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仮面舞踏会【マスカレード】でつかまえて!  作者: 川崎悠


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十七話 アイリスに相談

「デイジー」

「アイリス」


 私はアイリスに手紙を出して、また中央通り付近のカフェテリアに来て会っていた。

 アイリスはマクラーレン公爵令嬢なのに、こういう呼び出しみたいな行為は気が引ける。

 でも、私には他に相談ができそうな相手がいなかった。

 ダリアお姉様もわかってはくれるけれど……。


「ごめんなさい、こんなふうに呼び出して」

「デイジーに呼んでもらえて嬉しいわ、私」


 アイリスは本心からそう言ってくれている様子だった。

 いつまで続けられる関係かはわからないけれど。

 今は彼女がこうして笑顔でいてくれる。

 だから友人として信じられると思う。


「私は嬉しいけれど、どうしたの?」

「実は……」


 私はこれまでの経緯を話す。

 マスカレードからのことを打ち明けられるのはアイリスだけだ。


「……それは、確かに怖いね」

「……うん。私もお姉様に言われて、お姉様は普段は意地悪な人なのに、納得してしまったの」


 新しい出会いと、交際の予感に浮足立っていた。

 浮かれていたんだと思う。

 でも、冷静に考えたら、まだ私はダミアンのことを好きにもなっていない。

 いい感じの男性だと思ったわけでも……ない。

 ただ、出会えた。それだけの人。

 それも、まだまだこれからだと思ったから、それでいいと思っていたのだ。

 けれど、もし、それが偽りだったら。


「デイジー。私、貴方が心配だわ。だから、次にその人と会う約束は考え直してほしい。私もお父様にお願いして、その一帯で何か問題がないか調べてもらう」

「そ、そこまでするの……?」


 だんだん大事になってきた。


「うん。もちろん、なんでもないのならいいの。でも、私もあの時、デイジーに助けてもらえなかったら、って思うと」

「アイリス」


 アイリスはマスカレードで事件に遭った。

 その恐怖は今だって思い出せるのだろう。


「ねぇ、デイジー。その人って、マスカレードに関係する〝裏側〟とつながっているんじゃない?」

「それって、その」

「私を部屋に連れていこうとした人たちと同じってこと」

「……そんな」

「なんとかできないかな。デイジーにも危険な目に遭ってほしくないけど。それだけじゃなくて、彼らのことをどうにかして、つかまえて(・・・・・)やりたいわ」


 私は、アイリスに不埒なことをしようとしていた男性たちと、そしてルイスのことを思い出す。

 ルイスはマスカレードの裏側を捜査しようとしていた。

 それにルイスは、アイリスを救う協力をしてくれた。

 私も危ない状況だった時に助けてもくれた。

 ルイスなら信用できるんじゃない?

 彼らをどうにかしてくれるか、そのことに協力してくれるかも。


 でも、ダミアンだって、ダリアお姉様に指摘されるまで私は信用していた。

 私はあまり人を見る目がないらしい。

 ルイスを信じて、また裏切られたら?

 いえ、まだダミアンは私を裏切ったわけじゃ……でも。


「デイジー、貴方は今日、私に相談に来てくれたんでしょう?」

「ええ、そうよ、アイリス」

「だったら、そんなふうに一人で悩んでいちゃダメじゃない。私に言ってくれないと!」

「それは……」

「ふふ、あのね、デイジー。もちろん真剣なことだし、デイジーや他の誰かを危険な目に遭わせたくはないよ。でも、私、こうして友達と相談し合うなんてこと、初めてだから。不謹慎だけど少し嬉しいの。だからなんでも聞いてほしい」

「アイリス」


 微笑む彼女につられて、私も笑ってしまう。

 なんだか肩の力が抜けちゃった。


「じゃあ、アイリス。もっと聞いてほしいの。私の……家族についても」

「ええ、聞かせて、デイジー」


 私は以前よりもっと深くウォーゼル男爵家について話した。


 フローラお母様の武勇伝。

 家出の両親のお花畑っぷり。

 ダリアお姉様と、ジャスミンとの確執。

 どうして私がマスカレードに参加することになったのか。

 そこで出会った二人の男性、ルイスとダミアン。

 ダミアンとの初デートの日、尾行してきたお姉様とジャスミン。

 ダミアンに対する不信感と怪しさ。

 ルイスはこういったことを未然に防ぎたくて活動しているんじゃないか。

 今日、ここに至るまでの、私の物語。

 それを余すところなく語り尽くした。


「お父様に頼んだとしても表立って調査したんじゃ、彼らは隠れてしまって何も見つけられないかもしれない。それにハッキリしないままじゃ、デイジーだって安全のために彼とは会えない。わからないまま会わなくなったら将来、後悔しそう」

「……そうね」


 安全のために、ダミアンと会わない。

 それは正解かもしれない。

 でも、この先もずっとそれはついて回る問題になる。

 出会う男性を本当に信用していいのか。本当に安全なのか。


 もちろん、その警戒は普通のことなのかもしれない。でも……。

 私は踏み出す勇気を失くしてしまいそうな気がする。

 だから、ダミアンの問題は私がきちんと向き合って決着を着けたい。

 まるっきり私たちの考え過ぎの可能性だって、まだあるのだ。だからこそ。


 アイリスは綺麗な指を顎の下において、考え込むように口にする。


「本当なら現行犯、デイジーのような女性が誰か〝囮〟になって、その彼とデートしてみて、遠巻きに騎士たちに監視させて尾行する。そうして事件が起きたら、すぐに囮役を救出して、彼をつかまえるのがセオリーの選択かもしれない」

