沢山人間が住んでいる場所を教えてあげたんだけど、歩き続けて2日も掛かるのに歩いて行かせようとするから、連れて行ってあげてってお願いしたの。だって、あんまりじゃない?

 その後は、彼を運んで(・・・)人間が住んでる所まで行ったの。


 サヨナラするときにね、彼に良いことがあります様に!って、おまじないを掛けたの。他の人間が彼を迎えに来たから、私たちは里に帰って来ちゃったけど…。



 元気かなぁ。また、会えたらいいなぁ。なんて。もう外に出れないから無理かもね。




 名前くらい、聞いておけば良かったな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