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魔女アリシアと秘密警察  作者: 虹江とんぼ
9/19

魔女アリシアと秘密警察 (8)

分割しました。

ご不便ご迷惑おかけいたします。2016/10/18

「あーあ、増えること増えること……」

 トト・フーゴ・トロン捜査官は、増え続ける人間と妖精を眺めながらため息をこぼす。

 見渡す限りの民衆を見ていると、浮遊物に溢れかえる海を見ているようだった。様々種類の帽子や頭が蠢いて、上からだと波打っているように見える。

 こんな人混みの中で、犯人を捜すなど不可能としか思えなかった。

 聖オルゴン広場には、民間交流式典を一目見ようとして詰めかけた人々で溢れかえっている。本会場となる広場はまだマシな方だ。そこは四つのブロックに分けられ、関係者や招待された上流階級の者たちが優雅に腰を降ろして談笑している。

 だが、一般民衆はこの歴史的な一場面を目にするため、会場の外でひしめき合っていた。広場周辺の建物の窓という窓から身を乗り出し、屋根の上に登り出す者たちも大勢いた。誰それの家だから何て事は関係なく、貴族の家だろうが庶民の家だろうがお構いなしに上がり込んで場所取りが始まっているのだ。その一悶着を処理する為に警官が走り回りっては、呼子笛が吹き鳴らされる。その傍らでは、露店や物売りが声を上げ、酒まで売りさばかれる始末。式典は混沌と化したお祭り状態だった。

 これほどまでの衆人環視の中で、犯人が現場に姿を現すとは考えにくい。しかし、もしここで大規模なテロが行なわれれば想像を絶する被害が出るのは火を見るよりも明らかだ。状況を分析すればするほど、この式典を取り止めるべきだという思いが強くなる。

 クリスはここで事件に片をつけると息巻いていたが、別の所に居る彼も今頃頭を抱えていることだろう。

「こりゃあ、捜査だの警備だのと言ってる場合じゃないな。無理だぞ、色んな意味で」

 隣でトトと同じく愚痴を零したのはエリックだった。彼はつい先ほどまでロンデニオン市警との連携を取るために警備区画と指揮系統の確認に出ていた。

「どうだった。市警の連中は」

「どうもこうもあるか。嫌な顔されて散々嫌味を言われてきた。やれ生意気だ、やれ報告が遅い、やれクソ生意気だと……こっちだって一睡もしないでここまで来てるんだ。勘弁しろってんだよ。クリスが居なきゃ、主導権が向こうに渡るところだった」

「そりゃ、ご愁傷様」

 話を聞く限りでは、現場の指揮権は保安局に一任されたようだ。市警にも市警のプライドがある。普段から治安を維持し、大小様々な事件で駆けずり回っているのは自分たちであるという自負だ。ぽっと出な上に、事件をえり好み出来ると見られる保安局はやっかみの的になりやすい。

 先が思いやられる――トトは前途多難である事を予感し、暗澹たる面持ちになった。

 ところで、とエリックが傍らに積み上げられた木箱に目を移した。

「そいつは外して良かったのか。会場の監視が出来なくなるんだろ?」

「ああ……ゴルゴンが旅団に利用される可能性があるからな。会場に設置されてた水晶は全部取り外して無力化してる。お前は見てないだろうけど、コイツを使った罠でパブの時はエライ目に遭ったんだ。局で待ってる奴らはもどかしいだろうけど、これもクリスの指示だ。万全を期するって話し」

「建前だろ。魔術なんざ使わなくても、銃か爆弾が有ればパニックでここを地獄絵図に出来るんだ。せめて会場の外の連中だけでもお帰り願いたいね」

「もう時間だな。お偉いさん達のご登場だ」

「ああ……儘よ」

 

