成婚
春の鐘が、王都に鳴り響いていた。
王宮の大階段には白と金の布が幾重にも垂れ、花弁が風に舞い、空は祝福するかのように澄み渡っている。
今日は――
王太子ジョージと、その妃となるシャルロットの正式な婚儀の日。
城下には人が溢れ、
「王太子・王太子妃両殿下万歳!」
「お幸せに!」
という声が、途切れることなく続いていた。
控えの間で、シャルロットは静かに深呼吸をした。
純白のドレスは軽く、胸元には王家の宝石が柔らかな光を宿している。
不思議だった。
緊張よりも、胸を満たしているのは安心感だった。
――必ず、迎えに来る。
そう分かっているから。
「シャルロット」
扉が開き、
そこに立っていたのは、正装の王太子。
銀髪はきちんと整えられ、
エメラルドの瞳は、誰よりも真剣に彼女だけを見つめている。
「綺麗だ。」
それだけで、
胸の奥がじんわりと温かくなる。
「殿下も、とても。」
言葉を選ぶより早く、
王太子は彼女の前に立ち、そっと手を取った。
「緊張しているか?」
「いいえ。」
シャルロットは小さく首を振る。
「不思議なくらい、落ち着いておりますわ。」
「それは私が、君を一生離さないからだ。」
逃げ道を断つ言い方なのに、そこに恐ろしさは微塵もない。
ただ、守ると決めた男の確信があるのみ。
荘厳な音楽が響く由緒ある大聖堂
シャルロットはバージンロードを歩く。
視線の先には、誰よりも誇らしげに立つ王太子。
誓いの言葉
そして――
そっと落とされる口づけ。
確かめ合うような、深く静かな愛だった。
祝宴は、王国史に残るほど盛大なものとなった。
広場では音楽と踊りが絶えず、食卓にはごちそうが並び、人々は笑い、語り、未来を祝った。
王太子妃となったシャルロットは、
王太子に並び穏やかに微笑んでいた。
「幸せですわ。」
小さくそう言うと、
ジョージは即座に彼女の腰に手を回す。
「当然だ。この国すべてが、君を祝っている。そして私は、この国以上に君を祝福している。」
囁きは甘く、逃げ場はない。
シャルロットは、彼を見上げて微笑んだ。
「ではそのお気持ち、大切に受け取りますわ。」
ジョージの瞳が、満足げに細められる。
「一生。」
その夜、
王都には無数の灯りがともり、祝福の花火が空を染めた。
人々は語り合う。
――王太子は、誰よりも深く妃を愛している。
――王太子妃は、誰よりも幸せそうだ。
真実だった。
スコーンから始まった縁は、いつしか王国を包むほど大きな愛へと変わった。
こうして――
ひとりの令嬢は、
何よりも甘く、重く、揺るぎない溺愛を手に入れ、
王国は、その恋を祝福した。
―完
夜中にスコーンを無性に食べたくなり、スコーンの画像を眺めながら考えたのが、この物語の始まりでした。
最後までお付き合い下さり心よりお礼申し上げます。




