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第3話 王子の謎めいた視線

「ねえ、美緒。お前、また変な夢見てるでしょ?」


 大学の図書館、窓際の特等席で『星冠の恋詩』を読んでいた私に、隣から声をかけてきたのは幼なじみの健太だった。彼の人懐っこい笑顔は、今思えばケイン・グラハムそっくりで…


「変じゃないもん」私は本を胸に抱きしめながら反論する。「レンって、絶対現実にはいないよね。こんなに完璧で冷たくて、でも時々見せる優しさが…もう、ずるいよね」


 健太の隣にいた黒髪の少年が、ちらりと私たちの方を見た。蓮だった。健太の中学時代からの友人で、いつも静かで、本ばかり読んでいて。青い瞳が印象的な、ちょっと謎めいた雰囲気の男の子。


「で、美緒はそんな男と結婚したいわけ?」健太が苦笑いを浮かべる。


「結婚なんて…そういうんじゃなくて」私は慌てて首を振った。「ただ、こんな人が本当にいたら、きっと忘れられない恋になるんだろうなって」


 その時、蓮が小さくつぶやいた。


「忘れられない恋、か」


 彼の声は低くて、少し寂しそうで。なぜか胸がきゅっと締め付けられるような感覚がした。


「蓮くんは、どう思う?」私は思わず彼に話しかけていた。「こういう恋愛小説って、現実的じゃないって思う?」


 蓮は私をじっと見つめた。その青い瞳の奥に、何か深い感情が宿っているような気がして。


「現実にも、忘れられない人はいると思う」


 彼のその言葉が、なぜか心の奥深くに響いた。まるで、私に向けて言ってくれたような…


 でも今は、その「現実にいるわけがない」王子が、私の目の前にいる。


 そして蓮も、レンとして、この世界にいる。


 ◇


「セシリア様、今夜は特別にお美しく見えますわ」


 メイドのマリアが、エメラルドグリーンのドレスの最後のボタンを留めながら言った。鏡に映る金髪の美女は確かに美しいけれど、まだ自分の顔だという実感がない。美緒だった頃の、平凡で地味な容姿とは正反対。


 こんな美しい顔をしていても、心の奥では相変わらず自信のない女子大生のままだ。


「ありがとう、マリア。でも今夜は…少し緊張するわ」


「セシリア様らしくもない」マリアが微笑む。「いつものお強いセシリア様はいずこに?」


 強いセシリア様。原作の中の傲慢で高飛車な悪役令嬢。でも私は、そんな風にはなれない。なりたくない。


「人は変わるものよ、マリア」


「それはそうですが…」マリアが首を傾げかけた時、ノックの音が響いた。


「失礼いたします」


 入ってきたのは、年配の女性使用人だった。


「セシリア様、書庫の整理をしておりましたところ、こちらのお手紙を見つけました」


 差し出されたのは、古い羊皮紙の封筒。蝋で封がされているけれど、時間が経ってひび割れている。セシリア・ヴァレンタイン様、と書かれた文字も、インクが薄れて読みにくい。


「いつ頃のものか分かりますか?」


「申し訳ございません。書庫の奥の古い本の間に挟まっておりまして…」


 私は封を開けた。中から出てきたのは、小さな星形のしおりと、一枚の短い手紙。


『またいつか、星の下で会えることを願って―R』


 たったそれだけ。でも、その「R」の文字を見た瞬間、胸の奥がぎゅうっと締め付けられた。まるで、大切な何かを思い出しそうで、でも思い出せない、そんなもどかしさ。


 星のしおり。どこかで見たような、懐かしいような…


「セシリア様?お顔の色が…」マリアが心配そうに声をかける。


「あ、ごめんなさい。少しぼんやりしていたわ」


 私は慌ててしおりをドレスの胸元に隠した。なぜか、とても大切にしなければいけないような気がして。肌に触れると、ほんのりと温かい。まるで、誰かの体温が残っているみたいに。


