寺にはやはり霊能者がいるのでしょうか?
ふよふよふらふら幽霊ライフ〜
ウロウロしててわかった事は、どうやら墓地に幽霊はいないようです。
墓地は夜でも昼間でも静かな物です。
幽霊は街中の方が多いみたい。その中でも特に、映画館や劇場、あとは学校が多い。
その人が死んだ場所や、思い入れの強い場所にいるんだと私は思った。でもたまに、思い入れとは関係無く幽霊が集まっている場所もあったりする。普通の家だったり、なんにもない道の端だったりもするけど、引き寄せる力でも働いてるのかな?私から見ても気になるなって場所だから、きっとそうなんだと思う。
それと、多分だけど幽霊同士が存在に気付かないのは、お互いを"視よう"としてないからだ。自分の死すら受け入れられていないのに、他の幽霊が視える訳ない。だって視えてしまったら、自分が死者だと認める事になる。だから、読書好き幽霊さんも最初は私を視られなかった。でも死神に連れて行かれる段階になったから、私が視えたんだ。逃げて行く私を目で追っていたもの。
死後の世界にも、生者の世界のように理があるんだろうな。
そうあるべき。そうあらないといけない、みたいな事が。
だから私は、ちょっとした実験をしにお寺にやって来た。
お祓いとかあるじゃない?本当に出来る人間っているのか気になったんだよね。
"視える人"って、死者と生者の世界の狭間にいるような感じなのかな?生者なのに死者の世界に身体の一部突っ込んでるみたいな。
まぁまずは、視えるかどうかかな!
選んだのは格式が高そうなお寺。
なんとなく、いかにもって雰囲気がしたんだよね。
ただの勘です。
ふよふよふよ〜っと境内ウロウロして、見つけたお坊さんの目の前で手を振ってみる。
おぉ?!視えてはいないようだが…感じているんじゃなかろうか!眉間に皺が寄った!
息を吹き掛けるのは一般人にも有効だと街中で実験済みだから、お坊さん相手にはバレバレかも。バレバレはつまらないから、周りをくるくる回ってみる。
「こんにちわ!私、幽霊です!聞こえますか?」
声は届かない。
ならば触れてみよう。
私の右手が、するりお坊さんの身体をすり抜ける。
びっくー!!ってした!私もビクッてなった!びっくりした!
なんだかお経を唱え始めてしまった…。どうしよう……私、これ聞いてたら何かなるのかな?
……………………大丈夫っぽい!
普通の幽霊じゃないからかな?それとも悪霊ではないから?あれ?でも悪戯する幽霊って悪霊?私の事じゃんね?
ま、いいや。
三十代くらいのお坊さんだったから、次はもっと上の人を探してみよう。
悪戯してごめんなさいって頭を下げてからその場を離れた。
このお寺、お祓いをよくやってるみたい。
曰く付きっぽい物が蔵にたくさんあった。人間の悪意がこびり付いた物。気持ちが悪い。
本堂に入るとお祓い真っ最中だった。
一人の女の人。
背中に悪意の塊。黒く淀んだ物が付いていて辛そう。でもそれは幽霊ではない。人間の悪意だ。
あれ?なんで私、わかるんだろ?
死神相棒特典の特殊能力かな?
また一つ、質問が増えた。
そういえば最近、骸骨さんに会ってない。
もう私の事、諦めちゃったのかな?
それともお仕事、忙しいのかな?
相棒が欲しかったくらいだもんね。お仕事大変なのかも。
骸骨さん……会いたいな………
……………………………。
何を血迷ってるんだ、私?
あれ?そもそもなんで私は彼から逃げているんだろうか?
相棒なのに……
あれ?あれ?あれ?
何かがおかしい。でも何が?
気持ちが悪い。
お経が?
違う。人間の悪意が。悪意の塊が。蠢いて…
誘われる
「アリーシャ。おいで…」
包まれる。優しさに。
ひんやり黒いマント。
「……会いたかった…」
誰に?あなたに。
「ここは良くないです。貴女は魂。弱い部分を曝け出したままの存在。貴女にここは、悪影響を及ぼします。」
「…どうしてまた、居場所がわかったの?」
「アリーシャが僕を呼んだからですよ。」
「そうなんだ…。呼んだな。会いたくて。どうしてだろう?」
骸骨さんは答えない。
無言で私を抱いて、お寺から脱出した。
私は骸骨さんの腕の中。
なんだかしっくり、安心する。
「名前…」
骨の人差し指。唇に触れて、黙ってって示される。
どうして?欲しかったでしょう?って、見上げてみたけど、骸骨さんは私を見つめるだけ。
何か言ってよ。
逃げてばかりで、怒ったの?
「アリーシャ、名をもらう前に、連れて行きたい場所があります。」
「どこに?」
「……共に、来てくれますか?」
私は、こくんて頷いた。
だって相棒だもの。側にいるのが、当然でしょう?