 楽団による演奏と共に、アルビオン王国とフェアリランドの国旗が掲揚される。

 観衆達が歓呼の声を上げる中、アルビオン政府の与党政治家が登壇し、まるで自分への歓声であるかのように手を挙げて応えた。それに続き、フェアリランド国楽の演奏が始まると、本日の主役であるフェアリランド代表団のエルフ達が登壇する。

 彼らは揃いも揃って色白の面長だった。すらりとした長身痩躯で、絹の民族衣装を身に纏い、特徴的な長耳が長髪から突き出ている。人間と殆ど変らない容姿だが、やはり似て非なる者。外見こそ二〇から三〇の青年に見えても、彼らの中に一〇〇歳未満の者は居ない。一〇〇〇年とも言われるその寿命から、『生命の上位種』『星の賢者』と謳われる存在だった。

 エルフ達は紋切り型の柔和な笑みを湛え、壇上から観衆に手を振っていた。

 広場へ足を運んでいたアルビオンの妖精達は狂ったように叫び、心の祖国フェアリランドの支配者に歓声を送り続ける。悪戯好きのピクシーでさえ、彼らを讃えるべくして空から花びらを降らせていた。


 式典は両国の代表者達による祝福の言葉から始まり、祝電が長々と続く。出席出来なかった議員から貴族、そして現アルビオン国王アマルデウスからの祝辞が読み上げられた。 次に、古の時代から続く両国関係の歴史を振り返る話へと移った。

 永延と続く話しの最中も、保安局や市警は周囲に目を光らせる。今のところ式典は順調に予定を消化している。不審者の報告もない。何事も無ければ、それに越したことはない。

 しかし、そこで動きがあった。

 持ち場を離れて歩き回っていたエリックが話しのネタを仕入れてきたのだ。

「劇団員が居なくなったァ?」

「違う違う、居なくなった劇団員が、戻ってきたって話しだよ」

「つまり問題はないってことか」

「そゆこと。問題が起きたのは式典の進行側の話。会場南の方でごたついてたんでクリスに聞いてきたんだ。でもこの分だと、何事も無く終われそうでよかったぜ」

「それはそれで事件が振り出しに戻るんだけどな……」

 ぼやいている間にも、式典も終盤に差し掛かっていた。

 アルビオンに住む人間と妖精の子供たちが壇上に上がり、代表団に花束が贈呈される。

 その後は、自分が人気者だと勘違いしている与党政治家と、エルフの代表がそれぞれ締めの言葉で、千年の友情を願う文言を並べ立てた。その時を見計らい、楽団が再び演奏を開始する。昔懐かしい曲調で、郷愁を誘う音楽だった。

 予定では、これから先ほど話しに上がった劇団員による催しが行なわれる。

 会場の中心から縦と横に走る通路を使い、アルビオンとフェアリランドの最初の出会いを擬人化し、演劇によって表現するという趣旨の物らしい。

 段取りの通り、子供達が大昔の王家の旗を掲げながら広場へと向って練り歩いて来る。

 その姿を見た観衆達からは歓声が上がり、子供達も誇らしげに行進を続けた。後ろからは豪奢に飾り立てた煌びやかな馬車が付き従い、中でも一際目を引いたのが、馬車の天蓋に立つ仮面の男だ。

 道化のように派手な格好をして、ビロードのマントを靡かせながら、ステッキを振るい観衆に愛嬌を振りまいていた。

 一見、何も不審な点は見あたらないように思えたのだが、トトは違和感に絡め取られた。

 馬車の進行速度が些か速い。旗を掲げて会場入りする子供達が困惑気味に道を空ける姿が見える。それでも周囲の者たちは劇の一環と見ている様子だった。

 今から関係者を捜して尋ねて演劇の進行を訊ねている暇も無い。微かな不安――自分は直感に重きを置く人間だ。囁かれる内なる声に誘われ、自然と足が会場へ向っていた。

「おい! トト、どこに行くんだ!」

「嫌な予感がする! 警備をいつでも動けるようにしておけ!」

「どういうこった、おい!」とエリックの苛立たしげな声を背に受けつつも、既に関心は馬車と仮面の男へと注がれている。何も無ければそれで良い、自分が馬鹿を見るだけなら何の問題も無い。そう思いながら人混みをかき分けて会場と外を隔てる柵を跨ぎ越えた。

