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昨日の味方は今日の敵

 決戦当日、昼十一時過ぎ。俺は寝不足だ。どんなに寝ても寝足りることはないが、今日はこのうつろな気分が丁度いい。余計なことを考えなくてすむ。


「準備はいいか? とりあえず情報を改めて確認する。相手は得たいが知れないが俺がコンタクトをとれたのは三人で一人は身体強化を使う」


「分かってることが少ないっすね」


「あぁ、だから作戦としてはその場しのぎだ! いや、言い方が悪いか……臨機応変だ!」


「何でそんなにザックリ何ですの?」


「細かく言うとパンクするだろ? それに長くなること前提の手は打ってあるからな! とにかく長期戦に持ち込むこと!」


「倒してもいいんっすよね?」


「ま、まぁ……」


 あれ? ライチのやつ何故か人を殺すような目をしてるぞ? もう一回道徳の授業やった方がいいか?


「準備ができたら表の車に乗り込め!」


 グレーホールを使えれば確かに早いが、ピッタリ白と黒を五分五分にした上で意味を持たせるために術式に漬け込むため一回(一人)分を作るのに一週間を要する。俺を含めて五人飛ばすには明らかに足りないので車を使わせてもらうことにした。


「全員いるな? 頼むぞセルゲイ! いざ! 決戦の地ヴルーネ湖へ!」


          ◆◆◆


 正午前、三十分程かけてヴルーネ湖に到着した。「忘れられた湖」というだけあって水気は感じられない。ここなら多少武力行使になっても問題ないだろう。


「対身体強化には距離を取って……」


「お待たせしましたかな? エビス先生?」


「来やがったか」


「えっ……」


 どこからともなく現れたのは予想通り黒服三人で、唯一ギョクロ父だけ顔を晒している。その様子を見てギョクロは驚きが隠せないらしい。


「何で……」


「あいつはこの世界をリセットしようとしてる。取っ捕まえれば反逆罪でお縄だが、捕まえなければ仲間の命が危ない。どうするかは……ギョクロ、お前次第だ」


 どうしてもというなら止めはしない。親子の問題だし、それをどうこうするつもりはない。だが妙に引っ掛かるのがギョクロの口から一度も父親を意味する単語が出ていない。もしかすると……と疑うのはよくないか。


「ギョクロ、父さんと一緒に世界を変えようじゃないか!」


 仮にあいつがギョクロの実父じゃないにしても俺よりは長い期間を共にしてるだろうし、あっち側についても……悪くは思わないことにしよう。


「あーしは……」


 十数年しか生きていない子供にとっては難しい選択だろう。見てられねぇな。


「あーしは……変えたくない! 変わりたくない! 今が楽しいから守りたい!」


「逆らうやつは全て敵だぁ、始末してくれる!」


「来るぞ! 作戦通りに!」


 セルゲイの実力は未知であり子供たちも場数を踏んでいるわけではない。とすれば俺はどこの立ち位置が適任か……


「俺は中盤でサポートを……ぐあっ!」


 一歩踏み出そうかというところで何かに殴られ吹っ飛ばされた。


「エビスコノナカでイチバンツヨイからサイショにツブサセテモラッた」


 この片言に身体強化、俺の知る限りでは一人しかいない。だが世界は広い、ゆえにまだ断言はできん。


「お前は……」


「魔力剣・(えん)!」


「フレイムドルフィン!」


「クッ!」


 不意をつかれたらしい身体強化の黒服はライチとギョクロの一撃によって燃え始めた顔を覆っていた大きめフードを取り、顔を表し……てしまった。


「信じたくはなかったが……ジュロ、やっぱりお前だったか」


「バレてシマッタらショウガナイね! ブッタオす!」


「ここだ! (ハイ)グラビティ!」


「ヌヌヌ……」


 重力系の技は黒魔術師の十八番(おはこ)だが、その弱点として範囲が広くなり過ぎて体力を消費してしまう。しかしこの技なら黒魔術として重力操作しつつ白魔術として範囲指定できる。これぞ灰魔術の特権だ!


「さて、お前が遠距離攻撃を持ってれば別だが時間稼がせてもらうぞ!」


 身体強化を得意とするやつは大体物理を専門とするため距離を取りって動けなくすれば決着はほぼついたようなもんだ。


「依頼に忠実なのはいいけどなぁ、仕事選ばねぇとダメだぜホントに」


 正直なところ灰グラビティをやってる間は他のことができないので少なからず相手との根競べになる。多分俺は体力が少ない方だから俺の体力が切れる前にどれだけジュロの体力および精神力を削れるかが鍵だ。あっちでは黒服一人に対し五人がかりにも関わらずてこずっているらしい、あの黒服もレベル的には準上級以上か。


「SGFはベシャメル王国の治安を守る役割もあるって話だぜ? そのメンバーが破壊の方に手を貸してちゃあ……」


「ダマれっ……!」


 まるで捕らえられた獣みたいな目で睨んできやがる。有利な状況なはずなのに気圧される。


「もっと働いてもらわんことには困るねぇ、SGFの遊撃手さん」


「ウゥ……」


「手を貸しましょう、小休止(ポーズ)!」


「え、あ、あれ?」


 急に灰グラビティが出せなくなった。ギョクロ父の技か、技を消す技なら何度でも出すまで!


「灰グラ……しまっ……」


 もう一度強重力空間を展開しようとしたとき、一瞬で懐に入り込んできていたジュロの顔が見えたかと思ったら空中へと吹き飛ばされた。


「かはっ!」


 ここは臓器でいうところの何だったか……何かが潰れたようで人生初の吐血を体験した。


「ワタシのカチだ! ハァァァァアアアア!!」


 怒涛のラッシュに壁を作って対抗するが血が足りないせいかフラフラして集中できない。


「ぐっ……うぉあ!」


 しまった! 壁を破ってジュロは次の一撃のため振りかぶっている。これを食らったら本当にまずい。


「ワルイけどSGFのイスヒトツアケサセテモラウよ!」


 これは死ん……


「ワープロック!」


「コレナンダよ!」


 突如現れた小型ワープホールにジュロの拳が飲み込まれた。これはまさか……


「……はぁ、グッドなのやらバッドなのやらってタイミングだな」


「来てやっただけありがたく思ってもらわんとなぁエビスよ!」


「僕も暇じゃないんだけどね」


 現れたのはワープホール職人のオオグロと黒魔術研究家のツトムだ。勝手に来たのではなく保険として事前に呼んでおいたわけだが……


「お前らだけか?」


「ミサはあっちに回復できる娘を呼びに行ってるよ」


「そうか」


 あとの二人は元々期待薄だったからしょうがないか。


「さーて、反撃といこうじゃねぇの!」


「君はほとんど攻撃できないだろ? 僕がやるよ」


「俺も最近良い武器に出会ったんで攻撃力上がってんだぞ?」


 一旦こいつらに任せて俺は回復を待たせてもらうとしよう。それにしても悪い予想が当たって同級生とぶつかり合っているこの状況、一体どんな結末を迎えるのか……

どうも!ロカクです!

あっという間に9月になってしまいましたね~、季節の変わり目ですので体調にお気をつけくださいm(__)m

さて、家庭訪問編も終盤に差し掛かって来ました!もう少々お付き合いください!

20時の分もよろしくお願いしますm(__)m

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