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異世界all  作者: RATO
12/14

12話-愛する者の為に-

日の光が視界を妨げ刺激する蒼天の彼方。暗黒の流星と共に大地を羽ばたく少女は南の大陸に位置する国【共帝国(きょうていこく)・ガッドリーシャ】へと辿り着こうとしていた。


「ぬお~ッ!!ミーちゃん飛んではぁぁるぅぅううッ!!」


「ギャオラアアアアアッ!!!」


「がおらああああッ!!にゃははは!!」


フルタカ・ミイラ。十六歳にして初めての大陸へ旅立つ。


そんな事を知るよしもない王家では。


「なるほどな。十六になる娘の見合いが上手くいっていないと。ここではそんな風習があるのか。しかも期限までに成功しなければ強制的に過酷な試練までも用意されてると」


「確かにそれはアシュミーネだって不安になるわよねぇ・・・ミイラちゃんの事を誰よりも愛していたものね」


「しかしながらアシュミーネよ。このような事を言ってアレなのだが、娘はここミラージュガルシャの姫であろう。大国中の大国ともあれば寄ってくる王子はいくらでも居るのではないか?」


「ええ…最初はそうだった・・・でも、ミイラちゃんを前にすると各国の王子達は揃って苦笑い…その理由さえも分からぬままここへ訪れる王子達の足取りは日に日に減少していきました・・・」


否、理由は明らかだ。彼女の足りない偏差値に加えて【誓いの戯れ】を見守る周囲からの過剰過ぎる目線。少しでも失礼をかまそうものなら背後にて首筋をぶった斬りられてもおかしくない殺伐とした雰囲気の中、それを耐え抜いたとしても立ちはだかるはあのミイラだ、落ち着いてまともな会話すら出来ないのだから苦笑いを自然にもらしてしまうのも頷ける。それを母であるアシュミーネはミイラが可愛いあまりに気付けていなかった。


「そういう事なら問題はこちら側にあるのでないか?相手がまともならだが、将来国の未来を背負う導き者が他国の姫を苦笑いするなど、理由が見当たらん」


「んなっ!!私のミイラちゃんに問題があるとでも言うの!?ナタカちゃん!!そんな事は絶対に・・・っ!!」


「まぁ、娘だけではないが。取り敢えずアシュミーネ、貴方は自分の娘を過保護にしすぎだ。し過ぎるあまり問題に気付けていない。全てを向こう側が悪いで終わらせては同じ事の繰り返しだぞ」


「そんな事・・・!!」


「まあまあ二人とも…落ち着いて、ねっ・・・?」


流れる空気の悪さを読んだのか、両者の間に飛美(あすみ)が入り「まぁまぁ」と気まずそうな口調で軽い説得を促した。アシュミーネ自信、ナタカの発言は到底受け入れがたい意見ではあったが、いつもなら「そんな事ない!!」と言いきる筈の彼女が「そんな事・・・!!」と、その先を言えなかったところを見るに、心のどこかでは分かっていた部分があったのかもしれない。方や、そんなアシュミーネを友として身近に接してきたナタカであるが、我が子を持たない自分にとっては母親としてのアシュミーネの心は些か読み取る事は難しい、故にアシュミーネにとって厳しい意見になってしまった。彼女に今必要とされるのは不安な心を拠り所に出来る場所であり安心できる言葉だ、その事を考慮していなかったナタカは。


「す、すまないアシュミーネ…気を悪くしないでくれ。ただ考え方の視野を広げた方が何か分かるんじゃないかと・・・」


至らなかった発言を素直に改め謝った。


「い、いえっ!私こそ熱くなっちゃってごめんなさい…せっかく話しを聞いてくれてるのに私ったら・・・」


そんな最中だ、コツコツと高鳴る足音らしき擬音が荒らさを響き渡らせ、悪い知らせと共にこの部屋の扉をノックしたのは。


「失礼します王妃様ッ!!ミイラ姫が!!」


その知らせを聞いたアシュミーネは絶句。声に出来ない程の衝撃に体が硬直し、まるで時間が止まった世界を生きているかのような感覚に陥った。「アシュミーネ!?」と、何度も呼ばれる自分の名前が何重にも重なり聴覚を反響させる、その度に視界が歪んでいき現実を遠退かせるのだ。全身の力が抜けていくような感覚、意識が薄れる中で彼女が見た最後の景色は、紛れもなく冷えきった硬い地面だった。


