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不思議な体育館  作者: アナ
2/3

2日目

夜。

 夕食は鶏肉の唐揚げだった。その頃の私の1番好きな食べ物は唐揚げで、この日も飛び跳ねて喜んだのを覚えている。

 家族はそれなりに大勢いるが、夕食は祖母との2人きり。

一見、寂しそうな食卓でも美味しものがあれば楽しくなってしまう…

それが、この頃の私だった。


夕食から数時間後…

テレビを見たり、お風呂に入ったりして、寝る時間がやってきた。

寝る事は確かに嬉しいこと。

でも、楽しいと感じたのは、この日を数えて片手で数えられる程しかない。そして何より、これからあるのだろうか…



布団に入ってしばらくすると夢の中にいた。


 森の中の一本道。

周りを木に囲まれた土の道だったが、道になっているところは草が生えていなかったので道だとわかった。

私はその真ん中に立っていた。

 私は何故か確信していた。

この道があの『不思議な体育館』につながっていると…

 私は走った。

嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

でこぼこしている土の道をつまずきながら走った。

 その森はとても美しかった。

しっかりと手入れされてるようで程よく光が入り、葉っぱは輝いていた。

 しばらく走ると私の目の前に古くてボロボロの、でも、私の目にはキラキラと輝いている建物が現れた。

不思議な体育館だ…

体育館は森の中で太陽の光に照らされて建っていた。

私は息を切らしながら、目を輝かせて体育館を見つめた。

ワクワクする心を抑えられない。

 ふと、入り口に人が居るのが見えた。

私はその人の所へ走った。

そこには、おまわりさんのような兵隊さんのような、そんな感じの服を着た男の人が立っていた。

夢の中の私は何度もここに来ているようで、戸惑うことなくその男の人に笑顔で何かが書かれている紙を渡した。

すると、その男の人も笑顔で私に紙を返しながら

「入っていいよ。」

と言った。

私は男の人にニコッと笑い、それからワクワクしている気持ちを胸に『不思議な体育館』の中に入っていった。


 子ども達が駆け寄って来た。

「遊ぼ。」

私達はまた遊び始めた。

今回はボールがあるようで、はじめはキャッチボールやバレーボールをやった。いつしかそれはボールあて鬼ごっことなり、私は汗をかきながら逃げ回った。それに飽きるとまた踊ったり、縄跳びをしたりした。

 楽しかった。

このまま、この世界に居たいと思った。

現実の世界に戻ったところで私はいじめられる。

いつもいじめられっ子。

だったら、この世界に居たほうが…

そう思いながら私は天井を見上げた。

太陽の光が入る天井を。


きれい…


太陽の光が私を包んでくれるような気がした。


そう思った瞬間、子ども達の声が消えた。

さっきまで一緒に遊んでいた子ども達の姿が無い。

子ども達だけではない。

他の人たちもみんな魔法のように姿を消してしまったのだ。

私は探した。

歩きまわって…

走り回って…

叫んで…

でも、誰もいない。


いや…

1人だけいた。

あの黒マントの少女だ。

少女は私のことを真っ直ぐに見つめていた。

私が見つめ返すと少女は私に背を向けゆっくりと歩き出した。

私は距離を置きながら恐る恐るついていった。

恐い…

そんな気持ちもあったけど、こうしないといけないようなそんな気持ちのほうが強かった。

 少女は1つの扉の前で立ち止まった。

こんな扉あったかな〜

今までそこに扉があったことを私は知らなかった。

そもそも、前からあったのかさえわからない。

ここは夢の中。

扉の1つや2つ、突然現れてもおかしくないのだ。

 その扉は木の板で作られていた。

かなり古いようで、少女が押すと「ギー」という音を響かせながらゆっくりと開いた。

 扉の向こうには階段があった。

少女の後に続いて中には入り上を見上げると階段は渦巻き状になっていた。

その階段は1番上が見えないほど高かった。

木製の階段で、葉の付いたつるが手すりに絡まっていた。

ところどころ足場も壊れている。

それでも私は、初めて見た螺旋階段に興奮していた。

 そんなことを思っているうちに少女はかなり上まで上っていて、私は駆け足で階段を上がった。

 やっと天井が見えてきて、少女の顔がはっきり見えるところまで追いついた時だった。

少女は突然立ち止まり、振り返って私を見つめてきた。私が見つめ返すと少女は口を動かして話し始めた。

だけど、聞こえない…

何を言っているのか全然わからない…


足場が不安定になっていく…

階段が崩れ落ちているのだ

体が揺れる

私は立っていることができなくなり、しゃがみ込んだ

「助けて!」

私は少女にむかってそう叫んだ。

しかし、どうやら私のその声も少女には届いていないようで、少女はさっきと同じ口の動きを繰り返している。



助けて…



お願い…



 目を覚ますとそこにはいつもの景色が広がっていた。

見慣れた天井…

見慣れた壁…

 私は嫌な予感がした。

怖い思いをしたからだろう…

しかし、その嫌な予感さえも不思議な気持ちがかき消したのであった。

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