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人生の処方箋  作者: Miyuz
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花香の記憶。

「ねえ、牧野さん、どういうことよ。何であの子の記憶が戻ってるのよ。」


由美子が、険しい表情で、美香に詰め寄った。


「由美子さん、もう少し声落として。ここ病院の近くだから、目立ちたくないのよ。」


「あなたがこの喫茶店指定したんでしょ。」


「仕事の合間だから、ここしかなかったのよ。」


美香は伏し目がちに、珈琲を口にして、言った。


「由美子さんが、3歳のあの子連れて来た時に、それまでの記憶は消したのよ。何かのきっかけで思い出すリスクも確かにあったけど、すべてを思い出す事はないはず。でも、あの子の記憶が、ここまで戻った理由は、私にも分からないわ。」


「確かに、まだ肝心なところは戻ってないけど、里香とさくら商店街の景色は覚えてたのよ。そのうち、あの子は久住先生の事も思い出すわよ。」


「だから、生まれてから保育園の時を記憶を、母親は里香でなくあなたに記憶をすり替えようと思ったのに、本当の記憶が出てきてしまったのよ。プログラムは完璧だったはず。診療所の事は、由美子さんからの紹介ではなくて、自分でサイトを見て知ったという記憶に、すり替える事はできたのに。何故なのか分からないわ。」


「牧野さん、そんな事困るわ。絶対大丈夫って言ったじゃない。それ信じてたのに。」


「由美子さん、その牧野さんって呼ぶのはやめてくれる?あの頃の私を知っている人間が聞いたら、あなたも危険なのよ。わかってるでしょ。ここでは、浜本か、美香で、お願い。」


美香は落ち着かず、煙草を取り出した。


「先生、ここ禁煙よ。」


美香は、舌打ちをして、煙草をバックに戻した。


「それで、その久住先生は、どうなってるの?」


美香は由美子を睨み返した。


「眠ってるわよ。あの人を利用したのが間違いだったのかも知れないわね。違う処方箋を出すなんて。あり得ない。」


「そんな怖い顔しなくったって。先生の記憶は消せないの?」


「消したら利用価値が無くなるのよ。あの人が抱えてきた秘密を盾に、この役を引き受けさせたんだから。」


「先生をそのままの姿にしたんでしょ。覚えてるかもしれないのにどうして?。」


「覚えてるかどうか、試したのよ。3人とも覚えてなかったみたいね。」


「3人って、あの子の他にもいたの?」


「そうよ。あの3人が関わっている久住先生の過去を研究に利用したのよ。まさか、あの3人が、一緒に行動するなんて誤算だったわ。」


「もし覚えてたら、どうしたのよ。」


「その時は、記憶をコントロールすればいいと思ったのよ。でも、なぜかあの子だけは、通じないってことね。それが分かっただけでも、収穫ね。」


「収穫って、なんか、危険すぎる橋を渡って、なんで、そんな楽観的なの?」


「研究なんてそんなものよ。仮説、実施、評価、仮設の更新、また実施の繰り返しで、失敗はつきもの。リスクは承知で、研究してるもの。」


「そんな…私にとっては、一度の失敗が、もう終わりってことなのよ。そんなの無責任よ。」


「良く言うわよ。泣きついてきたのは誰なのよ。私たちは、お互いの黒い過去を知っている関係なのよ。もう引き返せない気球のようなもんよ。バルーンが破れても、バーナーが空気を送るのを止めても、あとは落ちるだけ。もしどちらかが裏切ったら、2人とも破滅しかないわね。久住も同じ運命ってことね。私はいつでも落ちることは覚悟は出来ているわ。あなたもそのつもりでいてよ。」


「選択肢はないという事ね。あなたを信じるしかないのね。で、不安しかないわ。これからどうするの?勝算はあるの?」


「これ以上は話せないわ。どこで、空気が漏れるかわからないから。」


「なに、それ。なんか不公平な感じがするけど。」


「何とでも。私たちは、あまり会わない方が良いわね。」


「奈美が、また何か仕掛けてきたらどうするのよ。」


「大丈夫。考えがあるから。」


「それも、言ってはくれないんでしょ。」


「そうよ。由美子さん、理解が良いわね。助かるわ。」


「もう、いいわ。」


由美子は深いため息をついた。


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