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あやかしばかし  作者: 東上春之
第一章 出会いと覚醒
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第三十一話 出会いと覚醒 三十一

更新です。Twitterで「東上春之」と検索していただければ出てくるので是非検索してみてください。「星降ル夜ノアリアドネ」という作品も連載しているので是非。

 その炎は晴人と羽月を焼くことはなく、羽月と朱雀の呪力を吸収し、晴人の中の黒いケダモノを焼いていく。


「無茶をするなとは言えませんが、少しくらい真波羽月を頼ってしまってもよいと思いますよ」


 朱雀は常々考えていた。自傷的な晴人の行動に彼に臆することなく待ったと言える人間が彼の周りに現れてほしいと。

 晴人を思って、頑なな彼の意思に蹴りを入れることのできる誰かがいてくれればと朱雀は考えていた。

 そんな時、羽月の言動を晴人を通して見ていた朱雀は真波羽月という人間に興味を持った。彼女の過去、家の話、瞳の力、どれも興味を引かれなかった。陰陽の世界にいる者で彼女よりも酷い境遇を背負わなければ生きられなかった者や劣悪な環境で育つしか選択肢のなかった者はいくらでもいた。

 本来生まれるはずではなかったのをいいことに日々実験動物のように術式や投薬、洗脳による改造を施され、死ぬことすら選択できなかった者。

 保有できる呪力が極端に少ないため、一族の末席に名を連ねることを許されず、家名を名乗ることも許されず、陰陽の世界から放逐された者。

 生殺与奪の権を握られ、狗のように戦場を駆け、その精魂尽き果てるまで妖を駆逐することを課せられた者。

 陰陽の世界とは常に血によって色付けられてきた。陰陽の歴史とは流血の歴史だ。

 幾億幾万の犠牲を肥やしにして陰陽師は道を紡いできた。

 真波羽月もまた陰陽の歴史に名を記した陰陽師の一人だ。だが、陰陽師らしからない彼女の在り方に朱雀は僅かばかりの親近感を覚えた。

 だから、彼女は面白いと思った。

 陰陽師としての彼女に興味はないが、人間としての真波羽月がどういった者なのか朱雀は興味を持った。

 晴人を任せるなんてことは絶対にありえないが、少なくとも彼女の望みは朱雀と同じ方向を向いていると思えた。晴人の未来、その行く先のために彼女の存在は不要ではないと朱雀は判断した。

 だから、少しだけ、ほんの少しだけ彼女の肩を持つ。


「彼女は晴人様との約束を守っています。それに、っとこれ以上は無粋というものですね」


 朱雀の炎が収まるにつれて晴人の中の黒い呪力が色を失っていく。晴人は抱き締めてくれた羽月の腕を解き、朱雀の方へ向いた。


「お前、もしかしてわざと治さなかったのか?」

「そういうわけではありませんよ。ただ少し彼女の肩を持っただけですよ」

「普通は俺の肩を持つべきなんじゃないの?」

「まぁまぁ、そう仰らずに。あのままでは晴人様は必ず後悔すると思いましたので」


 朱雀のその言葉に晴人は何も言い返すことができなかった。というよりも言い返す言葉を思いつけなかった。何を言えば朱雀と羽月を、そして、自分を納得させられるのか。

 晴人はその答えをすぐに口にすることはできなかった。


「さて、真波羽月。あなたに二つの道を提示します。一つは今の生活を続けること。この意味は分かりますね?」

「はい」


 羽月にとっての今の生活とは一条家の配下としての生活ということだ。いずれは諜報員として親の跡を継ぐことになるだろう。

 自由とはほど遠い、首輪をかけられ、鎖に繋がれた人生を送ることになることは羽月も分かっている。「今」を過ごし続けることのリスクは理解している。

 だが、自分の力ではどうにもできないことも理解していた。


「もう一つは極々単純です。倉宮家の保護下に入り、晴人様の護衛という職に従事すること。どちらがお好みですか?」

燃え尽きながらまだ輝いてみせる

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