02.大人子供な加害的被害者
世界は決して変わらぬものだろうか? それはない。
世界は誰にでも平等なのだろうか? それはない。
世界は何にも想う事がないのだろうか? それはない。
けれど、そうでない。と言う事も決してない。
人の数だけ世界があり、その人がいなくなると言う事は世界が1つ消えると言う事。
人が生まれると言う事は、生まれた人の数だけ世界が生まれたと言う事。
ただ、その世界を比べたら誰もが他人の世界を羨むのは普通と言う事で。
価値観も人それぞれでしかないのだ。
鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番綺麗なお姫様はだあれ?
それは……。
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ミカは、今すごぉく幸せ。
ひらひらした綺麗なドレスは苦しいし重いけど、走っても疲れない、幾ら起きていても眠くならない。
オイシイものを沢山食べても怒られないし、素敵な王子様達がタイクツしていたら幾らでも遊んでくれる。
でもね、ミカにはこの間まで出来なかった事なの。
ミカは昔、生まれてからずっと体が弱くてほとんどベッドの上で一日中すごしてたの。
もっとちっちゃい頃からミカは可愛いかったけど、今の方がよっぽど可愛いんだから!
だって、ミカはお姫様なんだから。
ミカのママは、お姫様だったの。ちっちゃい頃に死んじゃったから、あんまり覚えてはいないんだけど……それに、ミカの事を知らない子みたいに見てたし。
でもね、最初はミカがママのお部屋に遊びに行くと綺麗にしてくれたの。鏡を見せてくれながら、ピンクとか白のリボンを頭につけてくれたり、可愛いお洋服を着せてくれたりしたんだよ。
だけど、それもしわしわの見たこともないおじいちゃんが来て。ママに何かを言ったら直ぐに部屋から連れ出されちゃった。それから、もう会えなくなっちゃったんだあ。
ミカは、ビョウインのトクベツシツって所にいるんだって。
自分のお部屋以外はほとんど出歩けないって言うか、ベッドから降りて動くのもすごく大変だったの。今は全然平気なんだけどね!
ミカのおうちは大きいけれど、実際にミカが行く所はケンサシツくらい。だって、ミカのお部屋はお風呂もおトイレも着いてるもの。お姫様なんだから、そんなシモジモの者が使うようなものは使わないの。
だって、お姫様だもの!
周りの人はね、白い服を着たメシツカイ? とかはミカがまだ小さいから何も知らないと思ってたみたい。
あのしわしわのおじいちゃんがミカのママのパパだって事とか、パパはこのビョウインには来た事がないとか、ママはずうっとビョウインをニュウタイイン? しているとか。結構ミカだって知ってるんだよ?
それとね、こんな事も知ってるんだから。
ミカのお世話をするメシツカイ達は大体一人の事が多いけど、時々変わるのはパパのアイジンだからだって。
もうアイジンとして使えないから、捨てる為にミカのお世話係をしてるんだよ。
ほら、すごいでしょ?
パパって言うのが何かよく判らないけど、お父さんとは違うみたい?
だってね、最近来たメシツカイがそんな事を言ってたもの。
メシツカイは時々変わったけど、最後のメシツカイはミカが覚えてる限り最後まで居たなあ。
ミカのパパって言うのと一度だけナカヨクして、その後はミカのお世話の為に来たんだって。他のメシツカイと違って、ミカでも判るくらい変な格好してた。ビョウインの中に居るメシツカイみたいな格好。
でも、それがいつの間にか少しずつ変わって行ったの。
最初は、ミカに買ってきたものと一緒に買ってくるくらいだったの。
パパって言うのには、そのうち迎えに来るとか言われてたみたいだけど。何となく判ってたのかな……ミカも「誰か迎えに来るなんて知らないな、見たこともないし聞いたこともないよ、今まで一度も」って言ったら、すごく顔が固まってたもの。
それからだったかな……最初は、下手なお化粧の色が濃くなったんだろうなって思ったの。ミカ、よく見えない事もあるけど御鼻はすごいんだよ、だから化粧品が変わったのかなって思ったの。
目はあんまりよくない事も多いけど、ぼんやりと色とかは判るんだ。少しずつだけど、お洋服とか指輪とかイヤリングが派手になったみたい。
多分、こういうのってツカイコミって言うんだよね。ビョウインのメシツカイが言ってた。それで何度か騒いでるの聞こえてたし「これは報告します!」「実佳君の世話は私に一任されてるのよ!」とか言ってたし。
でも、あのメシツカイも覚えてないのかな。ミカはミカなのに。
だからビョウインのメシツカイに言ったの「あのメシツカイは気に入ってるんだから、余計な事はしなくていい」って。だって、ミカにお洋服とか靴とかリボンとか色々買ってきてくれるの。
ミカはお姫様だから自分で買い物なんてしないんだよ、ぜんぶメシツカイがやるんだから! でもお買い物くらいは知ってるんだ、すごいでしょう?
