お兄様の主張
~二月目初頭~
「今日はここまで!」
「まだ昼っすよ?」
「今日から家庭訪問だからな、早く終わるからってあんまり羽目外し過ぎるなよ!」
釘刺しときゃ大丈夫だろ。基本良い子達だし……良い子達か?
「それじゃ、レッツゴー! チユキ!」
「あ、こういう感じなんですわね」
「おう! いちいち地図見ながら行くのめんどくさいし、下宿生もいないみたいだからな」
素直にそういうわけなので家庭訪問の際は帰宅する生徒に着いていくことにした。その最初はチユキだ。
「いつも電車なので電車使いますわよ?」
「いいぞ、それぐらいの金はある!」
◆◆◆
「ここですわ」
「でっかい家だなぁ」
「どうぞ」
「いやいや、玄関でいいから」
「そうですか、では少々お待ちくださいませ」
そう言うとチユキは奥へ入っていった。にしても暮らしが話し方に出てるよなぁ、お嬢様口調だし。そのわりには電車通のようだが……
「お待たせしました」
「おっ!?」
「別に驚くことじゃないでしょ」
チユキと一緒に出てきたのはSGFが一人ツトムだった。そういえばツトムが原因でチユキはうちに入ったんだったな。
「両親は本当に神出鬼没でいつ帰ってくるか分からないから代わりに僕が話を聞くよ。というか聞きたいこともあるんだ」
「そうか、そもそも俺が話を聞きに来たようなもんだから先に言ってくれ」
「ふむ……チユキに白魔術教えるのをやめてくれ!」
「お兄様!?」
「質問じゃねーじゃん」
「この際それはどうでもいい! とにかく教えるなら黒魔術にしてもらおうか!」
気の知れた仲とはいえ何を言われるかと思ったが、今までの俺の頑張りを不意にする提案だった。
「何でだよ?」
「察せよ!」
「いや、ホントに分かんねーから」
「いいか? まず、僕が黒魔術研究家だってことは知ってるよね?」
「もちろん」
「じゃあ僕の功績は?」
「知らんな」
「そう! まだないからね! そこを何とかするために僕ら兄妹は手を取り合って協力しなきゃいけないんだ!」
「協力する気なんてありませんわ!」
「何っ!?」
「そうだぞ、大体お前のせいでチユキは白魔術やってんだからな!」
「どういうこと?」
「お前を倒すために白魔術やってんだよ」
「えっ……今すぐやめろ! 白魔術なんて不純なもの!」
「落ち着け! 不純じゃないし!」
暗い部屋でひたすら研究してるから精神おかしくなってんのか? 一番目でハズレ引いたみたいだな。しかしこのシスコン加減はまさか……
「お前、意図的にチユキの風呂覗いた?」
「何のことかな?」
こいつは前から嘘をつくときは決まって指で謎のリズムをとる。見えないように隠してるつもりだろうがバレバレだ。
「ちょっと警察呼ぶわ」
「待て! 違うけどちょっと待て! 確かに覗こうとして風呂の前をウロウロしてはいたけど、まさか出てくるとは……」
やっぱこいつ異常だわ。
「昔のよしみで今は警察に突き出さねーけど、次やったらお縄だからな。チユキ、気を付けろよ」
「は、はい……///」
「っつか、そんなんだから嫌われんだよなぁ」
「決して嫌われてはいないぞ?」
「「……」」
「なんだよその目は!」
空気は読めねーくせに俺とチユキの冷たい目に関しては感づいたらしい。
「それが答えだ」
「まだ回答が頭に入ってないんだが?」
「分かんねーならいいわ、それは置いといて一つ言わせてもらうと白魔術も黒魔術の研究に役立つと思うぜ?」
「そんなわけないだろ、相対する存在なんだぞ?」
「これがそんなわけあるんだよ! 相対するってことは普通同じような威力の技を使ったら相殺するわな?」
「そうだろうね」
「そこを最低限の力で越える技術があったらどうだ?」
「大発見……なるほど! 大魔術師兄妹として世に名を知らしめることができるな!」
「そんなとこだな」
ちょっと着地点はずれたが、まぁ概ねオッケーだろ。
「そんなわけでこれからも白魔術を教えさせてもらうぜ」
「ぬぅ……これは認めざるを得ないな」
なんとか丸め込めたみたいだが、俺があんまり強力な白魔術を教えたら黒魔術研究家でも足元救われるってことに気づいてないのは幸いか。
「まぁこんなもんだろ、同級生と長々と話しててもしょうがねぇしな。帰るとするわ」
「最後に一つ!」
「ん?」
「昨日ホテイの従者が来て近々大事が起こるってことですぐ動けるようにって言ってたよ」
「何だろうな? 一応了解した! じゃあな」
「またな」
官僚にはやっぱ従者がいるのか……そこじゃなくて近々大事が起こる? ニュースは見てる方だが俺たちに関わるような話は……一応心の奥底にしまって今は一声あるまで家庭訪問に専念しよう。
どうも!ロカクです!
調べによると週一じゃ少なすぎるってことで出来る限りの週(土曜)2本以上上げていこうってことでその第一段です!
一本目は午前中、二本目はいつも通り20時とさせていただきたいと思います!
これは早く話が進んでいいんですが、ストックが絶対必要になってくるので作家の筆力が試されるらしいです!
では、また二本目で!