「きゃっ!!アシュミーネッ!?」


しかし、間一髪のところで倒れるアシュミーネを自らの体を張って優しくキャッチしたのがナタカと魔王の二人。


「安心せよ。怪我はないようだ」


「ああ、無事だ」


「はぁ…良かったわ。ナタカちゃんも魔王さんも大丈夫?」


「うむっ…おい兵隊ども!!何をしておる!!早く寝室へ運ばぬかッ!!!」


魔王の怒号に何事かと集まって来た城兵達は、倒れるアシュミーネを確認するや否や急いで彼女に寄り添い手を差しのべた。この緊急事態はミライアの元へも報告され、驚いた彼女は急いで母が運ばれた寝室へと走った。


「は、母上ッ!!一体何が!?」


そこには苦悶の表情でベッドへ横たわり瞳を閉じる母の姿が。それを囲むかのようにして、飛美(あすみ)、ナタカ、魔王、そして王家の重役達が揃いも揃って顔をうつむかせていた。


「母上ッ!!」


「大丈夫。気を失っているだけよ…魔王さんとナタカちゃんが受け止めてくれたから怪我もないわ」


「どうなっている…って飛美(あすみ)さん!?」


「久しぶりね、ミライアちゃん。見ない間にすっかり立派になったゃって」


「わ、私なんて…まだまだ・・・じゃない!何で母上が倒れている!!」


誰もその問い掛けに答えようとはしなかった。本来、緊急事態の要件であれば王家重役を担う者達が真っ先に行動し、何が起きたのかを通達しなければならない役割がある。だが、今回ばかりは流石に恐ろしかったであろう。"ミイラ姫が怪物と共に行方をくらませた"ともなれば、ミイラへ着かせていた護衛の責任は彼ら達が受けるはめになるのは確実。なんせ護衛部隊は王家重役の指示下で仕事をこなしていたのだ。姫を守れ無かった責任は大きい。その事で彼ら達は口を開けなかった。自分達の立場や身分を"知らないフリ"として守ろうとしたのだ。


「誰か答えてくれ・・・」


重くなる空気に魔王や飛美(あすみ)はミライアの問いに答えようとした。が、ナタカ一人だけはそれを阻止するかのような仕草で二人を止めた。


「ナタカ殿」


「ナタカちゃん…なんで・・・」


「私達が言わなくとも・・・教えてやれよ、そこのお偉いさんども。それがアンタらの仕事だろ」


「くっ…答えろ!!」


黙りを貫いていた重役達はミライアの気迫に圧倒され「ミイラ姫が…」と、控えめながらにそう言葉を漏らした。それを聞き逃さなかったミライアは重々しい雰囲気に「まさか」と、考えたくもなかったであろう最悪なシナリオを脳裏へ過らせてしまった。母が気絶を余儀なくされる程の出来事だ、ミイラの身に起きた何かしらの事態は即ち、今までに無い程の最悪。硬く握られた拳に宿る怒りの感情は腰に携えていた剣を引き抜かせ、重役達に突き立てられた。


「ミ、ミライア姫!な、なにを!!」


「もはや弁解の余地は無い。今ここで貴様等の首を跳ね飛ばす・・・覚悟はいいな」


「お、お止めください!!」


「黙れッ!!それ以上口を開けば哀れな死人となるぞ!マヌケ面の生首は晒したくなかろう?」


「ひ、ひぃぃ!!」


ミライアがその手に握る凶器を問答無用で振りかざそうとしたその時。手首から伝わる人肌の違和感に彼女は咄嗟に背後を振り向いた。


「まったく、見てられん。少しは話を聞いてやったらどうだ?姉姫」


そこに立っていたのは、現状に見かね止めに入ったナタカであった。


「話を聞くだと?この愚かな反逆者どもの話をか?冗談にしても笑えない。こいつ等はミイラの事を黙っていた。おお方、知らないフリでもして責任逃れを企んでいたんだろうが、無駄だ。こいつ等は絶対に生かしてはおけん」


「こういう人間を受け入れ重役に置いたのも王家だろ。自分勝手に全ての責任を押し付け安易に切り捨てるのは止めろ」


「裏切り者に慈悲など無い!」


「そういう事ならお前も同罪になるぞ」


「なんだと」


「こいつ等は言わば国王が管理するシステムの大事な部分を担っている。そんな奴等をだ。国王が不在の中、しかも許可無く勝手に切り捨てるつもりか?そんな事をすれば王家は低層から崩れかねん。目の行き届かない所からヒビが入るぞ」