 胸の奥で、小さな声が囁く。


『これは大切なもの。絶対に無くしちゃダメ』


 でも、それが誰の声なのか、分からない。


 ◇


 王宮の大広間は、まさに「絢爛豪華」という言葉そのものだった。天井から吊り下げられた巨大なシャンデリアが、まるで星座のように煌めいている。貴族たちの身に着けた宝石が光を反射して、会場全体がきらきらと輝いて見える。


 ドレスのシルクが風にそよぐ音、グラスが触れ合う音、上品な笑い声。そして、様々な香水が混じり合った甘い香り。五感全てが刺激されて、少し酔いそうになる。


 私は息を深く吸って、心を落ち着けようとした。原作では、この晩餐会でセシリアが小百合に意地悪をして、レンの怒りを買う重要な場面。でも私は小百合と友達になった。きっと違う展開になるはず。


 でも、もし原作通りにならなかったら?もし私の行動が、もっと悪い結果を招いたら?


 不安が胸を締め付ける。私は本当に、運命を変えることができているのだろうか?


「セシリア様!」


 振り返ると、薄いピンクのドレスを着た小百合が駆け寄ってきた。栗色の髪にティアラを乗せた彼女は、まさに絵本の中のお姫様のよう。その美しさは、男性たちの視線を自然と引きつけている。


 でも小百合本人は、そんな注目にも気づかずに、私だけを見つめて微笑んでいる。その純粋さが、私の心を温かくしてくれる。


「小百合、素敵よ。まるで春の女神様みたい」


「え、えっと、ありがとうございます!」小百合が慌てて手をぱたぱたと振る。「でも、セシリア様の方がずっと…あ、その、今日もとってもきれいで!どんなドレスを着ていても、セシリア様は本当にすてきです!」


 彼女の素直な褒め言葉に、私の頬が少し熱くなる。美緒だった頃、こんな風に褒められることなんてほとんどなかった。地味で目立たない、平凡な女子大生だったから。


 でも小百合は、私のことを本当にきれいだと思ってくれているようだ。その優しさが、とても嬉しい。


「一緒にいましょう?今夜は何が起こるか分からないから」


 私がそう言ったのは、なんとなく不安を感じていたから。胸の奥にある星のしおりが、まるで警告するように、ほんのり温かくなっているような気がした。


「はい!」小百合が嬉しそうに頷く。「あ、でも、私なんかがセシリア様の隣にいても大丈夫でしょうか…他の貴族の方々に、失礼だと思われませんか?」


「何を言っているの」私は彼女の手を取る。「あなたは私の大切な友達よ。誰に何を言われても、私は気にしない」


 小百合の瞳がぱっと輝く。その笑顔を見ていると、私も自然と笑顔になれる。


 この子を守りたい。この純粋で優しい心を、誰にも傷つけさせたくない。


 そう思った瞬間、会場に厳かなファンファーレが響いた。


 王族の入場。


 私の心臓が急激に鼓動を早める。手のひらに汗がにじんでくる。いよいよ、レンの登場だ。


 大扉が開き、国王と王妃が優雅に入場する。王妃の深紅のドレスが、まるで炎のように美しく揺れる。


 そして、その後ろから現れたのは—


 黒髪に青い瞳。白と金の礼装に身を包んだ、完璧すぎる美貌の持ち主。


 レオナルド王子。蓮。


 彼を見た瞬間、私の胸の奥で何かが弾けた。懐かしさ、切なさ、そして…愛しさ?


