組織の使いっぱしり「オオグロ」
~一月目・十二日~
「さぁ諸君! 今日は面白いことをやろうと思う!」
「一発芸でもやんの?」
「そういう面白いじゃなくてだなぁ、今日はクエストを受けに行こうと思う!」
おっ、目の色が変わったな。やっぱり全員実践を待ち望んでたわけだ。
「そんな難しいのは受けれないんだが、とりあえず掲示板を見に行こう!」
街の掲示板には広告を掲示する他にクエスト情報が張り出されるスペースもあって、その情報紙を持って国からのクエストなら役所へ、個人の依頼なら指定された場所へ行くことで詳しい内容を入手してクエストスタートとなる。
◆◆◆
「さーて、ちょうどいいのは……」
「これなんかいいんじゃないっすか?」
「『彷徨い騎士の討伐』? 全然ランク足りないだろ」
「あー」
ランクと言うのは持っているライセンスによって定められており、ライセンス無しなら1、初級なら5、中級なら20、上級なら100となっている。因みに中級と上級には準階級があり、俺は準上級を持っている。(準が付いている階級は付いていない階級に対して半分のランクがある)
「これはどうですか?」
「『大戦場の仲裁』? だからランクを見て……」
「これどーよ?」
「だから……おぉ、これなら行けるか」
ギョクロが示すのは「メガフラワーの花粉採取」というもので、出所は医療機関らしい。メガフラワーの花粉は薬の材料として使われることが多いが、一部地域では料理に入れることもある。実際口にしたことはない。
「でもなんでこれなんだ? 他にも簡単そうなクエストあるぞ?」
「しばらく森行ってないから、楽しいかなーってね!」
そういうことか、しかし森のモンスターは弱いしライセンスを持ってなくても立ち入れるので実践初回にはうってつけだ。
「よし! じゃあそれにするか! 異論は?」
「うーん、まぁ……」
「ありませんけど……」
というわけで俺たちは情報紙にあった「メルカード医療センター」という場所を訪ねた。
「……というわけで、メガフラワーの花粉を採ってきてもらいたいんだよ」
「なるほど、分かりました。報酬は……2万クライスと欲しいものってなんですか?」
「あぁ、ここにあるもので欲しいものがあれば一つだけなんでもあげるよ。うちもそんなに物が豊富って訳ではないけど何か役に立つものがあればと思ってね」
何か授業に使えるものがあればもらうとしよう。因みに「クライス」というのはここの通過単位で、多分「円」の約二倍くらいの価値がある。
「考えときますよ。では、行ってきます」
「頼んだよ」
こうして、いよいよ俺たちは森へと向かうこととなった。
「あの病院でなんか欲しいものあるか?」
「「「いや……」」」
「そうだよな」
やっぱりめぼしい物はなかったらしい。せっかくだから何かもらっときたいんだけどなぁ。
◆◆◆
「さーて、こっからはそんなに強くないとはいえ敵が出るぞ! たとえエンカウントしても……分かってるな?」
「「「はーい」」」
「よし! じゃあ行くか!」
なるべく戦闘を避けつつ俺たちは目的のメガフラワーがいる第3エリアに差し掛かろうとしていた。
「メガフラワーはこの先だ! 気引き締めろよー」
「先生! そのメガフラワーの花粉採取は多少なりとも手がかかるからクエストになってたんですよね?」
「そうだな、メガフラワーは両サイドの双葉を落として花そのものを開かせないと花粉がとれない。双葉は落としても数時間すれば元に戻るから問題ないがな」
そんな話をしていると正面に何者かが現れた。正直何者かは知っているが、他人のフリをしたい。
「ちょっと待て! エビスと愉快な仲間たち! ここからはオーロラ国領地だ! 引き返してもらおうか!」
「で、その上位互換としてギガフラワーってのがいてだなぁ……」
「ちょっと待てと言うのに!」
「あ? ここはまだどこの国の領地か決まってねーだろ」
「この際それはどうでもいい! ここで会ったが一ヶ月ぶり! 決着をつけさせてもらうぞ!」
「めんどくせーなぁ」
「知り合いっすか?」
「そうであってほしくはないんだけどなぁ」
道を阻むこいつはオオグロ、俺のこの世界における学校の同級生でやたら突っかかってくるめんどくさいやつだ。
「悪いけどこっちは授業中でな、邪魔するなら業務妨害でぶっ飛ばすぞ」
「そうこなくてはな!」
「俺の生徒たちがな!」
「はい?」
「俺が手を下すまでもない、中ボス感覚で相手してやるよ! いけ!」
さぁ、初のボス戦だがどうなるかな? 連携については全く教えてないが、とりあえず自分の役割をこなせば楽に倒せるだろう。
「なめているのか!?」
「いやいや、実力を認めているからこその判断だ」
「えぇい! かかってくるがいい!」
さっき「手を下すまでもない」って言ったのは忘れてくれたらしいな。
「てりゃぁぁああ! 魔力剣・斬!」
「ほう、いい一撃だが殺意がからっきし足りんな」
刀身の形も安定していて良い太刀筋だ。魔力操作がうまくできていないとできない業でもある。
「これならどう? フレイムパラソル! ……あっ!」
「どこに向けて……」
「魔力剣・反!」
「なにっ!? ぐわぁぁああ!!」
「ナイスコンビネーションだ!」
「あーしは普通に魔法撃っただけなんだけど?」
「命の危険があるから僕が独自に開発したんだよ」
魔力操作を教えて二日でもう自己流の技を作るとは、宿題の手間が省けたな。
「時間なくなるから行くぞー」
「待て! 私はただ邪魔をしに来た訳じゃない! 明日の会合についてだ!」
「俺は知らなかったってことで行かねーから、うまく言っといてくれ。これ以上邪魔したら本当にお縄だからな」
「くっ……」
めんどくせーやつも黙らせたところで授業再開としよう。にしてもこの時期に会合って何の用件だったのか……まぁ知ったこっちゃねーか。
どうも!ロカクです!
早速ですがタイトルと主人公名を変更させていただきました!
というのもその二つが似たようなアニメが始まりまして、もしかするとパクリ疑惑が浮上するんじゃないかなーってことで変えさせていただきました!
前のタイトル及び主人公名を気に入ってくださっていた方には申し訳ありません。
変更点
タイトル
「「学」から始まるパーティー作り」
↓
「エビス先生の異世界学校経営論」
主人公名
海老沢 昴
↓
海老沢末広
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m