4,宅配業者は空気を読まずに街を歩く
――――暇だ。
何度繰り返しただろう、この言葉。
もちろん、ひとりの室内――ひとりの家でそんなことを何回も呟いていては少し変人の部類に入ってしまうが。
「あー、暇だ」
学校が休みになったものの、私は最新のゲーム機などという暇つぶしのものはあまり持っていない。
だから、パソコンを使って遊んでいた。ゲームなどを見ていたが、もう遊んでいないものは私の嫌いなアクション系のゲームだけ。
ネタが尽きてしまった。
便利なようで、実は不便なのだろう。私はこのインターネットというものをそう思うようになった。
「暇だ」
本日、百回以上つぶやいた言葉をまた、私は繰り返す。
テレビはつけっぱなしにしてあるが、平日の昼前など、何も面白い番組はない。
だから、どこかの化粧の濃いおばさんが喋っている番組をつけっぱなしだ。
実のところ、主婦の疲れた話など聞きたくない。けれど、他のテレビ局の番組では、嫉妬や妬みなどといった、ドロドロとしたものがテーマのドラマをしていた。
『賢治さんは私のものよ!』なんていうドラマは見たくもない。
仕方なく、これが一番まともだったのだ。
テレビを消すこともできたが、音がないとさみしい。
独りだということを、ひしひしと感じることができる気がしたからだ。
「暇だなぁ」
そして、本日何回目とも知れぬ言葉を私は口にするのだった。
ピーン、ポーン
突然、家の呼び鈴が鳴った。
「宅配でーす」
軽い感じの男の声がした。けれど、私は無視する。
「あのー、お留守ですかー? お留守でしたら返事をお願いしますー」
留守だったら返事は来ないだろう。などとひとりで突っ込みながら、私は検索ボックスに文字を打ち込んでいく。
ピーン、ポーン
「お留守ですかー?」
間延びした声だが、安心感は得られなかった。
私は臆病者だ。昨日の事件を鼻で笑っておいて、ひとりで震えている。
だから、私はすくっと立ち上がり、カーテンを閉めた。
リビングにいれば、大体のことはできる。
「暇……か?」
そして、私は自問自答を始めてしまった。
それもすぐに終わる。
ひとり、私はいる。