「ぐっ…」


ナタカの説得にミライアは耳を貸したのか、手に持っていた剣をうつむきながらも腰に携える鞘へとしまい込んだ。しかし、怒りの感情は依然としておさまらず。


「よく聞け腰抜けども・・・貴様等の犯した罪は万死に値する。職務放棄に責任逃れ、ミイラを護衛仕切れなかった失態含め本来ならば問答無用で晒し首になるところだ。踏まえて今後の立場も保証されんと知れ。いいか?首のかわ一枚だ。それが繋がっている内に報告しろ、全てをだ・・・!」


「はい・・・ミイラ姫は黒き翼を持つ魔物と共に空へと姿を消しました。今尚、捜索を続けてはいますがミイラ姫とおぼしき人物は見つからず…可能性としてですが、この大陸にはもう存在せぬかと・・・」


それを聞いたミライアは、何も答える事なく部屋を立ち去ろとする。


「ミ、ミライア姫!何処へ・・・!?」


「ミラージュガルシャを発つ。自らの手でミイラを探し出す、それまでは帰らない。貴様らは各国の連盟国に協力要請を出しておけ」


「な、なりません!!国王が不在の今、代理である王妃様は倒れミイラ姫は行方知れず!!敵対国の多くがこの期に乗じて侵略行為に働く事でしょう!!今、貴方様まで失えばミラージュガルシャは・・・!!」


「・・・っデレスをここへ連れて来い。私に考えがある」


「デレス様をですか?」


王城から一直線に真下へ地下200メートル。そこは見渡す限り真っ暗な空間で灯りも無ければ色彩さえも認識できない暗黒世界。唯一脳で噛みしめる事ができるのは嗅覚を激しく刺激する臭いだけだ。錆びた鉄の異臭に異様なまでの生臭さ、全てが相まって鼻が曲がりそうだ。そこに一人の女が訪れていた。ミライアの命令により『デレス』と呼ばれる人物を連れ出す為、ここ【地底監獄・ダークヘイル】へと足を運ばせていたのだ。手にはどんな暗闇をも照らす真っ赤な灯火。小さな太陽とも言える道標をかざして目指すは『デレスの寝室』と刻まれた牢獄だ。一歩、また一歩と静寂が支配する世界をひたすらに歩いてゆく。なんとも厚苦しく息苦しい世界。猛烈に気分を害する嫌な雰囲気が蔓延する中で耐え抜くこと数分後。その檻は開かれた。


「デレス、釈放だ。生きているのなら返事をする許可を与える」


彼女はデレスの待つ牢獄へと到着した。部屋の中へ灯りを照らそうとしてみれば、暗闇から振り返ろうとする彼の姿がうっすらと映る。


「おやおや?これは珍しい客人が来たもんだ。君は俺の事を嫌いじゃなかったか?メイドクイーン・セナ」


「勘違いするな。これはミライア姫のご命令だ。でなければ私がわざわざお前をここから出すわけないだろ」


「なに?ミライアが俺に会いたがっているのか?」


「ハァ…そうだよ。目的は知らんがお前を連れて来いとのお達しだ」


「なるほど…やはりこの俺が恋しくなったかミライアァァアアアッ!!!そうとなれば何処へでも駆け付けるぞ!!この夫であるデレス様がなぁぁあああッ!!!」


この男こそ、ミライアの夫にして今では連盟国の一端を担う加盟国【ディアスデル】の元王族『デレス』。


ガンッ!!


「ぐへっ!!」


「はしゃぐな変態」


「相も変わらず容赦がないな…セナ・・・元気でなによりだ・・・」


「そりゃどーも。お前の体は縛らせてもらう。またあんな事をされては今度こそお前を殺してしまいそうなんでな」


「あんな事って…夫婦なら当然のイベントだろ!」


「何が当然のイベントだこのクズ野郎。ミライア姫の寝込みを襲おうとするなど、無理やりな夜這い行為は例え夫婦間でも正当化できない」


「ふんだ!ミライアはもう十八の大人だもんね!君がいくらチビっ子ちゃんの頃からの付き合いだったとしても、あいつはもう君の知っている小さいままのミライアじゃないのさ!大人の付き合いが出来る立派な女性だし?君と違ってね!」


