正義の聖剣
俺が召集した総勢十六人の仲間たち。それぞれ四つのチームに振り分け、幻想破壊の準備が始まった。ベシャメル国内での活動となる呼びかけ班と呪文・魔法陣制作班を残し、国外に出る勇者一行と俺たちは別々に旅路に着いた。
「アメリケーヌはベシャメルから南東にある国だ」
「それはいいんすけど、ブルーオーシャンとやらはどこにあるか聞き出せたんすか?」
「それは……知らん!」
制限されているのかドミンゴはブルーオーシャンの在り処そのものは言わなかった。ライチの鋭い質問に若干たじろいだ。
「探しようがないじゃないっすか」
「聞き込みから始めることになるだろうな」
「え~めんどくさいし~」
「だがこれはあくまで修学旅行だ。楽しいこともあると思うぞ」
「ほんとっ!?」
確かにめんどくさくはあるがそんなことも言っていられない。ギョクロのテンションを維持するのにも気を配る必要がありそうだ。
数歩後ろをテトラ・ロアン・チユキがあれこれ話しながら付いてきているのを確認しつつ、ベシャメルを出て十数分歩いたところで港に着いた。
「エビスさん、アメリケーヌは海を渡るんですか?」
「あー渡るっていうのはちょっと違うんだよなー……正確には『潜る』ってこったな」
「えっ!?」
幻想破壊の反動によりベシャメル・ベアルネーズ・アメリケーヌという三国が主な生き残りであるというのは周知の事実であり、テトラも知っていたはずだ。しかし、それぞれの国が大国であり世界、全てが国内で終結する。そのため他の国があることは知っていてもどこにあるかは知らないという事象が発生する。とはいえご都合主義的に、他の国に足を向ける者はいないのに行こうと思えば行く方法はある。海中から迎えの潜水艇が来た。
「乗り込むぞ!」
六人乗るには少々窮屈な潜水艇、これといった設備はなく操縦席の他に座席があるだけだ。とはいえ乗り込むやいなや入口が閉まり、何もしていないのに発進した。どうやら全自動らしい。
「どれだけかかるか分からんがとりあえずゆっくりしとくか」
「エビスさん、幻想破壊が成功したら別の世界へ帰ってしまうんですよね?」
「まぁそうなるな」
「そうですよね……」
これから頑張っていこうという時にテトラは空気を静まり返らせた。
「今まで聞いてこなかったのも不思議な話ですが、エビスさんの元居た世界はどんなところなんですか?」
「どんな……そうだな、頭の良い上級国民が一般国民から金を搾取したり、自分で産んだ子どもに暴行を加えて殺したりとろくでもないところだな」
「そんなところで暮らしていたんですね」
「あぁ、でも捨てたもんじゃないとも思うからこそ帰ろうと思うわけだ。例えば……まぁ、あれとか……あれとかな……」
「例えられてないですよ」
正直前世界の良いところが思い付かなかっただけだが、テトラのツッコミもあって艦内の空気が和らいだ。
それからしばらく各々リアル水族館を楽しんでいると、目を引くものが現れた。
「これが……」
「何かシャボン玉的なものに包まれてるんっすね」
「空気の膜だろうな」
言うのは簡単だがどうやって空気をこの水中に送り込んでいるのか。他国から観光なり労働なりで人を入れるのに最低条件になるのだろう。
空気の膜を跨ぐとそこは地上と変わらない空間だった。陸に沿って海上を進むと港に着く。
「上・陸! 地上と何ら変わらないな」
地上は冬後半、乾燥していたためアメリケーヌは湿度が高いように感じられ喉の調子がいいような気がする。海中そんなに浅い位置ではないにも関わらず普通に日光のような光が差し込んでいるがこれは……?
