第12話:第5章終幕
2025.7.27 11:00/竜宮庵・フロント
「お世話になりましたー!」
竜宮庵のフロントに恵の元気な声が響く。顔見知りになったスタッフが、営業用とは違う笑顔で応えている。
「いかはるんやね〜」
京極も見送りのため、真理たちのところへ近づいてきた。
「はい、この度はお世話になりました。それに、素敵なお部屋をご用意いただいて、本当に満喫できました」
「そら良うおました。お気に召したようで、何よりどす〜」
「お前、そのゆっくり口調やめたら?」
「これも含めての、竜宮庵どすさかい〜」
京極が扇子で口元を隠しながらコロコロと笑う。桐生もそうか、と笑みを返す。
「そんでな、御堂はん」
「はい?」
「もし、また京都に来ることがありましたら、是非竜宮庵をご贔屓に〜。御堂はんとお連れさんには、いつでも最高のおもてなしをさせていただきます〜」
「それって、毎回あの部屋に泊まれるってこと?」
恵が信じられない、といった表情で聞く。
「もちろんどす〜。大きな声では言えへんけど、お代は勉強させていただきます〜」
「やったー!」
「今度は、月詠様が見せてくださる“夢”を楽しみにしていますね」
真理の言葉に、京極はどことなく嬉しそうな笑みを浮かべる。
「じゃ、行きましょうか!」
夏の日差しは鮮烈に、三人の影を地に映していた。竜宮庵は長い夢から覚めたように、日差しを受けながら美しく佇んでいる。見送る京極の袖が風に揺れ、それはまるで水面を走るさざ波のようだった。