「・・・っそうか…わかったよ」


「あっ!ちょ、なにするの!?」


取り出されたのは何の変哲もない布袋、それがデレスの表情を覆い隠し視界を塞がせた。更には袋の先端が首根元まで被さると、ゴムのような伸縮自在形状の紐で首部分をぐるぐる巻きに空気を完全にシャットアウト。


「どうやらお前には足りすぎて十分なモノがあったらしい。その平和ボケしたバカな右脳とお花畑広がる愚かな左脳だ。薄汚れた人間には勿体無い代物だよ」


「ん"ぅ"~!!」


「ほら、さっさと立て。窒息死など今の時代栄えないぞ」


こうしてデレスはメイドクイーン・セナもといミライアの命令により二週間にも渡る監獄生活を終わらせた。息苦しい袋の中で不気味に笑みを絶さないデレス。彼とって愛しき妻ミライアとの再開は人生においてどのような瞬間になるのだろうか。一方でミライアは、早々にミイラを探し出す旅へと出向く為の荷造りを始め、周囲の反対を意に介さず荷物をまとめながらもデレスを今か今かと待っていた。しばらくして、コンコンッ…と二回のノックと共に「デレスをお連れしました。ミライア姫」との合図が扉を隔てた向こう側から聞こえて来た事で、それに反応を示したミライアは「来たか。入れ」と二人へ呼び掛け扉を開けさせた。


「失礼します。命令通りお連れしました」


二週間ぶりの再開だった。デレスに覆い被さっている布袋を掴み引っ張り上げるミライア。その顔が露になった瞬間、初めてデレスという男を確認した飛美(あすみ)、ナタカ、魔王は予想だにしなかったその姿に驚いた。


「くはっ!!・・・愛しの・・・ミライア・・・!!」


「思いの外元気そうだな、デレス。寂しくは無かったか?」


なんと、顔立ちが全くと言っていい程にミライアと瓜二つなのだ。絶妙なショートカットヘアーから始まり目元、鼻、輪郭、身長に至るまで、とにかく全てが同一。まるで鏡に映し出されたもう一人のミラアのようであった。


「会いたかったよー!!ミライアァァアアッ!!」


デレスは妻であるミライアをその目で確認すると、自分を縛り付けていたロープを仕込み刀で華麗に断絶。素早い身のこなしを用いて彼女へと抱き着き、頬と頬を擦り合わせながら幸せな表情を浮かべた。だが、この行動に黙っていられないのがセナだった「なっ!?デレス貴様ッ!!」と、止めに入ろうとする彼女だったが「いいんだセナ。こういうところがデレスの可愛いところなんだ」と、ミライアは彼を受け入れた。元々はミライア自身、急いで結婚したとは言えデレスの事に関しては嫌な部分など殆んど無く、逆に好いている部分の方が多い。だから結婚まで行き着いたと言えばそうなのだが、やはり周囲による過剰なまでの過保護精神がミイラとまではいかなくともミライアへもそれなりの効力となって向けられていた。


「ミライアァ~、俺寂しくて仕方無かったんだよ~?ちょっと添い寝しようとしてただけなのに牢獄なんかに閉じ込められちゃってさぁ~」


「そうか。セナ、添い寝くらい許してやったらどうだ。私は一向に構わんというのに」


「騙されないでください姫ッ!!コイツの想像している添い寝は私達の思っている以上に変態レベルをカンストしているんですッ!!」


「それはそうと姫様、先程おっしゃっていた考えとは…」


重役の質問にミライアはデレスの腰へ手を回し、更に自身へギュっと抱き寄せ答えた。「私の夫であるこのデレスが今日をもって貴様らの姫となる」と。それを聞いた周囲の反応は言わずもがな驚愕。だが、見た目は申し分無く影武者として機能するうえに元は他国の王子だった立場の人間だ。下の者を扱う素質や立ち振舞いを十分に理解している有能な代役と言える。


「ちょっ…ちょっと待てミライアッ!!あんた正気!?」


思わずセナの口調もノスタルジックへ返り咲く。


「なんだセナ。なにか問題か?」


「大問題でしょーよッ!!コイツの器でミラージュガルシャの権力なんて渡しちゃったら国が滅ぶわッ!!あんたの評判だってガタ落ちしかねないし王家の信用を地に落としたら私達だって表を堂々と歩けたもんじゃない!!しかも只でさえコイツの顔はあんたにそっくりなの!!それだけでも腹立たしいっていうのに毎日コイツの命令に従うなんて地獄もいいとこよ!!」