 等間隔に配置されている警官から一瞥を受けたが、特にお咎めはない。これ以上は混乱を引き起こすために近づくことは出来ないが、ここからならば会場の様子が良く見える。馬車は会場の中心へと進み出て、静かに止まった。

 後方に置いて行かれた子供達も困惑気味に近づいてくるが、そんなことはお構いなしにに仮面の男が動き出す。

 彼は馬車の上で大仰な一礼してみせると、芝居がかった動きで周囲をぐるりと見回し声高に口上を述べた。

「お集まりの皆々様、紳士淑女の皆々様。本日、記念すべきこの良き日にお招頂き誠に光栄の至りに存じます! ささやかながらでございますが、我々から、皆様の記憶に残るお楽しみをお贈りさせて頂きたく、座長に代わりまして参上いたしました!」

 拍手が巻き起こり、観衆達は何を見せてくれるのだろうと固唾を呑んで見守っている。

 いよいよ持って不審の度合いを強めていったトトは、西側の通路から足早に近づいた。劇団の一挙手一投足に気を取られている招待客は、彼の奇行を気に留めもしない。だが、仮面の男だけは違った。天蓋から馬車へと近づくトトに気付いた。

 狂笑とでも言うべきなのか、ニタリと笑みを浮かべる男と目が合い、ギョッとして足を止めてしまう。

 男が天に掲げたステッキを天蓋に突き降ろすと、精緻な装飾が施された馬車の側面が剥がれ落ちた。天蓋に立つ男と同じく仮装した集団が馬車から飛び出し、車内には鉄枠で囲われた水晶――〈ゴルゴンⅡ〉鎮座していた。

 最早疑うまでもない。トトはハッとして駆け出すが、もう間に合わない。

 仮面の男は歓喜を漲らせながら両手を腕一杯に拡げ、本日の演目を発表したのだった。

「それではご笑覧あれ! 屍を喰らう者たちによる『狂乱の宴』を!」

 視界が消失するほどの閃光が〈ゴルゴンⅡ〉から迸り、突如として上空に巨大な術式陣が現れた。

 仮面の集団は挙って手にした術式杖(ステツキ)を天に掲げると、一つ一つが共鳴し、馬車を中心とした衝撃波が会場を揺さぶった。上空の巨大な術式陣からは幾つもの小さな術式陣が生み出されている。

 術式陣の色はアリシアが言う負の力場を示す『赤』だ。つまり悪しき者たちを喚び出そうとしている事に相違ない。会場も一気にパニックに陥った。席を立つがどうしたら良いかわからず恐れ戦く者、その場に縮こまって頭を抱える者。席を蹴り倒して何処へともなく逃げ出すが、人混みに押し返されてしまう者たち。彼らに逃げ場は無かった。

 トトは逃げ惑い混雑する通路を逆走し、腰から回転式拳銃を抜いて叫んだ。

「今すぐ術式を止めろ!」

 拳銃の銃口が天蓋に立つ男へと向けられる。だが男は微塵も畏れた様子などみせず、殊更愉しげにトトを指さした。

「良い得物だ! こんな棒きれより余程役に立つ。だがそれだけだ。銃を相手に向ける時はな、引き金を引けってんだよ!」

 彼の言葉と同時に、術式陣から強烈な赤い紫電が放散された。それに驚いたトトは怯んで拳銃をがく引きしてしまう。しかし偶然にもその銃弾は男の仮面を弾いた。破損した仮面がずり落ち、その下からは狂笑の素顔が白日の下に晒された。

