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あやかしばかし  作者: 東上春之
第一章 出会いと覚醒
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第二十八話 出会いと覚醒 二十八

更新です。Twitterで「東上春之」と検索していただければ出てくるので是非検索してみてください。「星降ル夜ノアリアドネ」という作品も連載しているので見てみてください。

 知らない畳、知らない天井。眠ってしまった自分を羽月が運んでくれたのだろう。

 晴人は両手と両足を軽く動かし、負傷の後遺症がないことを確かめた。朱雀の術のお陰で身体は万全と言ってよいくらいに回復していた。

 だが、精神的な空腹感、より正確に表現するのであれば強烈な飢餓感で腹が渇いていた。


(これが祓魔術式の後遺症か)


 この術式について朱雀に教えてもらった際、術式使用後の反動についても説明を受けた。曰く、膨大な呪力を短時間で急速に消費するため、使用後は身体が過剰に呪力を求めるようになるらしい。

 これは祓魔術式によって乱れた呪力バランスを整えようと身体が無意識的に吸収術式を発動させてしまうかららしく、吸収術式のリミッターとして発動されている術式を無意味にしてしまうほどの強制力があるそうだ。

 朱雀はこれを継戦のための防衛反応と呼んでいた。古来より京の守護を任されてきた倉宮家はいつ何時でも襲撃してくる妖に対応することが求められてきた。

 そのため、戦闘を継続すること、つまり、戦い続けることが非常に重要な課題となっていた。戦い続けるためには常に万全の状態であらねばならない。

 今の晴人の身体に起こっている現象はまさにそれだ。次なる襲撃に対して身体が無意識のうちに備えようとしているのだ。

 晴人は自分のことを我慢強い性格だと思っている。半年近く一人で暮らしたり、友人の勉強に根気強く付き合ったり、理不尽に巻き込まれたとしてもどうにか状況を切り抜けようと模索したり、と自画自賛というほどでもないが、比較的忍耐には慣れていると思っていた。

 だが、この渇きは慣れることはできなさそうだ。


「晴人君!起きたんだ。身体は大丈夫?」

「大丈夫だよ。見ての通り傷一つないし、ちょっと疲れてはいるけど少し寝たから快復した」

「良かった。急に倒れるから心配したんだよ」


 異常と言葉にするには甘すぎるくらいに心がアラートを鳴らしていた。けれど、晴人も男だ。

 目の前の少女にこれ以上迷惑はかけまいと、家の事情に巻き込むわけにはいかないと、身体の内側を焼く渇きを悟らせないよう、どうにか平静を取り繕う。


「羽月は怪我とかしてない?大丈夫だった?」

「私はなんともないよ。教室に現れた鬼以外に敵はいなかったから誰にも襲われてない。晴人君がボロボロだったことの方が心配だったよ」


 まずい。まず過ぎる。術式の反動でまともに羽月を 知らない畳、知らない天井。眠ってしまった自分を羽月が運んでくれたのだろう。

 晴人は両手と両足を軽く動かし、負傷の後遺症がないことを確かめた。朱雀の術のお陰で身体は万全と言ってよいくらいに回復していた。

 だが、精神的な空腹感、より正確に表現するのであれば強烈な飢餓感で腹が渇いていた。


(これが祓魔術式の後遺症か)


 この術式について朱雀に教えてもらった際、術式使用後の反動についても説明を受けた。曰く、膨大な呪力を短時間で急速に消費するため、使用後は身体が過剰に呪力を求めるようになるらしい。

 これは祓魔術式によって乱れた呪力バランスを整えようと身体が無意識的に吸収術式を発動させてしまうかららしく、吸収術式のリミッターとして発動されている術式を無意味にしてしまうほどの強制力があるそうだ。

 朱雀はこれを継戦のための防衛反応と呼んでいた。古来より京の守護を任されてきた倉宮家はいつ何時でも襲撃してくる妖に対応することが求められてきた。

 そのため、戦闘を継続すること、つまり、戦い続けることが非常に重要な課題となっていた。戦い続けるためには常に万全の状態であらねばならない。

 今の晴人の身体に起こっている現象はまさにそれだ。次なる襲撃に対して身体が無意識のうちに備えようとしているのだ。

 晴人は自分のことを我慢強い性格だと思っている。半年近く一人で暮らしたり、友人の勉強に根気強く付き合ったり、理不尽に巻き込まれたとしてもどうにか状況を切り抜けようと模索したり、と自画自賛というほどでもないが、比較的忍耐には慣れていると思っていた。

 だが、この渇きは慣れることはできなさそうだ。


「晴人君!起きたんだ。身体は大丈夫?」

「大丈夫だよ。見ての通り傷一つないし、ちょっと疲れてはいるけど少し寝たから快復した」

「良かった。急に倒れるから心配したんだよ」


 異常と言葉にするには甘すぎるくらいに心がアラートを鳴らしていた。けれど、晴人も男だ。

 目の前の少女にこれ以上迷惑はかけまいと、家の事情に巻き込むわけにはいかないと、身体の内側を焼く渇きを悟らせないよう、どうにか平静を取り繕う。


「羽月は怪我とかしてない?大丈夫だった?」

「私はなんともないよ。教室に現れた鬼以外に敵はいなかったから誰にも襲われてない。晴人君がボロボロだったことの方が心配だったよ」


 まずい。まず過ぎる。術式の反動でまともに羽月を見れない。鈴の音のような彼女の声も、宝石のような彼女の瞳も視界に入れるだけで目が眩みそうだ。


「そっか。陰陽局に通報したって言ってたけどもう来てる?」

「まだ来てないよ。でも先生の話だともうすぐ来るそうだから聞き取りの準備はしておいてって」

「まぁ、事情聴取はあるよな」

「二人一緒っぽいからそんなに細かく聞かれないと思うよ。それと明日は休校だって。後、これ。着替えだよ」

「分かった。ありがとう」


 この着替えは朱雀が持ってきたのだろう。彼女が近くにいないということは何か重要な仕事でもしているのか。


(それよりも、羽月の目が見れない。理性が拒否している。駄目だと言ってるのが分かる)


 その理由は分かる。羽月が高濃度で純度の高い呪力を有しているからだ。身体は呪力を渇望し、目の前に渇望する呪力がある。

 彼女に触れ、吸収術式で呪力を喰らえばこの渇きは収まるかもしれない。彼女の身体が動かなくなるまで吸い尽くしてしまえば考えられないほどの満足感と幸福感に満たされるのかもしれない。

 そしてそれをしたとしたら己が陰陽師でも、人間でもなくなってしまうことも分かっている。


「羽月、着替えるから外に出てもらってもいい?流石に気恥ずかしいからさ」

「あっそうだよね」


 そう言って畳に立ち、座敷から降りようと晴人に背を向けた羽月は何かに違和感を覚え、再び晴人の方に振り向いた。

意識が溶ける身体は制御不能

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