第1話:鳴沢氷穴
2025.8.10 午前/富士・鳴沢氷穴駐車場
「……これ、どういう意味?」
「まんまにしても…意味分からないっす」
真理と桐生が覗き込んできるのはSOPHIAのスクリーン。そこには淡々と、SOPHIAからのログが浮かんでいた。
[MODULE: RESON]
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[MODULE: LEXICON]
[TRANSLATION: 1% UNKNOWN]
[MESSAGE: 地の底に祈りなさい。気高き勇者のために]
「……気高き勇者が門を開いてくれた、って事?」
「全然心当たりがないっすね。またAEONに夢を見せられてるとか?」
「……ちょっとつねってみましょうか。えいっ!」
「イテっ!何で俺の腕なんすか?」
「ごめんごめん。……そんなに痛かった?」
「つねられて、と言うよりも傷が痛むみたいな……何だこれ?」
「どしたの?」
真理がつねったところを見ると、ナイフで引っ掻いたような傷に血が滲んでいる。
「……あれ?いつの間にこんな傷ついたんだろ?」
「何かの文字みたいにも見えるわね。……」
「怖っ!樹海の霊が知らぬ間に?」
「出るって言うしね……」
「いやマジ勘弁してくださいよ!神様がいるんだから、霊がいたって不思議じゃないっすよ?」
「まあ、それはおいおい考えるとして……せっかく来たんだから、見てかない?」
「他人事だと思って……中の氷で冷やしたら良くなる、とかないすかね?」
「それは悪霊さんに聞いてみて」
「マジかよ……」
二人は車を降り、氷穴の入り口に向かった。夏休みということもあり、家族連れで来ている観光客も多い。
「順番待ちかあ。こうやって並んでると、遊園地のアトラクションみたいね」
「階段を降り始めてから涼しくなったんで、それは救いっす」
列はゆっくり進み、やがて入り口から氷穴に入る。
「ここ、頭気をつけて……」
慎重に歩を進め、しゃがむようにしながら先へ進む。やがて視界が開け、子供達がキャーキャー言いながら覗き込んでいる穴が見えてきた。
「“地獄の竪穴”っすね。落ちたら帰って来れない、って言う」
「富士の風穴には解明されていない竪穴や横穴が無数にある、って言うからね」
底の見えない竪穴を覗き込んだ時、不意に二人の心に郷愁のような念が湧き起こった。
「……何でだろ、初めて来る場所なのにどこか懐かしいような……」
「先生もっすか?俺も、何か大事な事を思い出しそうな感じがするんすけど……」
暗闇の奥を見つめながら、二人はしばらくそこを動く事が出来なかった。




