補習・暴発修正
~一月目・二十二日~
「よーし! 厄介事はとっとと片を付ける! というわけで昨日言った通りギョクロの暴発癖改善授業をやるぞ!」
「あのどこに飛ぶか分からない魔法をどうするんっすか?」
「そこをどうにかするためにお前たちに来てもらったわけだ!」
昨日の指示通りツバキを除いて全員が登校して来ていた。
「とは言っても一発で倒れられちゃあ特訓にならんのでとりあえず小技を教えてやるからギョクロはこっち来い。あとは声かけるまで好きにしてていいぞ」
◆◆◆
「よし! とりあえず形になってきたんで今日の授業の本題に入る! 最初は……ライチとチユキ! とりあえず20メートル間隔くらいでそっちに立ってくれ」
まだ何をするか分かってない二人はなんとなくで約20メートルの間隔を作ってくれた。
「そして真ん中にこのペットボトルを置く。それからある程度距離をとって……んじゃ、あの二人の間を通してみな。まだペットボトルには当てなくていいからな」
「うん……はっ!」
「おっ! ちゃんと形にはなってる……が」
「黒い掃除機!」
「そうそう! そういうことだよ! お前たちなら今みたいに吸い込んだりライチなら弾いたりして身を守れるだろうってことで今日出てきてもらったんだよ!」
「そういうことっすか」
「この黒い掃除機は便利ですけど限界がありますわ」
「名前のわりにシビアだな! まぁキャパオーバーする前に何とかしてくれんだろ、ギョクロがな」
「う、うぃっす」
「これが三連続で通ったら次は15メートルって感じで狭めていって、今日は5メートルまでいくぞー」
小技を使っているとはいえ5メートルをやる頃には魔力を絞り出すくらいになってるだろう。だがそこで本来はない容量を作り出すことで限界を超えられる。実際魔法学校ではよくある話だ。
◆◆◆
「よっしゃー、ラストー!」
「うにゃああああ!!」
「おっ!?」
猫のなき声のような声を発しながら放った一発はまさかのストレート、ペットボトルに直撃した。この過酷な反復作業をよくやってくれたと思う。
「今日はここまで! 三人とも、特にギョクロはお疲れさん!」
「僕らは別に……ねぇ?」
「早々にクロちゃんの本領が発揮されて、あまり手を出す必要はありませんでしたのでね」
「そう言ってもらえると助かるわ」
「うっ……」
そんなに大変じゃなかったらしい二人を労っている間にギョクロは案の定ぶっ倒れた。
「まぁそうなるだろうな、でも一応大丈夫かー?」
「……」
「先生、これパワハラっすよ」
「えっ!? パワハラ!? 俺クビ!? クビにする人もいないのにクビ!?」
「うろたえすぎですわ」
急にライチが職を脅かしてくるもんだからつい動揺してしまった。にしてもパワハラなんて今まで考えてもみなかったな。
「大……丈夫……」
「おぉ、意識は残ってるか! んじゃ、改めて……すまん! ちょっとやりすぎたっぽい!」
「大丈夫……だって……」
「分かってるよ。今は辛いかもしれんが、俺の生徒である以上将来は約束してやる! お前たちもな!」
「そりゃどーも」
「楽しみですわね」
「素直だな、疲れてんのか?」
「いっつもっすよ」
いやー、いっつもではないだろ。それでも今日のメンバーは素直な方か。
「命に別状はないとは思うが、とりあえず診療所連れていくからお前たちは帰ってゆっくり休めよ!」
「私はご一緒しますわ、一緒に帰る義務がありますので」
「僕も共犯なんで」
というわけでその場の全員でテトラの診療所へ向かうこととなった。
「何やってるんですか!」
事情を説明するや否や早速怒られた。全面的に俺が悪いので真摯に受け止めるとしよう。
「だから今回は悪かったって! ほら、ちゃっちゃと点滴打つなりして薬出してやってくれよ」
「そういう問題じゃなくてですねぇ! ……まったく、エビスさんと言えどあんまりこんなことが続くようでしたら上に言いますからね!」
「それはまずいっつーことで今回限りにするわ」
そういえば俺をクビにするやついたなぁ、危ない危ない。
「触診とかしないといけないんでボーイズは出ていってくださいね!」
そういうと俺とライチは外に出された。当然っちゃ当然だけどな。
「あーそういえば今度家庭訪問するんだが都合悪い日とかあるか?」
「んー、嫌っすね」
「嫌っすねじゃねーよ!?」
「まぁ……来年とか?」
「一ヶ月以内で頼む」
「注文多いっすね、近々聞いときますよ」
「あぁ」
あーだこーだとライチと喋っていると女子三人が診察室から出てきた。
「もう遅いし、ここにいるよりは帰って休んだ方がいいという所長の判断で今日はもう帰らせてあげることになりました。でも、くれぐれも今後は……」
「わかったわかった、ホントお前ナースに向いてるよ」
「なっ……!? からかわないでください! さようなら!」
ふっ、そういうとこはまだまだだけどな。
「よーし、帰るぞー……つってももしあれだったら送るぞ?」
「僕はまぁちょっと遠いし悪いんでいいっす」
「クロちゃんは私が送りますので大丈夫ですわ」
「そうか、じゃあまぁ気を付けてな」
ちょっとは頼ってくれてもいいんだぜ? 最近の子供はやけにませてるから大人に甘えるってことも授業に取り入れるべきなのか? そんなことを考えながら俺はまたいつもの自宅への帰路に着いた。
どうも!ロカクです!
二週飛ばしてしまって申し訳ありませんm(__)m
その間にしっかり道筋立てたんでしばらくは大丈夫……です!
暑すぎて頭狂ってたら分かりませんけどwww
そんなこんなで20話目!次回もお楽しみに!




