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あやかしばかし  作者: 東上春之
第一章 出会いと覚醒
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第三十二話 出会いと覚醒 三十二

更新です。Twitterで「東上春之」と検索していただければ出てくるので是非検索してみてください。「星降ル夜ノアリアドネ」という作品も連載しているので是非。

 そうなんでもないように朱雀は言い放った。その言葉に羽月は目を見開いた。要は一条家から倉宮家に鞍替えすることも可能であると朱雀は提案したのだ。

 羽月がこのまま一条家の旗下に居続けるというのならいずれ倉宮家とは矛を合わせることになる可能性がある。もちろん、可能性の話だ。起こり得る可能性の話だ。


「それは」

「えぇ、強制ではありませんよ。変わらないという選択をしてもこちら側は問題ありません。ですが、私は晴人様の従者ですから、この先は晴人様のお好きなようにしてください」


 朱雀は言外にこの選択は羽月ではなく、晴人にこそ背負うべき責任があるとそう言っている。羽月に対して提案した選択肢はそのまま晴人に対しての提示であった。


「お前。まぁ、確かに、そうか」


 晴人は一つため息をつき、両手を腰に当てた。朱雀の言わんとすることが読み取れない晴人ではない。一条家と本格的にこちらとことを構えた場合、間違いなく羽月は敵対陣営になる。

 客観的に見て晴人とある程度の関係性がある羽月は一条家に何かしらの駒として使われる可能性もある。そんなふざけたことを許容できるはずがない。

 そこまで見えている。見えているのだ。

 晴人はまたため息を吐いて羽月に向き直る。


「朱雀。もしかしてもう許可は取ってきたの?」

「はい、先程。倉宮家の方に確認を取り、承諾していただきました」

(ここまで折り込み済みなのか。凄いな朱雀は)

「羽月」

「うん」

「さっきは突き放すような言い方をしてごめん。その、これ以上羽月を巻き込みたくないって思ってああいう風に言ったんだけど、強い言い方をして羽月を傷つけた。ごめんなさい」

「そうだよ。私は悲しかったんだよ。晴人君は私を信じてくれてないんだなって、そう思っちゃうくらいには悲しかった。晴人君は巻き込みたくないって言ってくれたけど、私は巻き込んでほしかった。引かれた線の一歩奥に、入っていいって言ってほしかった」


 羽月もそれは無理な願いであることは分かっている。晴人が人間として優しく、そんな晴人が巻き込みたくないと言うのは羽月だって分かっていた。陰陽の世界の外から来た晴人は正しく世の価値観の元で生きてきた人間だ。

 晴人がどれだけ大きなものを抱えているのか羽月には測りかねることだが、あの時の晴人の顔はそういう何かを抱えている人の顔だった。


「晴人君が秘密を話してくれた時、私はね、嬉しかったんだよ。だから私も私の秘密を明かしたの。それで対等になれると思ったから」


 陰陽師として自身と自家の秘密を守ることは非常に重要な使命であり、陰陽家に生まれた者が背負う責任でもある。

 倉宮の秘密は他の陰陽家とは比にならない量と質がある。

 だから、晴人が自身の秘密を話してくれたということはそれを話してもよいと判断できるくらいに信頼してくれていると羽月は思っていた。

 だが、伸ばした手で掴もうとした宝石は閉じた手の隙間から雲のように抜けていった。大それた願いはその代償に羽月の心に剣を突き立てた。


「今日の襲撃も教室に着く前から嫌な予感はしてた。なんだか他の人の様子がいつもと違くて、教室に入ったらみんながおかしくなってて。妖が現れて晴人君が妖と一緒に窓から飛び降りて。守ってくれたんだって思うのと同時に塾に残って異常を解決してってメッセージだとも思って。任せてくれたことが、頼ってくれたことが嬉しかった」


 異変の原因を突き止める役割を任され、晴人に信頼されていると思った。初めてできた心を許せる人に頼ってもらえて純粋に嬉しかった。

 期待に応えたくてできることを精一杯こなして塾内に仕掛けられた術式を解いた。痛々しい傷を負って帰ってきた晴人の姿を見て胸が苦しくなった。喜んではいけないのに、心配しなければいけないのに、ボロボロの晴人を見て、自分のために戦ってくれた晴人を見て、羽月の心は二分する感情に引き裂かれそうだった。


「怪我した晴人君と一緒に来た人を視た時、身体が晴人君の呪力でいっぱいだったから君の式神だって分かってた。でも君はそれを隠したいかもしれないから誰って聞いたの。そしたら晴人君は私のことを突き放したんだよ。悲しかったな」

「それは。ほんとにごめん」

「でもね、晴人君には話しちゃいけないことが多いのは分かるから。それは仕方ないことだってちゃんと分かってる。けど、晴人君の中では私も話せない側なんだって、そう判断されたことが一番辛くて、苦しかった」


 晴人は羽月のことを強い人だと思っていた。それは陰陽師としてではない。まだ晴人は他の陰陽師の実力を測れるほど呪力感知を訓練していない。

 彼女が送ってきた人生を聞いて人間として強いのだと晴人は思っていた。彼女の強さはしたたかさが支えていると思っていた。

キリキリ舞いあなたのために

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