ベストでありワースト
~一月目・二十一日~
「昨日はお疲れ! まだ疲れが抜けきってないであろう今日は試験の総評を伝えようと思う!」
強がってはいるが俺は今日頭が痛い。あんまり動くとリバースしかねないので生徒たちに気を遣っているフリをして自分も楽しようって訳だ。
「まずは魔法使い組だが、正直俺はあんまり見てないんでテトラ! よろしく!」
「えっ!? 来るだけでいいって言ってたのに……いたた……」
ちょくちょく見てはいたが会話やら音やらは聴いてないし、全体的な状況を見ていたわけではないのであいつらのアドバイスならテトラに任せた方がいいだろう。俺と同じく二日酔いのようだが……
「まぁいいでしょう、特筆すべきは戦闘シーンですね。相手は物理タイプの少年とそれをフォローするパワータイプの少年? でした。先制された時点で苦しい戦いになっていたので、なんとか最初の地割りを防げたら優位に進められたと思います」
「なるほど、個人としてはどうだ?」
「チユキちゃんは殴られたときの咄嗟に出したガードが良かったですね。あと気絶したギョクロちゃんを連れてとにかくスタート地点に戻ろうという判断もポイント高いです。ギョクロちゃんはチユキちゃんがやられたことに逆上して自分のキャパを越えた大技を出してしまったのは見過ごせませんが、あの規模の魔法を出せるのはすごいことですし何より暴発癖に助けられて結果オーライじゃないですかね? 多分目の前の敵に当ててたら失格になってたでしょうし」
「ちょっと待ってよ! 『あの規模の魔法』とか『結果オーライ』とかワケ分かんないんだけど!?」
「それはあとで分かるだろ、アドバイスとかあるか?」
「そうですねぇ、小回りの利くチユキちゃんはもう少し大技を、大規模技が得意なギョクロちゃんは体内エネルギーを高めると同時に小技も取得した方が幅が広がると思いますよ!」
「ということだ、魔法使い組は肝に命じるように! 続いて前・後衛組だが、総合的には特に指摘する点はない。個人的にはライチのリーダーシップは認めるが、独裁になるとかえってチームに悪影響を与えることになるから気を付けろよ。ツバキ……としてはよくやってくれたし、スゥの危機察知もなかなか良かった。スゥが止めずにライチが斬りかかってたらライチも火ダルマだっただろうからな。あとはまぁ、スゥはそろそろライチに慣れろよ。以上!」
この話の間、一応うんうんと聞いてくれていたので何かしら得るものがあればと思う。あえてこれからどうするかは言わなかったが、それは自分で見つけるべきだと判断したからだ。
「で、ここからが問題だ。前・後衛組の前に現れた敵が何故か急に燃え上がった。それもギョクロがぶっ倒れた直後にな」
「何それ!?」
「となると答えはひとつ、ギョクロの大技はフィールド逆サイドにいた前・後衛組の所に飛んできたわけだ」
「あれってそういうことだったんっすね」
「あぁ、そしてこの一件が指し示す意味は……『ベストでありワースト』だ」
「「「「「!?」」」」」
急にこんなこと言われても意味は分からんだろうな。
「要するに、今回は奇跡的に『フィールド逆サイドの敵』に当たったから失格にもならず敵も倒せてベストだったとして、裏を返せば『目の前の敵』もしくは『目の前の味方』あるいは『逆サイドの味方』に当たっていればワーストのシナリオ、つまりこうして全員が合格することはなかったことになる。俺があんまり教えてやれなかったっていうのはあるが、やっぱりこの暴発癖を改善することはマストだろう」
「う、うん……」
「ということで明日はギョクロのコントロール改善授業をしようと思う! ギョクロはもちろん、ライチとチユキも強制登校な。ツバキは任意とする! 今日はここまで!」
熱くなってついくどくどと話をしてしまったが、一応それぞれに課せられた課題を提示することはできたと信じたい。先はまだまだ長いし、今回の試験はライセンス以上に得るものはあったことだろう……
どうも!ロカクです!(*`・ω・)ゞ
今回はちょっと分かりにくいこの世界のカレンダー一月分ご用意しました!
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これが一月目(言うなれば四月)のカレンダーなんですが、今回は特例として日曜に学校に来てもらってるわけです。
ってなわけで次回もよろしくお願いしまーす!