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ACT1 目覚めは記憶喪失と共に

【霧の洋館】、それは私の残された記憶の中では有名なホラースポットとなってる。

昼間であるにもかかわらず、深い霧にいつも包まれていて、おどろおどろしくボロボロになった、赤い屋根が特徴の古い大きな洋館と聞いていた。

実際に見たことは無かったけど、私は今それと思わしきに館の正面玄関にいた。

辺りは深い霧に包まれ、一寸先さえ白白白。

生い茂る木々や、伸びっぱなしになった雑草達さえ正しく視認できない。

にもかかわらず、目の前の扉は、血のように真っ赤な扉だけは確りと見えていた。

ガーゴイルが咥えた金の丁番、所々にある黒で書かれた文様。

それはまるで魔法と剣のお伽噺から飛び出して来たかのような。

しかしこうしてこれは現実にあって、私の目の前にある。

決して悪夢などではない。

いや、そもそもどうして私はここに居るのだろう。

私とは誰なのか、今一度思い出す必要があるはず。

私の名前は【帳要とばりかなめ】、今年で高校を卒業する18歳女子高生。

……くらいしか記憶にない。

私はどういう訳か記憶が無い。

名前と年齢、そしてココ最近の記憶しかない。

正確にはここに来る前のほんの少し前の記憶と、私はそれなりに有名な高校生小説家だったらしいという記憶、最後にこの洋館の記憶。

ここに来る前に、私は誰かと一緒に車に乗っていた。

その人とは親しかったのかもしれない、楽しい思いがあった気がする。

仲良く会話をして、その人がなにか言えば笑っていた気がする。

だけれどなにか強烈な衝撃が来て、そこからの記憶が無い。

事故にでもあったのだろうか。

それならそれで目覚めるなら病院かあの世、大穴異世界。

なのに現実のここに私はいる。

なんにしても、ずっとここで座ったままというのもダメだ。

帰り道がわからない以上、当てもなくさまよう訳にも行かない。

誰か住んでるかもしれないと、一抹の希望を胸に、私はドアノブを握る。

ホラースポットではあるけど、お化けが実際に存在するとは私は思ってない。

有名な歌にもある、お化けなんて嘘だと。

住んでないなら居ないでいい、このまま野宿なんて真っ平御免だ。

恐る恐る、私は扉をゆっくりと開ける。

ギギギギッと軋む音を立てて、扉が開いていく。

中は霧のせいで日光が届かないためか昼なのに暗い。

かすかに入ってくる光、しかしそれは逆に不気味さを助長させている。

それでも奥の方はよく見えないが、全体的に外から見た以上に広く感じる。

朽ちた木の匂いに混ざる埃の臭い。

足元にひかれた、かつては来客を歓迎しただろう赤いカーペットも黒ずんでボロボロ。

偶然だろうか、その黒ずみが乾いた血のように見えるのは。

お化け屋敷の様、率直にそう思った。

実際ホラースポットとしての扱いを受けていればそうでもあるか。

やはり人は住んでいそうにない。

こんなみすぼらしいままで過す人はよっぽどの変人か、片付け下手かのどちらかだ。

しかし、何故か私はこの光景に妙な違和感を感じていた。

その違和感がなんなのか、とくに深く気にすることなく、洋館へと足を踏み入れる。

大理石の床が玄関からの光で冷たく鈍い輝きを放ち、一歩一歩歩みを進める度に目が闇に慣れてくる。

なるほどさしずめここは玄関ホールと言ったところか。

真正面には、最初見えなかった大きな階段があり、その傍に小さなテーブルがある。

その上にはダイヤル式の黒い電話があり、蜘蛛の巣がいくつか貼ってある。

何年も使われてないと言った風貌だ。

さすがに使えなそうだし、なにより使えたところで私の記憶からは誰かの電話番号は出てこない。

両親にかけるべきか友人にかけるべきか悩む必要がないという事だ。

まあそもそも、私に両親がいたのか、友人がいたのか思い出せない訳だが。

諦めて左右を見てみる。

どちらにも赤い大きな扉があり、しかし上に貼られた金のプレートに何かの文字が書かれていた。

見てみよう、そう思った私はそれぞれのプレートが読める位置まで歩いてみた。

左は【大食堂】、右は【展示室】と書かれていて…この場合刻まれていて?

どちらにしても、2階かこのどちらかに行かなければならなそうだ。

こういうホラーゲームがあったような記憶がある。

とりあえず真っ先に向かうことにしたのは【大食堂】だった。

こちらから見た方がいいとなんとなく思ったんだ。

この選択が、私の運命を変えることになるとは、この時思ってもなかった。

いや、運命は目覚めた時からねじ曲がっていたのかもしれない。

そうして【大食堂】の扉を開いて、私の目の前に飛び込んでくるものがあった。

それは……

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