つたえるおもい。
由実、もう寝ちゃってる。
今日は疲れちゃったのか、お風呂が沸くまでソファーで一休みしてるときに、膝枕をせがんできて。
いいよ、なんて太ももを貸したのが間違いだったかも。すうすうと深い寝息を立てる由実は、相変わらずかわいくて。
「もう、起きて?お風呂入れないよ?」
そんな声も気づかないくらいにぐっすりと夢を見てるのか、ときどきうなされたような声をあげる。スキだらけの由実の髪を、軽くなでる。
ねえ、起きて。こっち向いて。そんなとこずっと見せられたら、うちの中の気持ちが、止められなくなるかもしれないから。そしたら、本当にお風呂に入れなくなっちゃう。
でも、こんな顔、ずっと見てたい。寝顔なんて、こんな明るいとこじゃ滅多に見れないから。スマホで隠し撮りして、壁紙にしたくなっちゃうくらい。
寝返りを打って、うつぶせになってた由実。よくソファーから落ちないなって、ちょっとだけ感心するけど、心を乱す理由がなくなって、はっと気づく。
「由実?起きないと、キスしちゃうよ?」
普段だったら、これで起きて、さりげなくこっちに顔を向けてくるのに。今日は、本当に寝ちゃってるみたい。
これはこれでかわいいけど、明日も学校があるのにお風呂に入れないのはさすがに大変だ。
「そんな由実には、……おしおきしちゃうよ?」
ねえ、こっち向いて。由実の長い髪に、そっと唇を落とす。
ちゅっちゅ、って何度も唇を重なると、由実の息が早くなる。
「は、んん……、くすぐったいよ理沙ぁ……」
「だって、全然起きないんだもん」
軽く背中から抱くと、ゆっくりと体を起こした由実がうちのほうに顔を向ける。
「そんな寝ちゃってた?」
「もう、お風呂沸いちゃったよ?すっごく疲れてたんだね」
「へへ、……膝枕してくれたから、すっきりしちゃった」
目を閉じて、軽く唇をすぼめてくる由実。そうされると、体は自然と、そこに顔を近づけさせてしまう。
……ちゅ。
寝起きのせいか、由実の唇はいつもより乾いてた。そんなこともわかっちゃうくらい、いつもこうしてるっていうことに、ほんのりと頬の奥が熱を持つ。
「もう、お風呂沸いちゃってるでしょ?入ろっか」
「うん、そうだね」
ソファーから立って、手を差し出してくる由実。
そんな由実があまりにも愛しくて、由実の体を後ろから抱き寄せる。
そして、髪にもう一度だけ唇を乗せる。甘酸っぱい髪の香りが、鼻の奥をくすぐる。
「ちゅーするの、そこじゃないよ……」
甘えてくる言葉に、自然と笑みが漏れる。わかってるよ、そんなこと。抱いてる腕の力を抜くと、由実の顔が、うちのほうを向く。
「わかってるよ、由実」
「じゃあ……もう一回だけ、ちゅーして?」
目を閉じた由実の顔の、桜色の唇に、どんな言葉を使っても表しきれない『好き』を伝えた。