敷かれたレールの分岐点
世界にはかなり多くの学校があり、言わずもがなそこには多くの「先生」がいる。どうしてもなりたいって訳ではないけど敷かれたレールはそこに繋がっているわけで……
「はぁー、なかなかうまくいかんなぁ」
端から見ると多分真面目な俺、海老沢末広は教師志望の大学二年生。公務員を目指している手前多少頭に自信はあるが、これと言って飛び抜けているものもない。よく言えばオールマイティー、悪く言えば取り柄がないと言ったところだ。
「どうしたもんか……」
うちの家族は全員教師または教師志望。母は寿退社で今はパート感覚で塾の講師をやっている。姉もいるが今は家を出て多分その手のところで働いていることだろう。こんな状況からして俺に選択肢はなかった。
「ただいまーって言っても誰もいないか……どわぁ!」
俺はとあるマンションの一室に住んでいて、朝家を出るまでは床も天井もあった。はずなのになくなって代わりに空間が歪んでいる。
「どうなってるんだ!?」
部屋を間違えたか? いやいや、扉の部屋番号も間違いないし部屋を間違えたとしてこんなことってあるのか!?
「ここは一旦晩御飯を買いにコンビニに行こう、多分疲れてるんだ。エナジードリンクでも飲めば大丈夫だ!」
そう言い聞かせて部屋に背を向け歩き……出せない。自分では前に進んでいるつもりだが、さながらランニングマンならぬウォークマン? になってしまっている。
「くっ……なんて吸引力……うわぁああああ!!」
進むどころか引き戻されて俺は歪んだ空間に放り出されてしまった。
◆◆◆
(どこだここは……水中? でも溺れないし味もしない)
「はいどーも! 私は今日ここを担当しているいわゆる番人です!」
声は聞こえるけど姿は見えない。俺は今どうなってるんだ?
「声に出さなくて結構、といいますか喋れないと思いますんで心の中で唱えてください。見たいテレビがあるんで……一つだけ質問にお答えします!」
テレビ優先かよ! いや、しかしテレビという概念があるということはタイムスリップだとすれば現代から百年弱前か、とか考えてる場合じゃない!
(じゃあ……これから俺はどこに行くんですか?)
「つまらないですねぇ、それはご自身の目でご確認ください! 次会うときはそこそこ良い男になっててくださいね! では、幸運を願っていますよ!」
結局答えてもらってないんだが!? ってな感じでセルフツッコミを入れているとだんだん明るくなってきて、瞼の感覚も戻ってきた。ゆっくり目を開けていくとしよう。
「ん……」
目が覚めたのは泥酔した酔っぱらいさながら、人通りの多い大通りの脇にあるゴミ捨て場だった。
「なんでこんなとこに? そもそもここはどこなんだ?」
大通りに出るとそこは異国情緒が漂っており、どう考えても見たことのない場所だった。そこらの文字は読める。
「どっかで情報を集めないと……お、ここに行ってみるか。読めない文字もあるけどとにかく行こう」
読めないというのは理解できないのではなくて、どうやら古い看板のようでところどころ文字がかすれている。そんな中から「〇〇〇相談所」というところがあったのでそこに向かうことにした。
「ここだな、近くて良かった! お邪魔しまーす」
「いらっしゃいませ! 新参者相談所へようこそ!」
あのかすれてた部分はそういうことだったのか。
「すいません、いろいろと聞きたいことがあるんですが」
「ルーキーの方なら戦士から商人まで何でもサポートしますよ! ちなみに初回無料です!」
本来なら金がかかるってことか? だとすれば助かったな。
「それではご質問伺います!」
「えーっと、ここはどこですか?」
「記憶喪失とかですか?」
「違います」
なんかもうすでにこの相談員イラッとしてない? 俺なんか間違えたこと言った?
「何でも答えますって言いましたからね、ここはベシャメル王国と言いまして六大国の一つです」
「地球にそんな国ありましたっけ? そもそも六大陸じゃなかったですかね?」
「ちきゅ……なんですか?」
まさか地球を知らない!? じゃあここはどこ? 俺は……あ、自分の事は分かるわ。
「んじゃあそれは置いといて、俺はこれからどうしたらいいんですかね?」
「職業は何ですか?」
「え……分かんないんですけど」
「えっ!?」
そんなビックリすることなのだろうか?
「これは失礼しました、全くの白紙の方は珍しいのでつい分かってる体で話してしまいました。ちなみに白紙というのは言うなれば新しいゲームを買って起動したまでのまっさらな方のことを言うんです」
なるほど、その例えはよくわからんな。だがしかし、要するに生まれたてみたいなことだろう。そういうことにしておこう。決して無職のことじゃないことを祈る。
「となれば久々にこれを出さなければなりませんね!」
「これは?」
出てきたのは謎の機械、これでいったい何をするというのか?
「これは能力反映機、通称『腕』です! ちょっとここに手をかざしてみてください!」
「こうですか?」
「そうです! そのまま……はいオッケーです!」
印刷された紙を相談員はじっくり見ている。
「ほほぅ」
「どうなんですか?」
「あなたは補充要因としてここに来たようですね。先生なんですよね?」
「まだ卵ですけどね」
「そうですか、あなたの職業は『教師』と出ました! しかしまだ仮登録です。紹介状を書きますんですこーしばかり修行してきてください」
言われるがまま紹介状をもらってやって来たのはアルシエード学園。これが夢か幻想だとしても少し修行するだけで教師になれるならそれもいいかな。
「すいませーん! 相談所の紹介で来た者ですけどー!」
大きな扉を開け放った俺の別世界でとりあえず教師になるための日々がこうして始まったのだった。
どうも!初めての方ははじめまして!ロカクと申します!
前作の反省を生かして進めていこうと思っている今回なんですが、また見切り発車ですwww
とは言っても前回と違ってストックは作ったんでなんとかなる……と信じたいです!
さて、なぜ能力反映機が腕と呼ばれるのかと言いますと、AbilityのAとReflectionのR、そしてMachineのMを繋げるとARMとなって腕となるわけですね!お分かりでしたか?
そんなわけで次回もよろしくお願いします!