 その人相は前もって保安局で写真が配布され、[血盟旅団]の指揮を執っているとされる容疑者、バルドゥ・グスタフのものでほぼ間違い無い。あの傷のある凶悪な人相は無二のものだと確信する。

 だが彼ら旅団はこれだけ大胆な事をしでかして無事済むと思っているのか。保安局や市警を舐め腐っているとしか思えないこの劇場型犯罪に憤りを覚えた。オマケに犯人は見た通りの愉快犯だ。

 トトは逮捕という考えを捨てた。まずは召喚術を阻止しなくてはならない。銃口をバルドゥへと向けて発砲を始めた。

 ところがその銃弾は空から降ってきた肉の壁によって阻止される。混乱に拍車を掛けるべく喚び出された《屍を喰らう(グール)》が地上へ降ってきたのだ。

「クソったれめ! もう滅茶苦茶だ!」

 対峙する異形の者に阻まれている隙に、既に旅団は馬車を反転させて逃走を図っている。

 外周警備に着いていた保安局も事態を把握したようで動き出していたが、逃げ惑う民衆達に阻まれて身動きが取れない。その上に次から次へと上空からグールが飛来し、混沌の坩堝となってしまった聖オルゴン広場は収拾のつけようが無かった。

 この混乱を嘲笑うバルドゥの高笑いだけが、阿鼻叫喚の広場で良く通っていた。

「こいつが噂のトカゲか!」

 そこへ保安局の警備班を引き連れたエリックが駆付ける。

「エリック、代表団の警備任務はどうした! ウチの班も駆り出されてただろうが!」

「市警に任せてきた! あいつ等には荷が重いだろ。それにどう見たって化物の相手が出来るのは保安局だけだ!」

 確かに軽装の警官達には荷が重い。グールの力は昨夜に身を持って知ったばかりだ。保安局の武装隊員で無ければ相手取るのは危険だった。だが彼に理が有ることを認めながらも、どうするべきか迷ってしまう。見える範囲だけでもグール数は六体。そして、逃げ惑う市民を撥ね飛ばしながら逃走するバルドゥの姿もある。

 追うべきか、残るべきか――逡巡の最中、突如として眼前に白馬が飛び出して来た。

 馬に跨ったクリスが颯爽と現れ、グールの頭に術式杖の一撃を加えて弾き飛ばす。

「トト、俺はバルドゥを追う! その得物でドナルドソンがやってみせたようにグールを処理しろ! 指揮は任せた!」

 彼はそれだけ言い残すと全速力でバルドゥの後を追いかけていった。

 山ほどあった文句を何一つ言うことが出来ず鬱憤ばかりが募っていく。しかし、単純な命令であれば、頭を悩ます必要もない。起き上がるグールに銃口を向けた。

「だとよ。相手してやるぜ、トカゲ野郎」


∴ ∴

 薄暗い資料室の片隅。

 慌ただしく動き出す六課の喧噪と隣り合わせのこの部屋では、ディンゴが静かに状況の把握に努めていた。彼は〈灰の書〉を床に拡げ、千切ったページを幾つも宙に浮かせている。それぞれの魔法紙には街中の〈ゴルゴンⅡ〉から送られる映像が映し出され、状況の変化を逐一彼に伝えていた。

 〈ゴルゴンⅡ〉を取り外された聖オルゴン広場の様子も、政府関連施設の室内監視用水晶に接続し、窓から覗き込むという離れ業で現場の様子を捉えていた。

「なるほど。やることが派手だな。自ら道化を演じて挑発してくるとは……常人の神経じゃない」

 手元にある魔法紙に目を移す。そこにはバルドゥが[王国の庭師]時代に指揮を執った最後の作戦「一万人工作」に関する記述が記されていた。あらましはこうだ。

 一万人の工作員をルーシェ王国に移住させ、親アルビオン政権を樹立させるために敵対政党に対するネガティブキャンペーンを張り、街の至る所でそしらぬ顔をしながら世論誘導を行なった。その根は、大学関係者から報道機関、そして政財界にまで伸びている。

