突然ですが刈り取られました
「アリーシャ。貴女をやっとーー殺せます」
まず思ったのは、アリーシャって誰? 私は亜梨沙。日本人。次に思ったのは、ハロウィンってまだだよな? ってこと。だって、恍惚とした雰囲気で台詞を吐いた男ーー多分。声が男ーーが骸骨マスクをしていたから。黒いマントに大鎌を持った背の高い彼はまるで死神。台詞は殺人鬼。何処かのコスプレ大会に巻き込まれたのかと思って周りを見回してみたけど、周りは至って普通。というか、誰も骸骨マスクを認識していない? そんな馬鹿な。
「人違いです。」
変人からは当然、逃げるでしょう。素早く回れ右をして走り出そうとしたけれど、後ろにいるはずの骸骨さんがおかしな事に目の前にいる。
「アリーシャ……これで僕の物にっ……!」
やけにリアルな大鎌が鈍い光を放った気がした。鎌が狙ったのは私の首。訳もわからぬ内に私、殺されました。
幽体離脱〜。
…………………。
………………………………。
ごめんなさい。
幽体離脱どころか私、幽霊になりました! もう戻れません! (てへぺろ)
はあぁぁぁ…やってらんねーわ。
まだ二十七だよ?
彼氏とはついこの間二股発覚で別れたけどね、人生まだまだこれからだよ?
そういえば、上司から奪取したブルーラベルのウィスキー。正月休みに飲もうと思ってたのに!味わう前に死んだ!一本一万越え!なんてこったぁぁぁ!!
絶賛落ち込み中の私が今いる場所は空の上。
胡座を掻いて、ふわふわ浮いております。
夢みたい☆
なんて…夢じゃねぇよ、おい!どうなってんだこの野郎!!
とりあえず、カームダウン。落ち着こう。状況確認だ。
Q. 私とは誰でしょう?
A. 三神亜梨沙。享年二十七歳。
Q. 死ぬ前に何を?
A. 残業終わり、ちょっと贅沢なビールとつまみをコンビニで買ってからの帰宅途中
Q. 誰に殺されましたか?
A. 謎のコスプレ骸骨さんです☆
Q. 今は何を?
A. お空を漂っております。
うん。幽霊でも記憶喪失とか無いみたい。全部ちゃんと覚えてるわ。
その上で、私の死は確実確定。
だって私、自分の遺体と自分の葬式を見た。身体も燃やされた。
ちなみに首はくっ付いてた。何故だろう?
そんでもって葬儀場には私を殺した骸骨殺人鬼がふよふよウロウロ何かを探していたから、速攻逃げて来たけどね。
骸骨殺人鬼、あれ絶対私を探してた。
殺された上に私、何されんの?!
ありえない程怖いんですけどっ!
平凡な私の人生。
特に問題無く、大学も普通に卒業して、就職した。
ちょっとしたパワハラセクハラをやんわり交わしつつ仕事こなして、たまに同僚や上司と息抜き酒。
学生時代から数えて三人目の彼氏には二股されてたけど、面倒無く速攻別れたのが私の人生唯一の大事件だったのかな。
両親も普通。弟はまだ実家暮らしだけど、あいつもあいつで仕事頑張ってた。たまに飲んで、愚痴聞いてやったな。
あぁ、てか…両親どころかばあちゃんより先に死んでんじゃんね?
みんな、泣いてたなぁ………
ま!もう今更なんも出来ないからね!
これからどうしよう?
天使のお迎えも何も無いんですが?
悪い事してないのにあの骸骨に地獄に連行されるとか?それはちょっと遠慮したい。
うっし!決めました!今後の方針です!
骸骨殺人鬼改め、地獄からの使者(仮)さんからは全力で逃げつつ、幽霊暮らし、楽しもうと思う!
もう死んでるし、足掻いても仕方無い。
右も左もわからない幽霊初心者ですが、成仏の仕方もわからないんでふよふよしてよう。
浮遊霊?悪霊化?
なにそれ怖い。
怖い物からは目を逸らし、のんびりまったり幽霊ライフの始まりです!