「あっちに砂浜がありますわ!」
「海入りたくなってきたかも! エビセン、遊んでいこーよ!」
気候的には初夏のように暖かく泳ぐには申し分無い。だがあまり時間を無駄にするのもなぁ……
「よし! 遊びに行きたいやつはしばらく遊んでていいぞ、俺は情報収集してくるからな」
「おっけ! いってら! そんじゃ行くよユキッチー!」
「うん!」
ギョクロはチユキを引き連れて砂浜へと走っていった。しかしあの二人だけでは不安だなぁ、誰か見張りを……
「あ、あの!」
「ん? どうしたロアン?」
「私がお二人を見ておきましょうか?」
「……!! そうか! それは助かる! よろしく頼むぞ」
「はい!」
もうだいぶ離れたところにいたギョクロとチユキを追ってロアンも砂浜へ。どうやら考えは同じだったらしい。
「お前たちはいいのか?」
「水着はちょっと……」
「まぁ、大丈夫っす」
ということで俺はテトラとライチを連れて中心街を目指す。
「ブルーオーシャンってどんなところにあるんすかね?」
「どうだろうなぁ」
「ガイアアクアマリンとやらはカフィアって人が持ってたわけじゃないっすか、それからラピスラズリはうちの学校で生まれたのと同種のドラゴンが持っている。となると人間以外も含めて何者かが持っているとするのが自然じゃないっすか?」
「決め付けるべきではないが、その可能性はあるわな。といっても母数が少ないし、何とも言えんけどな」
「そうっすねぇ……」
そうこうしているうちに賑わいのある場所に着いた。どこに情報を聞こうかという前に目につく建造物が一つ。
「あれは……塔ですかね?」
テトラが言うように煉瓦的なものでできた塔がそびえ立っている。上空、海水と空気の境目まで達している……が、
「あれ穴空いてないか?」
「わっ、ホントですね! 大丈夫なんですかね?」
「特に誰も気に止めてないってことは大丈夫なんだろうな」
「それもそうですね」
問題ないことを確認してそこら辺の人に話を聞くことにした。
「すんません、ブルーオーシャンってどこにあるか分かります?」
「ん? 他所の人? ブルーオーシャンならあの塔の頂上だけど……もしかして見学しようとしてる?」
「あ~まぁそんなとこですかねぇ」
快く教えてくれた青年に嘘をついた。見学どころか持って帰ろうとしている。だがもし国宝とかだとしたらそれを盗むと豪語する輩は通報されるだろう。それは避けたい。
「無理だと思うよ? あの塔、通称『正義の聖剣』っていうんだけど、頂上にブルーオーシャンがあるっていうのはあくまで噂だから。頂上付近に『守人』がいるらしいから勝手には行けないし」
確実にブルーオーシャンがあるという根拠はないらしい。が、何かしらを守る者がいるということは期待できるのではないだろうか。それより何故あの塔は「正義の聖剣」と呼ばれているのか……
「分かりました。ありがとうございます」
ともかくあの塔にのぼる他ないということか。青年に礼を言い、海で遊んでるやつらを呼ぶため海岸へ戻った。
「おーい、ロアン! 行くぞ! あれ、あいつらは?」
「あっ、先生! 先程巨大なクラゲが現れて二人をさらってしまって、私は何もできず……」
「何っ!?」
何の目的かクラゲがギョクロとチユキをさらったという。食べられたのか? いや、ロアンの言い方からすると食べられたわけではないらしいが……
「そのクラゲどっちに行ったんだ?」
「クラゲは飛んでいってしまったんですが、そのクラゲがこれを……」
普通のクラゲなら海に帰るんじゃないのか……? それは置いといて、ロアンが差し出してきたのは一枚の紙だった。
「先に見てしまったのですが『正義の聖剣で待っている』とのことです。いったい何処のことなんでしょう?」
なるほど、どちらにせよ向かう予定だったがあちらさんからわざわざ手を出してくるとは……
「その『正義の聖剣』に行くのにお前たちを迎えに来たんだ。よし! 目指すは『正義の聖剣』! 行くぞ!」
こうして俺たちはギョクロとチユキを助けるため、さらにはブルーオーシャンを求めて「正義の聖剣」を目指すこととなった。
どうも!ロカクです!
執筆リズムができてきたんで今後良いペースでいくんではないかと……思うだけですw
今回は3000字超えなので少々長くなりましたが、新しい冒険の前置きとしては必要なのでそこのところよろしくお願いしますm(__)m
それではまた次回!(。・ω・)ノ