「……うん」

「でも、それだとデイジーの役が危ないわ」

「そうね……」


 けれど、そういう『女性が一人になる瞬間』をつくらないと相手は動かないんじゃないか。

 誰も、私も、危険に晒したくはない。

 でも、それだと彼らをどうにもできない。


「その、ダミアンって人はデイジーが彼を警戒しているって気付いている?」

「どうかしら……。でも、また会う約束をしたから……」

「まだいけると思っているのかしら?」

「……そうかもしれない」


 疑えば疑うほど、そうだと思えてきてしまう。

 なんの証拠もないのに。


「ひどい提案をしてもいい?」

「え? ええ……。何?」

「デイジーの妹、ジャスミンさんに囮になってもらうのは?」

「えっ」


 ジャスミンを、囮に?


「だって、デイジーの待ち合わせの日、その子は動きそうなのよね?」

「……うん。私が行かなくても、勝手に行きそう。いくら止めても聞かないと思って、私もダリアお姉様も困っているの」

「じゃあ、彼女にはデイジーの代わりに行ってもらいましょう」

「ええ……?」

「彼が無害な人なら何も起きないわ。そして、デイジーに真摯な人なら、ジャスミンさんに流れていかないし、勝手に待ち合わせ場所に現れたジャスミンさんからのアプローチを断ると思う」

「そう、かな」

「でも、デイジーとデートしたはずなのに、急に現れたジャスミンさんと当たり前のようにデートをしだすなら、警戒する。もちろん彼から見たら、土壇場でキャンセルすることになるデイジーへの怒りから当てつけのようなデートかもしれないけど」


 それは……けっこう嫌な気持ちになるかもしれない。


「でも、危ない人だったら『デイジーには警戒された』と〝失敗〟を悟るかもしれない。その代わりになんの疑問も抱いていない、失礼だけど『バカな女』枠のジャスミンさんが現れた。都合がいい、こいつを代わりに誘拐なりしてやろう。そう考えるんじゃない?」

「いや、それだとジャスミンが危険な目に遭うから……」

「ええ、だからひどい提案だって言ったの。もちろん、その現場には公爵家から騎士を派遣させておく。彼女を誘拐なんてさせない。路地裏みたいな場所に入り込むなら、すぐに止める」

「何も知らないジャスミンを巻き込むの? それなら私が囮になった方が自然なんじゃ」

「デイジーはもう警戒されてしまっていると思うの。それにデイジーの方も相手を疑っている、警戒しているって、態度や言葉に出ちゃうかも」

「……それは」


 確かに隠せる自信がない。

 これでダミアンが無実なら本当に申し訳なく思う。

 ああ、本当にどうしてこんなことになっちゃったのか。


「それから、ジャスミンさんにはマスカレードの魅力を語っておいて、デイジー」

「マスカレードの?」

「ええ。貴方がジャスミンさんにマスカレードでのダミアンさんとの出会いを語れば、彼女はきっとダミアンさんにマスカレードに連れていってもらいたいと願うと思う。デイジーの思い出を踏みにじるためというか、上に立つため、マウントを取るために」

「…………」


 簡単に想像できるわね。


「でも、それをしてどうなるの?」

「ジャスミンさんの安全確保をしないといけないから、証拠を掴み切る前に妨害する必要がある。でも、そうするとダミアンさんは警戒してしまって、証拠が見つからないまま、どこかへ消えてしまうかもしれない。それだと彼を逃がしてしまう。そうさせないために、ジャスミンさんとマスカレードに行く約束をさせるの。デイジーは無理だったけど、ジャスミンさんという良質な獲物がまだ狙えるかもしれない。そう考えた彼は、またジャスミンさんを狙ってマスカレードに出てくるわ。……私たちは、その次の機会までに、どうにか彼の罪の証拠を掴んでおくの」


 私は言葉を失ってしまう。

 やっぱりアイリスは公爵令嬢というか、いろいろなことを考えているみたい。


「ダミアンさんを警戒してしまっているデイジーが囮になるより、無警戒で、むしろ彼との交流に積極的なジャスミンさんの方が、相手は警戒を緩めると思うの。まだまだいける、こいつはバカだ、そう思えば彼の行動は大胆になる。ジャスミンさんは囮として適役よ。それに、無警戒で〝次の約束〟なんてしてしまうジャスミンさんを、その場でどうにかしてやろうって気は薄くなると思う。一応、また確認してみるけど、近くに殺人事件が起きたようなことは聞かないから……。誘拐だけなら、その、すぐに救出できると思うんだけど」

「…………」

「理想を言えば、デートの日はある程度の足取りだけ掴んで解散。ジャスミンさんとダミアンさんにはマスカレードに出てもらい、それまでに証拠をがっつり押さえておく。そうして、ダミアンさんをマスカレード(・・・・・)でつかまえて(・・・・・・)やるの。そうしたらアプローチ相手が犯罪者だって明かされたジャスミンさんへのお仕置きにもなるかな、って」

「アイリス……」


 いろいろと考えつき過ぎだ。

 でも、私はアイリスの提案を──。


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