幽霊ですが海外旅行は行けますか?
ふよふよ漂って〜
生者の便乗でドラマやワイドショー観て〜
気合い入れてラップ音やら物に触れる練習。
誰にも認識されない幽霊ライフは退屈です。こんなんだから、生者に悪戯したくなるんですね。理解しました。
誰か私に気付いてくれんかね?
あ、地獄からの使者(仮)さんはお断りですけどね。
骸骨といえば、彼のお仲間を見た。
見た目は同じ骸骨に黒マント、大鎌を持った死神スタイルだったけど、多分私を殺した彼とは違うと思う。なんとなくだけど、そう感じた。
一回目は交通事故の現場。魂っぽい物の回収をしてた。
二回目は先輩幽霊さんを説得してたように見えた。説得して、何処かに連れて行っちゃった。
隠れて見てたから、何を話してたのかとかはよくわからない。でもきっと、骸骨さん達は死神だ。それならどうして私はあの彼に殺されたんだろう?
謎は増えるだけで解決しない。
だからとりあえず、空港に来てみました!
何がとりあえずかって?
暇だからです。悩むの面倒臭い。
そんで何故空港かと言うと、タダで海外旅行出来るんじゃね?って、気が付いてしまったの!
ふよふよ移動は時間が掛かるし、海の上で方角わからないで彷徨い続けるのは嫌だから飛行機に乗ろうと思う。
すり抜けられるんだから乗れると思う!
一緒に空、飛べると思う!
乗っても乗り物だけが行っちゃって幽霊の私は置いてきぼりになるかもって思ったから、車で確認済みさ!適当な車の空いた席に勝手に相乗りして実験してみた!だから飛行機も行けるって!
問題は何処に行くかだよね〜。
物に触れない私は旅行雑誌が読めない。
目的地を決める材料が不足している。
生前は国内旅行ばかりだったから、海外詳しく無いんだよね。
どうしよっかなーって考えながら、雑誌を開いてる人がいないかを探してふよふよ。やっぱり空港来る前に旅行代理店行っておくべきだったかって思ったけど、ワクワクしちゃって早く空港に来たかったんだから仕方ない。
お!そういえば何処でも入れるんだから、空港探検もするべきじゃね?
整備とか、見学すべきでしょ!
思いたったら即行動。
ふよふよふよ〜っとしてたら、あれ?捕まった??
「アリーシャ……やっと、見つけました……」
あ、あ、あ…アウトー!!!
私の身体?まぁ身体だ、うん。身体を包み込むように黒いマント。まるで背中からハグ状態。右手側には大鎌がチラリズム。今度は魂刈り取られるのかな?それは勘弁願いたい!
「離せ悪魔ー!死神ー!人殺しー!!私は海外旅行に行くんですぅっ!!!」
半狂乱になって泣きながら暴れてみたけど、ビクともしない。
殴ってみたら硬い感触。
あれ?触れる?
「あ、アアアリーシャ…恥ずかしいです。そのように触らないで下さい……」
思わず泣き止んで、久しぶりの"物に触れる"という行為に夢中になってしまった。
胸元にあった骸骨さんの腕に触れてから、囲われた腕の中で反転して身体や顔に触れてみた。
布は柔らかでひんやりしてる。
彼の身体は謎。顔や腕は骨だけど、身体はなんだろ…硬い、けど柔らかい?肉体ではないけど、肋骨とかに直接触れる訳ではない不可思議な感触。
「あぁアリーシャ…契約を……」
どうしよう。何処から突っ込もう…。
まず彼、骸骨で唇無いのに私の額にキスをした。こつんて。
「え?今ので契約しましたとか…無い、よね?」
見上げた先には髑髏。
怖いはずなのに恐怖を感じないのは、私が死んでいるから?
「ちゃんと説明をします。本来は死んだ直後にする話だったのですが…貴女を手に入れられる喜びで手元が狂い、見失いました。」
待ってよ骸骨さん。何故私、あなたの所有物決定?殺した犯人だからか?悪魔なのか?
「考え込む時の貴女の愛らしい癖…このように間近で見られる日が来るとは夢のようです…」
うっとり囁いた骸骨さんの指先が、私の唇に触れた。
彼は私に触れられる。私が見える。私の声が、届く。
「……どうして、私の癖を知ってるの?」
考え込む時、私の唇は尖るらしい。まるで蛸のように。よく友人や家族、彼氏にもからかわれた。
「ずっと貴女を見ていましたから。本当は命を救いたかったのですが、それは不可能。ですからあの股の緩い女の刃ではなく、僕が刈り取らせてもらいました。そうすれば、貴女は僕の物…」
「待って待って!全部理解出来ない!わかるように説明求む!」
「ご説明します。その後で…アリーシャが望む日本の外へも連れて行きましょう。」
それが地獄で無い事を、切に願ふ。