 でも今夜の彼は、いつもと何かが違った。普段の氷のような冷たさではなく、どこか焦燥感を漂わせている。まるで、何かを探しているような、そんな表情。


 そして、彼の視線が会場を見回した瞬間、私と目が合った。


 レンの青い瞳が、一瞬大きく見開かれる。まるで電気が走ったかのように、彼の全身が震えるのが見えた。


 その瞬間、私の胸の奥でも何かが響く。星のしおりが、まるで脈動するように温かくなる。


「あ…」小百合も気づいたようで、小さく声を上げる。「王子様が、セシリア様を…すごく、見つめてらっしゃる…」


 そう、彼は私を見ている。でも、その視線には原作の「冷たい拒絶」ではなく、「困惑」と「懐かしさ」、そして深い「愛しさ」が混じっていた。


 まるで、長い間探し続けていた人を、ようやく見つけたような表情。


 レンは王への挨拶もそこそこに、足早に私たちの方へ向かってきた。周囲の貴族たちが驚いたようにざわめき、慌てて道を開ける。


「セシリア」


 私の名前を呼ぶ彼の声は、いつもより低く、感情に震えていた。まるで、その名前を呼ぶことが、彼にとってとても大切な行為であるかのように。


「レン…王子」私は慌てて膝を曲げる。「お疲れ様でございます」


 近くで見る彼は、記憶の中の蓮よりもずっと大人びて、そして美しかった。でも、あの青い瞳だけは変わらない。深くて、優しくて、少し寂しげで。


「そのしおり…」


 レンの視線が、私の胸元に向けられる。星のしおりが、ドレスから少し見えてしまっていた。


「君が持っているのか…」レンの声に、明らかな動揺が混じる。まるで、とても大切なものを見つけたような、そんな震え方。


「これを…ご存知なのですか?」


「ああ」レンは私の手を取った。その手は大きくて、温かくて、そして少し震えていた。「君に話したいことがある。たくさん」


 会場がどよめく。第一王子が、セシリア・ヴァレンタインの手を取った。貴族たちの視線が、好奇心と驚きでいっぱいになっているのが分かる。


 でも私は、そんなことはどうでもよかった。レンの手の温かさが、私の心を満たしていく。


「踊らないか?」


 彼の声は、お願いというより、切実な訴えのように聞こえた。


 これは原作にない展開だ。原作では、レンはセシリアを徹底的に避けていたはず。でも今の彼は、まるで私と離れることを恐れているような表情をしている。


 私は迷わず頷いた。断る理由なんて、どこにもない。


「小百合、ごめんなさい」


「い、いえ!」小百合は慌てたように手を振る。「王子様とゆっくりお話ししてくださいね。私は大丈夫ですから!」


 彼女の優しさが、胸にじんわりと染みる。


 音楽が始まり、私たちは舞踏会場の中央へ。周囲の視線が刺さるように集まってくるけれど、もう気にならない。


「緊張しているのか?」


 レンの手が私の腰に回る。ダンスの基本ポーズだけれど、彼の手の温かさが服越しに伝わってきて、心臓が跳ね上がる。


「はい…少し」


「君らしくない」レンが小さく、でもとても優しく笑う。「いつものセリリアなら、『当然よ、私に緊張するなんて愚かな質問ね』とでも言うところだ」


 その通りだ。それは確実に、原作のセシリアが言いそうなセリフ。でも、なぜレンがそこまでセシリアの性格を把握している?


「私は…変わったのかもしれません」


「そうだな」レンは私をくるりと回転させる。そのリードは完璧で、まるで何度も一緒に踊ったことがあるかのよう。「君は確実に変わった。でも…」


 彼の声が私の耳元で囁かれる。


「そのしおりを見た時、全てを思い出した」


 全てを思い出した?


 私の心臓が激しく鼓動する。


「レン王子…それはどういう…」


「美緒」


 私の動きが完全に止まった。


 美緒。前世の、私の本当の名前。この世界で、その名前を知っているのは私だけのはず。


「なぜ…その名前を…」


「君は覚えていないだろうな」レンの表情が、深い悲しみに歪む。「でも、僕は覚えている。全部。図書館で君が『星冠の恋詩』を読んでいた時のことも。君が僕に『こんな人が現実にいたら』と言ったことも」


 私の頭の中が真っ白になる。


 そうだ。確かに、前世で私はそう言った。でも、なぜレンが?


