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予定調和 序章

本編の開始を宣言します。

前回までの第一人称より、一気に変革して第三人称。

しかも序章のために全編説明文。

本編と直接係わり合いのある人物は誰一人として出てきません。

それでもよろしければ、どうぞご覧くださいませ。

 世界。

 ある者は、これほど単純なものはないと言い。

 ある者は、これほど複雑なものはないと言う。

 またある者は、これほど脆弱なものはないと言い。

 またある者は、これほど堅牢なものはないと言う。

 人によって語られる言葉が異なる、それが。


 世界。


 簡潔に言えば、良くある事が起きた。それだけの話だった。

 遠回りに言えば、世界にある幾つかの大陸に存在する機構(システム)が正常及び不備を起こしながら時の流れで延々と過ごし。それに伴い、始まりに綴られたとされる幾つかの「予言」と言う名の人には理解の及ぶ事のない幾つかに支障と修正を起こし、最初のうちは手の内の中だけで何とかなっていたものだが。

 当然の事して起こしては消えて行った幾つかの事象を元に、それが手の中から零れ落ちる程度の歪みを起こした。


 否、それは歪みではなく当然の事だったのかも知れない。

 外に出して置けば埃で汚れてしまう事を嘆く事を回避する為に、埃避けの布を被せたり箱の中に収めるのとは訳が違う。

 永遠に続くものがない様に、永劫回帰するものもまた、滅多にない。

 小石や草花とて、予測出来ぬ風に運ばれる事もあるのだ。相手が生きて考える存在であれば、尚の事。


 これは、そんな世界の一幕に過ぎない。

 どこにでもあり、そしてどこにもない物語の欠片である。



ーーーーーーーーーーー



 何が起きたのかと問われれば、こう応えるだろう。

 世界の危機が起きたのだ。

 余りにも抽象的な言葉ではあるが、当事者である場合はその限りではない。

 まさしく「世界」の終わりだ。

 例え、それがどれだけ小さな世界であっても。仮に、自分達だけではなく沢山の人々や動植物、町や村、果ては見たことも聞いた事もない様な島や国を巻き込んだとしても。


 ただ、それが具体的にどういう事なのかと言うのは残念ながら誰にも知る事はなく。

 また、それらを見聞きした者達が各々の見聞きした物事を信じる事を恐れ情報が流れず。

 故に、それに対して正確に全てを知る者が存在しないのは何も誰か一人が悪いわけではない。


 誰かは、魔王が現れたのだと言い。

 誰かは、勇者が魔王を倒したのだと言い。

 誰かは、聖女が神の声を聞いたのだと言った。


 噂と言うのは不思議なもので、どれだけ押さえつけようとしてもどこからも漏れるはずのない鉄壁の守りを嘲笑うかのように風の様に自由に舞い踊る。

 概ねにおいては、どこからそんな事が世に流布されたのかと不思議に首を傾げる事もあるけれど。

 稀に、真実をついている事があるので恐れ入る。


 どこかに、魔王と恐れられた存在はあったし。

 どこかに、勇者と称えられた存在もあった。

 それらが真実、魔王や勇者であるのかと問われれば、誰にも真偽の程は確かめる事など出来ないだろう。

 どこの誰かと問えば、彼ら彼女らは風の噂で聞いただけだと答えるだろう。

 どこに居るかも不明な、存在すらあやふやな存在のおかげで、彼らは今日も生きているのだから。


 でも。

 だけど。

 それでも。


 聖女がまだ存在する事は、一部の人々しか知らない。

 それは、とある古くから存在する国の。

 これまた古い王宮の一角に、煌びやかな装いに「姫」と「自称」している。

 その国の王宮……奥に出入りを赦された貴族や使用人には一目置かれているが、それは彼女が聖女だからに過ぎない。

 何しろ、彼女はこの国の王族どころか貴族や平民ですらなく。

 神に呼び寄せられた、異なる世界より降り立った存在なのだから。


 ところで、聖女が訪れたのはとある王国だ。

 最初に降り立った所が王宮の神殿や大神殿と呼ばれている所かと言われれば、書籍に残されていないので何とも言い切れないのだが、最終的に何故彼女がその王国を選んで滞在しているのかと言う話は後世の歴史研究家によって諸説提示されている。

 もっとも、そのいずれも想像の範囲を出なかったものだが。

 どこぞの研究家の妻がこう言った事がある。

「お姫様にでもなりたかったんじゃないの、女の子だったんでしょう?」

 案外、そんな所に真実など転がっているものである。

「そんな事、あるわけないだろう……神に選ばれた聖女なんだぞ」

「聖女である前に女の子、まだ子供なんだから。それくらい愛嬌があっていいじゃない?」

 当然の事ながら、とある歴史家は妻の言葉に耳を傾けなかったし。妻も、研究に没頭するあまり家庭を顧みない夫である研究家にちくりと言いたかっただけなので、その話は放置された。

 後に、案外有名になった歴史研究家を研究過程で調べた別の研究家によって、妻の言葉はとても有力な手がかりとなってしまったのは……皮肉なのか否か。


 確かに、どんな形かは誰も知らないけれど世界には未曾有の危機が訪れた。

 どこかに魔王がいたのかも知れない、魔王を倒す勇者が現れたのかも知れない、けれど確たる証拠があるわけでも知っている誰がいるわけでもない。

 唯一記録として残されているが、とある国の聖女に(まつわ)わる文献であり。

 記述としては自由奔放に過ごした聖女の生活が赤裸々に綴られた分権も普通にあり、当時の世界情勢や王国の内情を知る者からすれば「王家や神殿の権威に関わる内容では?」と言うほどのものであり。また、それらを初期より平然と王家が禁書にする事もなく、それこそ王家が背後でベストセラーの様に世間に流通する事を止める事すらなかったと言う事実に対して、世の歴史家は別の意味で首をひねったという。

 簡潔に言えば、聖女は神から齎されたと言う力を使って世界の……あるいは、王国の危機を方法は不明だが救い。その後、神より元の世界に戻る機会を与えられたにも関わらず拒絶し、終生王国の領地の一部を与えられ過ごしたと言われている。

 聖女として事態に関わっている間はともかく、事態が収縮に向かってからは聖女の能力も衰えた彼女を利用しようとする者は数多くあり、当時の王家が背後で守っていたと言うものの。常識を知らないが故の奔放さから数多くの異性をひきつけては弄び、当時のスキャンダル女王やゴシップと言えば聖女と言う代名詞にまでなったといわれている。

 事態を重く見た王家が、聖女を地方に恩賞という形で追放したのではないかと言われているが……それについては王家は今も黙して語らないといわれている。



続く

この物語で大事なのは、あくまでも聖女です。

魔王も勇者も直接は関わりあう事も関係もありません。


が。


間接的には幾らでもページ数を稼げる程度の人物と話と、関わった多くの愛と涙が…あっても書きませんからね?今の所。

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