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エビス先生の異世界学校経営論  作者: ロカク
初級ライセンス試験編
18/69

初級ライセンス試験終了!

「エビスさんっ!」


「何だ!? 何で怒ってるんだ!?」


「何度呼んでも返事しないからですよ! ニヤニヤしながらモニター見てるし……」


 そんな馬鹿な! 俺は至って真面目に……でもライチとスゥの相性は良くないと思いつつ悪いとは思わなかった。それが表情に出ていたのか?


「それよりギョクロちゃんが倒れちゃって大変なんですよ!」


「えっ!? あー、力使いすぎたのか……敵とエンカウントしたか?」


「はい! 二人組の男の子? 達で、先生のお願いがどうこう言ってたんですけどまさか……」


「こっちも黒幕は同じかもしれん、ちょっと行ってくる」


「エビスさん! 気を付けてくださいね!」


「あぁ……」


 別に喧嘩しに行く訳じゃないし、あいつと決まったわけではないが、もう本当にあいつの指示かどうかはさておき大人として一言言っといてやらないと気がすまない。こんなステップは平和的に切り抜ける予定だったんだ!


「せっかくのチャンスを無駄にしおってからに……」


「おい!」


「なんだい? まだ試験は終わってないだろう?」


「お前が仕向けたんだよな?」


「何のことかね?」


 戦う必要がほぼほぼない中で積極的に潰しに来たのはフクロウの生徒で間違いないだろう。それだというのにシラを切ろうとするこいつはすこぶる気に入らない。


「とぼけるっていうならそれもいい……が、何か気に入らねぇことがあるなら直接俺のところに来い! 俺の生徒はもちろん、お前の生徒にも迷惑だ!」


「何を言っているのか分からないが、うちの生徒のことはうちで決める! 口を出さないでもらおうかね!」


「お前の考えが変わらない以上はお前の生徒が可哀想でならねぇよ」


「口を慎みたまへ!」


 もっと言ってやりたいところだが俺はあんまり口が達者じゃないし、他校の事に口を出すなと言われればもっともだ。しかし教師の事情で生徒を巻き込むのは本末転倒、許されないことだ。いつかこの論争に決着をつけなきゃいけねぇな。


「おかえりなさい! どうでしたか?」


「ダメだな」


「話聞いてもらえなかったんですか?」


「いや、俺の口下手が災いして言いたいこと言えてない気がするわ」


「そうですか」


「それよりそっちはどうだ?」


「はい、もうちょっとで合流ですね」


 先に戻ってきた前・後衛組がゆっくり戻ってくる魔法使い組を待つ形となっている。手の平サイズのボールが小型ビニール袋いっぱいになっているのを見ると数は多く持っているみたいだが……


「来ました!」


『ギョクロちゃん!』


『相手にやられたんだね』


 チユキが担いできたギョクロは息はあるものの目を覚ます様子はないようで、しばらく動けなさそうだ。フクロウのヤローがもう刺客を差し向けてないことを願っとくか。


『相手にやられたと言いますか……自爆と言いますか……』


『暴発癖の上に自爆とはねぇ』


『すぐ回復しなきゃ!』


『私はいいのでクロちゃんをお願いしますわ』


 何にせよ合流できて良かったと言うべきか……だが、まだボールが揃ってないんじゃなかろうか?


『ボールはどうだった?』


『はい、ライチさんの青とツバキさんの紫は手に入りましたわ』


『こっちはチユキの黒だけ、ってことはよりによってギョクロのだけないってことか~』


『クロちゃんのボールを入手することができなければ私は心中しますわ』


『まだ終わってないから縁起でもないこと言わないで……何のために「指定外のボール」も集めたのか考えてみてよ』


『そうですよ! こんな顔ですけどライチさんはいろいろ考えてそうしたんです!』


『こんな顔は余計だよね?』


 ここで遂にライチの作戦が実行されるわけか。時間がなくなってきて自分のボールを持ってないやつは大体ゴール(スタート)地点に戻ってくるってとこを利用しようってことだろう。


『男に対してはツバキかチユキ、女に対しては僕がいくってことで』


『なぜですか?』


『基本的に女っていうのは男からの頼みを断らないんだ。逆もまた然りで、うちの女子はレベルも高いし必然的に成功率も上がるってこと』


『絶対ライチさんは女性と付き合えませんわね』


『同感です』


『何でそうなるの!?』


 仮にライチとはいえレベル高いって言われてるんだから素直に喜べばいいものを……でも多分顔とかその他諸々をレベルで判断する時点で間違ってるんだろうな。


『おっと、早速キョロキョロしてるペアを発見!』


『女性と男性のようですが?』


『そこはまぁ、二人で行く! ツバキは回復に専念してもらうとして、チユキ付いてきて』


『一人でいけないんですの?』


『違うよ! さっきも言ったように確率の話なの!』


『はいはい、分かりましたわ。ツバキさん、クロちゃんは任せましたわよ』


『了解です!』


 なんかナンパみたいだが、合格がかかってるんだから真面目にやってもらいたい。


『すんませーん、もしかしてボール足りてないんですか?』


『あぁ、その通りだ。君たちもか?』


『そうなんっすよ、もしお互いに求めてる色持ってたら交換しませんか?』


『いいだろう、君たちは?』


『こっちは赤が欲しいんっすけど』


『持っているよ』


『そっすか、そちらは?』


『我々は緑を探しているんだが』


『ありますよ!』


『交渉成立ってことで! その場にボールを置いて、お互いちょっと遠回りに取りに行くってことでいいっすか?』


『よかろう』


 近接距離ですれ違うとすれ違いざまに刺される恐れがある。それを避けるための策だろうが、落ち度がないか? 或いはそれも……?


