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スコーンが食べたくて婚約したら、王太子に溺愛された  作者: 水瀬みずか


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6/6

謁見の間

 重々しい謁見の間に、王太子ジョージの声が低く響いた。

「菓子職人アラン・ドゥヴァル。この男は――我が婚約者と破廉恥な関係にあった。」


その言葉に、シャルロットは息を呑んだ。

「殿下、何を仰せに――!?」


「証拠はある。アーサー!」


王太子の命に応じ、奥の控えから諜報員アーサーが進み出た。

誇らしげに胸を張り、手に書簡を携えている。

「はっ。わたくしは殿下の命に従い、密かに二人のやり取りを記録しておりました。――その一節をご報告いたします。」


シャルロットは胸騒ぎを覚えた。

(まさか……!)


アーサーは芝居がかった仕草で、羊皮紙を広げた。

「『アランの…今日はいつもより大きいのね。一度ではお口に入り切りませんわ』。」


「な……っ!」

シャルロットの顔は真っ赤になり、次の瞬間、呆然と目を瞬いた。


アーサーは得意げに続ける。

「さらに、シャルロット様はため息まじりに、『やはり、大きい方がいいわね。』とも。殿下、これを不埒と呼ばずして何と申しましょう!」


王太子の眉はぴくりと動き、怒りとも嫉妬ともつかぬ光が宿る。

「……やはりそうか。」


「違いますわ!!!」

シャルロットは堪らず叫んだ。

その必死の声に、アランまで驚いて目を丸くする。


「殿下、これは……!これはただのスコーンのことです!アランが焼いてくださった菓子が、たまたま大きかっただけですわ!」


謁見の間は一瞬、静まり返った。

「どういう事だ!?」

ジョージが険しい表情のまま問い返す。


「本当に……お菓子の話でしてよ!」

シャルロットは真っ直ぐに王太子を見据えた。

「わたくしは殿下を裏切ったことなど一度もございません。殿下の婚約者として、この身も心も殿下に捧げております。どうか、どうか信じてくださいませ。」


王太子は言葉を失い、緑の瞳を見開いた。

アーサーは狼狽し、持っていた羊皮紙を取り落とす。

「そ、そんな……!わたくしは……。」


重苦しい沈黙の中、シャルロットの凛とした声だけが謁見の間に響いた。

「殿下、どうかご判断を。」


王太子はゆっくりと高座から立ち上がり、アランとシャルロットを見比べる。

その瞳の奥には、まだ嫉妬の炎が揺らめいていた――。


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