「君は僕を覚えていないのか?」レンの青い瞳に、深い悲しみと寂しさが宿る。「健太の友達だった…蓮だった僕を」


 蓮。


 その名前を聞いた瞬間、封印されていた記憶の扉が開いた。


 図書館。健太の隣にいた、黒髪の少年。いつも本を読んでいて、あまり話さなくて。でも時々、私と目が合うと、少し微笑んでくれて。


 青い瞳が印象的な、ちょっと謎めいた雰囲気の男の子。


 私が恋愛小説について語る時、いつも静かに聞いていてくれた人。


「まさか…蓮?」


「やっと思い出してくれたか」レンの顔に、安堵と喜びの表情が浮かぶ。「僕も転生したんだ、美緒。君と同じように」


 転生。蓮も、私と同じように?


「でも、なぜ…どうして…」


「僕も分からない」レンは私を見つめる。その瞳の奥に、深い愛情が宿っているのが見える。「気がついたら、この世界にいた。そして、君を探し続けていた。ずっと、ずっと」


 探し続けていた。


 その言葉が、私の胸の奥深くに響く。


「君に渡したかったものがあるんだ」レンは胸元から何かを取り出す。「でも、間に合わなかった」


 小さな星のペンダント。銀色のチェーンに吊り下げられた、美しい星の飾り。


「これは…」


「前世で、君に渡そうと思っていたもの」レンの声が震える。「君の誕生日に渡すつもりだった。でも、その前に君は…」


 事故。私は、トラックに轢かれて死んだ。蓮に何も言えないまま。


「蓮…」


 涙が頬を伝って落ちる。前世では伝えられなかった想い。受け取れなかったプレゼント。


「泣かないで」レンが優しく私の涙を拭う。「今度こそ、君を守る。この世界でも、必ず」


 音楽が終わり、私たちは離れた。でも、レンの視線は私を見つめ続けている。


「セシリア」彼は私の名前を呼ぶ。「いや、美緒。君ともっと話がしたい」


「私も…話したいことがたくさんあります」


 そう、聞きたいことが山ほどある。なぜ私たちは転生したのか。なぜ同じ世界に生まれたのか。そして、彼の想いは…


 その時、美しい拍手の音が響いた。


「まあ、素晴らしいダンスでしたこと」


 振り返ると、深い青のドレスを着た美しい女性が立っていた。黒髪を優雅にまとめ、完璧な笑顔を浮かべている。


 アスカ夫人—アデリン夫人。


 私の最大の敵。


「セシリア様、王子様」アスカ夫人は優雅に微笑む。でも、その笑顔の奥に冷たい光が見える。「お美しいダンスでございました。まるで、お二人の間に特別な絆があるかのような…」


 特別な絆。確かに、それはある。でも、彼女にそんなことを言われたくない。


「ですが…」アスカ夫人の視線が、私の胸元の星のしおりに向けられる。


「そのアクセサリー、見覚えがございますわ」


 見覚え?


 私の血が凍る。もしかして、アスカ夫人は何かを知っているの?


「随分と…古いもののようですが」アスカ夫人の笑顔が、微かに冷たくなる。「どこでお求めになったのかしら?まさか、どこかの古い屋敷で盗んできたとか…」


 その言葉に、私の怒りが燃え上がる。


「それは…」


「母の形見です」突然、レンが口を開いた。「僕がセシリアにお渡ししたものです」


 嘘だ。でも、なぜレンが私を庇う?


「あら、そうでしたか」アスカ夫人の目が細くなる。「王子様が直接…それはそれは、光栄なことですわね。ですが、王子様がそのような大切なものを、軽々しくお渡しになられるとは…」


 彼女の言葉には、明らかに悪意が込められている。


 その時、会場の端で小さな悲鳴が上がった。


「きゃあ!」


 振り返ると、小百合が青い顔をして、ワイングラスを落としていた。


「小百合!」私は慌てて駆け寄る。


「セシリア様…私、急に気分が…」小百合が私の腕にもたれかかる。


「どうしたの?大丈夫?」


「ワインを飲んだら、急に…頭が痛くて、吐き気が…」


 ワイン?