「ここは『武器と』ボールを置いてっていう流れじゃないんですかね?」


「そうだな」


 と言いつつ相手の代表者とライチはほぼ同時にボールに手をかけ……る前に相手の代表者は動作を変えて背を向けているライチに爆弾を(ほう)った。


「あっ!」


『魔力剣・盾!』


『何っ!?』


 爆音と共に煙の中へと消えたライチは左手でボールを手に取りつつ、右手で自分の背後に剣を突き立てて作った壁で爆弾を防いだ。


『ふっふっふ、保険かけといて良かったよ』


「保険? どういうことでしょうか?」


「さっきライチの言葉が気になってたよな? あいつは多分まだ剣無しじゃ盾を作れないんだ。こっちが剣を捨てて相手が武器を隠し持ってたら防ぎようがないってことであえてお互い武器を持っててもいいようにしてた事を言ってるんだろうな」


「なるほどー」


 本当にあいつは咄嗟の判断力がずば抜けてるな。


『まんまと君たちの手のひらで踊らされてたってわけか。だが、こちらも無策だった訳じゃない』


『えっ!? うわっ!』


『ライチさん!』


 相手の指パッチンを合図にライチの持っていたボールが爆ぜた、と同時に吹っ飛ばされたライチはまたしても爆煙の中に消えた。


『頭使ってたのは君だけじゃなかったってことだ。確かに赤のボールも持ってはいるが、君たちを邪魔するように言われてるんでね。おっと話しすぎてしまったかな、それではここで失礼するよ!』


『ライチさん! 大丈夫ですか!?』


『クッ……魔力剣・(とらえ)!』


『ワッツ!?』


 地中から出てきた手がメンバーのところへ戻ろうとした相手男の足を掴んだ。


『チユキ! 一発食らわしてやって!』


『えっ……しかし……』


『いいから!』


『……分かりましたわ! 偉大なる(グランド)……』


『ま、待ちたまえ! 分かったから! あげるから!』


『ものわかりいいじゃないっすか、オッケ! ストップだチユキ!』


『あぁ、はい……残念ですわね』


 最初っから撃つ気はなかったんだろ? いや、ライチはさておきチユキは本気で撃とうとしてたかもなぁ……


          ◆◆◆


『よっしゃー! 赤ゲットしてきたー……ってまだ起きないの?』


『はい、回復を待っていたら制限時間に間に合わないかもしれません』


『しょーがないなぁ、僕がおぶるよ』


『えっ!? ダメですわ!』


『それしかないでしょ! 少なくともこの中では一番力あるし!』


『そうでしょうけど……』


『ここで言い合いしてる暇ないから! 文句なら後で聞くからとりあえず行こう!』


 そう、残り時間は3分切ってる。ゴールは目の前とはいえ万全を期するべきだ。


『全員自分のボール持ってるね? ギョクロの分は誰か懐にでも入れてやって! ……よし、それじゃあ行くよ! せーのっ!』


 スタート地点にはスタートしたときにはなかったセンサーゲートが設置されており、生徒たち四人が通ると赤だったランプが緑に変わった。多分ボールを持ってなかったらそこで止められるんだろうが、無事に通過できたらしい。


『だぁー! 疲れたー!』


『本当に合格率95%もありますの?』


『難しく感じたのは私たちだけだったかもしれませんね』


『それはそうとライチさん! あなた……』


『う……うぅん……あれ? 試験は?』


『クロちゃん!』


『ギョクロちゃん!』


『もうすぐ終わるんじゃない?』


 チユキの文句を遮るように目を覚ましたギョクロは周囲を見渡している。


『第××回初級ライセンス試験これにて終了! この時点でスタートラインゲートをくぐれている方々が合格となります! ボールは出口前の箱に入れてご帰宅ください! お疲れ様でした!』


『ってことは……』


『合格ですわ!』


『えー!? あーし何もしてないのに!』


『私たちが何とかしたんですよ!』


 呆然とするギョクロも含めて女子三人が手を取って喜んでいる。さて、そろそろ出迎える準備しとくかな。


          ◆◆◆


「あっ、先生! お疲れさんっす!」


「いやいや、それ俺のセリフだわ。何にせよ無事合格できたようで何よりだ!」


「観てたんですか?」


「まぁな」


「いろいろありましたけどね~」


「それはこの際いいんだよ! それより今回の総評を伝えたいところだが、疲れてるだろうから明日にする! 全員休まないように! 以上! 改めてお疲れ!」


 意識を取り戻したとはいえまだ万全でないギョクロと肩を貸すチユキを中心に速度を合わせて歩くツバキとライチ、一回り大きくなったような気がするその小さな背中たちはまだこれからが大変だということを理解し……


「エビスさんお疲れさまです!」


「いや、今俺の中でまとめようとしてるからね!? 俺はもう今日を終わろうとしてるからね!?」


「なーに言ってるんですか! 今日は飲みに行きましょ! もちろんエビスさんの(おご)りで!」


「まだ雀の涙程しか給料取ってなくてだなぁ」


「とりあえず今まで手伝ってきた分の報酬ってことで!」


「……しょーがねーなぁ」


「やったー!」


 いつかは返そうと思ってたし、この前の任務の報酬金も大分残ってる。溜まった頃一気にとなると何買わされるか分からんし……まぁ、今日ぐらいは祝いの意味も込めてちょっとだけ飲むとするか。

どうも!ロカクです!

6月入ってジメジメした日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?

さて、言い忘れてましたが「」は主人公である末広が直接?見聞きしていることで、『』はモニターのむこう側の声です!一人称小説なんでね!

そんなわけで今回はここまで!では、次回もよろしくお願いしまーす(^-^ゞ

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