「心配し過ぎだし言い過ぎだぞ。大丈夫だ、デレスは私を陥れたりしないし権力と言っても私の地位で出来る事などたかが知れている。デレスなら私の居ない間をしっかりと埋めてくれるさ、なっ?デレス」


キョトンとした表情で一体何が起きているのかをさっぱり理解出来ていないデレス。突然と連れて来られ何かと思えば「今日から姫」だの「私の居ない間」など、妙に引っ掛かる言葉が盛りだくさんに押し寄せてくる。


「なんだいミライア、何処かにお出掛けでもするのかい?それなら俺がわざわざ代わりをやらなくても・・・っ」


「デレス、よく聞いてくれ」


ミライアはこれまでにあった出来事や今実行しようとしている事までを包み隠さず彼に伝えた。


「んなッ!?ミイラちゃんが行方不明!?それでミライアが捜索の旅に出るだってぇぇええッ!?」


「そうだ、だからお前に私の代役を頼みたいのだ。引き受けてくれるな」


「・・・・・ッ」


「デレス・・・」


「んーッ、もちろんさッ!!!愛しのミライアに俺がなれるんだ!!断る理由が見つからないよ!!」


意外な反応に周囲は又も驚愕を余儀なくされた。誰もが「危険だからダメだッ!!」とミライアの事を愛してやまない彼なら何がなんでも止めてくれるだろうと皆は期待していたからだ。デレスの性格上ミライアは自身が守るべき大事な存在であり愛そのものだった筈、なぜ許可を出したのか、セナや重役にも理解出来なかった。


「おいデレス!!お前は止める側の立場だろうが!!」


「無駄だよセナ。見て分かるだろ?ミライアの目は本気だ。本気でミイラちゃんの事を愛するが故の覚悟だ。こうなったら俺にも止められないよ、止められる筈が無い」


「なんでだよ、意味分からん・・・」


「"愛"は誰にも止められないってヤツさ!!だからミライア、こっちは俺に任せてくれ!」


自分の気持ちを理解してくれているデレスにミライアは少しばかりの笑顔を彼に向け溢した。そして、デレスを優しく抱き寄せたミライアは「ありがとう」と一言そう伝えた。これを最後に彼女は正装していたドレスやマント、飾りやティアラを脱ぎ払い、一時的に姫である事を捨てたのだった。時を同じくして、共帝国(きょうていこく)ガッドリーシャ王家。


「んでさ、どうすんだよ女王様」


「ん~、じゃあ死刑で?」


「へいへい」


「むーっ、ノーリアクションかよ~。あぁーあ!!女王になったのはいいけど暇過ぎなんだよねぇ。戦争でも仕掛けよっかなぁ~」


「止めとけ止めとけ。お前みたいなガキが戦争を仕掛けたところで自滅するのがオチだ」


「アハハ、ないない!!ほら、私って天才だし?こうして邪魔な親も兄妹も葬って女王の座についた訳だし?」


「それ、全部私がやった事な」


「細かいこと言わないの~!でも本当、不思議な事もあるもんだよね~。こんなにも可愛らしい美少女のあんたが元の世界ではお人形さんだったなんて。一生年取らないとかズルくない?」


「お前も死んで来世に賭けてみるか?ワンチャン人形に転生出来るかもよ」


「いや別に人形自体になりたい訳では無いんだけどね・・・なにかと不便そうだし」


「あー、そうかよ。(ちくしょー・・・!なんで私がこんなガキのお守りなんかしないといけないんだ!ナヴィンの野郎押し付けやがって…とにかく例の力を持つ者をさっさと見つけて拉致るか…この大陸に居るのは間違いない筈だからな・・・)」


その案件とは別に、裏世界ではナヴィンが自ら赴き怪物と相対していた。


「くしゅん!あら、体でも冷やしたかしら。ところでまだ続ける気なの?神の器さん」


「グハッ!!・・・オ前、見覚エガアルゾ!・・・アノ時ノ・・・ッ!」


「クスっ…じゃあ話が早いわね」


「・・・っ!?ヤメッ!!!」



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