 私は小百合の持っていたグラスを見た。底に、わずかに白い粉のようなものが残っている。


 毒?


「これ…」


「すぐに医師を!」レンが命令を下す。


 でも、アスカ夫人の表情を見た時、私は確信した。


 これは偶然ではない。


「まあ、大変」アスカ夫人が心配そうな顔を作る。「ソフィア様、大丈夫でしょうか?きっと、お疲れになられたのでしょうね」


 でも、その目の奥に、わずかな満足感が光っているのを私は見逃さなかった。


 原作では、小百合が毒を盛られる場面はない。ということは、これは私のせいで起きた事件だ。


 私が小百合と友達になったから、アスカ夫人が彼女を標的にした。


 罪悪感が胸を締め付ける。


「小百合…ごめんなさい、私のせいで…」


「セシリア様…大丈夫、です…」小百合は必死に笑おうとするけれど、顔色はどんどん青くなっていく。「ちょっと、気分が悪いだけ…心配しないで…」


 こんな時でも、私を気遣ってくれる小百合。その優しさが、私の心をさらに苦しくする。


「医師が到着しました」


 王宮医師が駆けつけ、小百合を診察する。


「軽い食中毒のようですね。すぐに薬を処方いたします」


 食中毒。医師は毒だとは気づいていない。でも、私には分かる。これはアスカ夫人の仕業だ。


「ソフィア様を部屋までお運びしましょう」


 小百合が運ばれていくのを見送りながら、私は拳を握りしめた。


 許せない。私のせいで小百合が傷ついた。


「セシリア」レンが私の肩に手を置く。「君のせいではない」


「でも…私が小百合と友達になったから、彼女が狙われた」


「僕たちが話をしている間に起きた。狙われたのは君だったかもしれない」


 レンの言葉で、私はハッとした。そうか、最初の狙いは私だったのかもしれない。でも小百合が間違って飲んでしまった…


「許せない」私は振り返る。「アスカ夫人」


 でも、もう彼女の姿はなかった。


「逃げたのね…」


「セシリア」レンが私の手を握る。「僕たちには敵がいる。気をつけなければならない」


 敵。アスカ夫人。そして、きっと他にも。


「レン…蓮」私は彼を見上げる。「教えて。あなたは、この世界で何を知っているの?」


「全てを話そう」レンは頷く。「でも、今夜は無理だ。明日、庭園で会わないか?人目のないところで」


 明日。


「分かりました」


 レンは私の手に、小さな星のペンダントを握らせた。それは温かくて、まるで彼の心の温度を宿しているような感触だった。


「これは星のペンダント。前世で、君に渡そうと思っていたもの」


 星のペンダント。星のしおり。


 全てが繋がっていく。


「でも、渡せないまま…僕たちは別れてしまった」


 別れてしまった。そう、私は事故で死んだ。蓮に何も言えないまま。彼が私のことをどう思っているのかも知らないまま。


「蓮…私…」


「分かっている」レンは優しく微笑む。「君の気持ちも、僕の気持ちも。今度こそ、全てを伝えよう」


 その言葉が、私の胸の奥深くに響いた。


 晩餐会は終わり、貴族たちは三々五々帰っていく。でも、私の心は嵐のように荒れていた。


 蓮も転生していた。私を探していた。そして、私への想いを抱き続けていた。


 小百合が毒を盛られた。私を守ろうとして、彼女が傷ついた。


 アスカ夫人の策略が始まった。これから、もっと危険なことが起こるかもしれない。


 そして、星のペンダント。前世で受け取れなかった、彼からの愛の証。


 私は星のペンダントを握りしめながら、夜空を見上げた。星が美しく瞬いている。


 運命を変える。小百合を守る。


 そして、蓮との愛を成就させる。


 私の物語は、確実に原作から逸れ始めている。


 でも、それでいい。いや、それがいい。


 私は、私自身の結末を書くのだから。


 今度こそ、幸せな結末を。

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