初級ライセンス試験~序章~
~一月目・十七日とんで十八日~
「全員知っての通り明後日全国一斉ライセンス試験がある!」
「改めて言うってことはそういうことっしょ!?」
「お察しの通り、お前たちには初級試験を受けてもらう!」
初級ライセンスがあれば任務の幅が広がるのはもちろん、実力の証拠にもなる。とはいえそんなに難しいもんでもない。
「どれぐらいの方が合格できるんですか?」
「確か毎回受験者数の95パー以上は合格してるって聞いた気がするが、俺の戦術に従えば全員ほぼほぼ合格できる!」
「あーしでも!?」
「もちろんだ!」
~一日とんで試験当日~
「とにかく『あれ』だけ守れば大丈夫だから! 行ってこい!」
「ちょっと入りにくいっすね」
「ライチ君怖じ気づいてます?」
それもそのはず。ここはライチとギョクロが爪痕を残しつつも落ちた大学校、アルペジオ学園なのだから。
「いや、もしかしたらアルペジオの生徒にキャーキャー言われるんじゃないかと思ってさ」
「何言ってるんですか?」
「今回はユキッチーのサポートなしでもいけるんじゃない?」
「えーっと、話聞いてなかったんですの?」
「はいはい。お喋りはその辺で、時間になるぞ!」
そう言って生徒たちを送り出し、俺は控え室へと向かう。受験者全員に追尾性小型カメラが付いていて保護者または引率者はモニターで様子を見ることができる。
「金かかってるよなぁ、俺のモニターは……」
「これはこれはエビス君じゃないか!」
「あぁ、居るとは思ってたけど顔合わせたくはなかったな」
「またまたご冗談を」
こいつはSGFの中でのみならず俺がこの世界でもっとも馬が合わないやつ、フクロウだ。
「合格率が高いとはいえ、君の生徒が果たして受かることができるかな?」
「何とでも言ってろ」
『それではこれより初級ライセンス試験を開始いたします。ルールは簡単、これからみなさんにくじを引いてもらいまして出た色のボールを持って制限時間二時間以内にスタート地点へ持ってこられれば合格です』
ここまでなら簡単そうなもんだが、毎回必ず裏がある。それゆえに今まで一度も全員合格はない。ライセンスの価値がなくなるからとかなんとか……
『ただし、受験者数に対して必ずしも人数分のボールがあるとは限りません。早い者勝ちです。しかし、盗むのはおおいに結構です。自分の色のボールでなくてもライバルから徹底的に奪うというのも良いかもしれませんねぇ』
急に司会が含みを持たせてきて不安この上ない。このルールで作戦のデメリットをカバーできることになる……か?
◆◆◆
『全員くじは引きましたね? それでは検討を祈ります。位置について、よーいスタート!』
全受験者が一斉に走りだした。
「カメラは一つでいいんだよなぁ」
小型カメラは音も拾っているためヘッドホンをすればその場の会話も聞くことができ、スイッチで音声を切り替えることができる。
「ここでリーダーシップを取るやつは……」
『僕に付いて来い!』
「だろうな」
どうやらライチが指揮を執るらしい。大丈夫か?
『制限時間がある以上ゆっくりはしていられない。とりあえずくじを見せあってメンバー全員の色を把握して、それを中心に探そう』
そうだ、それでいい。ゆっくりしていられないと言いつつ案外冷静で、あえて自分の色を「言う」ではなく「見せあう」としたところは周りを警戒してのことだろう。
『よし、オッケー? そんじゃあ二手に分かれてメンバーの色を意識しつつ何色でもいいから持ってくるってことで』
『組み合わせはどうします?』
『あー、僕と中衛魔法使いで組むと攻撃力が片寄るからダブルス初級ライセンス組で行ってもらっていい?』
『うーい』
『久々に腕がなりますわね!』
『となると僕とツバキになるね』
『あっ、はい』
話はまとまったみたいだが、「何色でもいい」っていうのはもしかして……そこまで考えてるのか?
『一時間後にここ集合ってことで! 解散!』
スタート地点向かって右に魔法使い組、左にライチとツバキは進み始めた。とりあえずは作戦通り、一人にならないようにそれでいて効率的に動き出せたようだ。無事合格してくれればいいが……
どうも!ロカクです!
先週は飛ばしてしまって申し訳ありませんm(__)m
GWの反動ですねwww
さて、ではしばらく初級試験のお話にお付き合いいただくということで今回はここまで!
次回もお楽しみに!アリィヴェデルチ!