「最近は、子供用の化粧道具なんかもあるんですよ」
って、お化粧だって少しだけやってくれたんだあ。二人でファッションショーやったんだよ。
あとね、本とかゲームを沢山持ってきたの。お菓子もジュースも沢山!
他のメシツカイ達は「体によくないから」ってお菓子もジュースもゲームもあんまり触らせてもくれなかった。
そりゃあね、ミカだっていっぱい遊んだら疲れちゃう事いっぱいあるけど、そのミカのお世話をするのがメシツカイの仕事じゃない! ね、ひどいよね?
きっと、ミカがお姫様だからネタンデル? んだよ、ミカはほとんど靴とかはかないからないけど、きっと元気に靴とか履いて走り回るようなオテンバだったら靴の中に画鋲とか入れられちゃうんだ。きっといっぱい血が出て痛いよね……でも、いつもより痛いのかな?
目が少しよく見える時があるから、そう言う時に本はがんばって読むんだけど……メシツカイが持ってくる本は絵本じゃないのがどんどん増えて。楽しいのは楽しいんだけど、結構大変。
だって、難しくて読めない文字があるんだもの!
そんな時は、メシツカイに読み方を言わせるんだけど。少し変だなあって思うのは、メシツカイはミカに「声を出して読んで欲しい」って言うの。でも、読むと喜ぶからミカは心が広いお姫様としてメシツカイにゴホウビを上げるのだって忘れないのよ!
だけど、起きていられる時間がどんどん少なくなって。
息をしてるだけで苦しくて、辛くて。
泣いてもメシツカイ達に苦しいって言っても、何もしてくれなくて。
最近メシツカイが持ってきた本の中にあったみたいに「死ぬ」のかなあって思って、それくらい苦しくて。
ママに、会いたいなって……思った。
「ねえ、君。ちょっと力を貸してくれないかな?」
本当の所は、別にこんな風に声をかけてきたわけじゃないらしいの。
でも、ミカはずっと苦しくてそんな風に覚えてたの。
すごく、すごぉく幸せになったの。
実佳6歳:ミカ
生まれる前から病院で隔離されて来たのと、放っておけば1週間もたたずに簡単に死んでしまう事が出来る肉体の「少年」
母親が元来病弱で蝶よ花よと育てられたお嬢様だった為に母親のぬくもりも、政略結婚だった為に父親の顔も知らない。しかし子供特有の能力で同じ病院に入院していた母親に会いに行った事がある。
彼の持っている知識の半分以上は父親が捨てた愛人乳母に。3割は看護師達の噂話。残りの2割は本とゲーム。
神様と出会う前、こんな風に生きてきた。毎日苦しんで毎日泣いて毎日一人だけだった。
お金はあったから死なない様に最高の治療を受けていた彼の人生を幸福と言うか不幸と言うかは知らない。
元の世界での実佳がどういう扱いになったのか、健康な体になったミカに興味はない。
ただ、ミカにとって実佳と言う名前の男の子は知らない存在だ。
愛人乳母は何人も入れ替わっており、大体が己の置かれた立場を知ったら逃亡。そう言う意味からすれば、最後の愛人乳母はきちんと実佳用に充てがわれたお金を着服して失踪したのはちゃっかりしている。後の行方は不明だが、天啓の女に出ていたのかも知れない。最初に出てきた時は典型的なお上りさんでいかにも田舎から出て来ました!精一杯背伸びしてます!と言う今時にしては逆に珍しくてコスプレ扱いされそうなセンスの持ち主だったが、己のつまみ食いとしても最悪な扱いだと言う事をしって予算の着服による己磨きに着目した。
実佳の父は入婿の上昇志向の強い男で政略結婚オンリーのために結婚したが女遊びも酷く、一度は結婚するから別れたけれど妻が妊娠したら愛人関係復活。ただし、生まれた子供を女の子を希望していたが男の上に余計な愛人が余計な事を吹き込んだ為に精神を壊して体も心も弱って死亡。妻と子供の事があったので企業の後継者と目されていたが父親は妻と子供を失った事で無一文で放り出され、愛人と海外に逃亡しようとしたら愛人は妻の父親が子供の養育と引換に身柄を抑える事に了承していた。
父親の行方は、要として知られていない。
ある意味、地位の為に好きでもない女と結婚してみれば蝶よ花よと育てられた虚弱な世間知らずの上に、生まれたのは男の子だったのと愛人Aが同時期に子供を出産した事、愛人Bが嫌がらせに妻に複数の愛人達の事を吹き込んだ為に心が壊れてしまい、間接的にそれが原因の1つで妻を亡くし、義父からは追い出され(結婚時の条件の1つが身奇麗にしておく事と子供が出来たら遊びは許すと言われていた)たのだから、ある意味では哀れな部分がゼロではないかもしれない。
自業自得だけどね。