 既存の市民団体には決して手を出さず、彼らを声で支援するように周りだけを固めてやるという徹底ぶり。実際に地方議会ではその成果が報告されているが、本命の国政選挙直前に工作活動が露見、工作員の大量粛正へと繋がり作戦は失敗に終った。

 こうした経緯を見る限り、大胆不敵を体現したような人間だと思った。

 魔法紙から送られる映像にはトトを初めとした六課の同僚たちの姿がある。彼らは混沌と化した広場で召喚されたグールと交戦状態に入っていた。敵味方に加えて一般人が入り乱れ、困難な掃討作戦の陣頭指揮を執っているのはトトのようだ

 数少ない友達の一人である彼の身を案じつつも、自分の仕事に集中する。

 ここでバルドゥを取り逃がすような事が有れば全てが水泡に帰す。

「絶対に捕まえてやるからな」

 そう呟きながらディンゴは何枚もの魔法紙を目の前に揃えると、町中のゴルゴンの眼を光らせてバルドゥの追跡にかかる。半壊した馬車を捕捉し、移動ルート上にある監視水晶へと次々切り替えていく。

 そしてその後方、旅団一味に追いすがる白馬の存在に気付いた。

「なんでえ。クリスの野郎こんな所でも王子様気取りかよ。くっそ気に入らねぇ……気にいらねぇけど、ヘマすんじゃねえぞ」

 面白くない――とは思いながらも、今は意固地になって反発するときじゃない。

 私心を押し込めサポートに徹する為、ディンゴは旅団の移動経路を予測して先回りを試みた。彼らが何処へ向っているのか、大まかな方向から割り出せないか。

 旅団はロンデニオンの中心街である聖オルゴン広場から南下し、街中を自分の庭のように走り周りながら南東を目指しているようだ。しかし、その方面には旅団と関係のありそうな場所はリストには無い。このまま行けばロンデニオンを横切る大河――ローム河に行き当たる。直近の橋は旧ロンデニオン大橋だ。そこへ警察を誘導すれば、彼らを押さえられるかもしれない。

 早速ロンデニオン市警本部の次元図書に繋げようとした矢先の事だ。バルドゥたち旅団を追跡させていた〈ゴルゴンⅡ〉からの映像が突然途絶えてしまった。

「なんだ? なんだなんだこんな時に!」

 何かミスを犯したのか、不正な接続に気付かれてしまったのか……該当地域に詳細な情報を洗い出したり諸々の試行錯誤の末、そこが『エキュア街』であることに気付いた。

 前日の脅威査定報告で、相棒のヘイリーが拾って来た情報を失念していた。

「そうか盗難に遭ってた地域だ――ああ! なんだってこんな……」

 ヘイリーの報告では、〈ゴルゴンⅡ〉の盗難はエキュア街一帯に及んでいる旨が示されていた。普段からヘイリーを罵倒して軽視しておきながら、自分がこのざまでは彼女の事を悪く言う資格なんて無い。

 重要な点を見落とてしまった失態を補うために必死で観測点を探した。見失ったポイントから、逃走経路を予測し、かつ正常に稼働している〈ゴルゴンⅡ〉が必要だ。そしてその位置から旅団一味を観測出来るか――自身の持てる技能を結集し、条件を満たすポイントを探り当てた。

「はぇ?」

 その観測点は旧ロンデニオン大橋の中腹にあった。橋の上から送られてくる映像には、ローム河で爆発炎上している蒸気船の様子が映し出されている。視界の左端にある桟橋には、その光景を見つめながら呆然と佇むクリスの姿。

 これらが意味しているところを冷静に分析し、状況から推測される当然の答えに辿り着いた。万人が思うであろう当然の帰結へ。

「マジかよ……」

 事件は、唐突に幕を降ろしてしまったのだ。

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