第二十六話 出会いと覚醒 二十六
更新です。Twitterで「東上春之」と検索していただければ出てくるので是非検索してみてください。「星降ル夜ノアリアドネ」という作品も連載しているので見てみてください。
本人はそうは思っていないだろうが、朱雀から見ても晴人は少々他者を慮り過ぎなのだ。確かに他者を思いやることができることは彼の美徳だ。
晴人自身はそうは思っていなくとも彼の優しさに助けられたと言う者はいる。それは彼がよく周囲を見ているからではあるが、それは美徳であり、過剰なことなのだ。
朱雀は晴人が赤子の頃から彼の全てを見守ってきた。晴人が友と喜んでいた時も、友のために悩んでいた時も朱雀は晴人のことを見続けていた。
見続けていたから、晴人以上の異常性を備えている朱雀だからこそ、倉宮晴人が抱える偏りを正しく認識することができた。
(それは分かるなぁ。晴人様はもっと欲張りになっていいと思うの)
(そうですね。もっとご自由に振舞わられてよいと思います)
干将と莫邪の意見に朱雀は小さく頷いた。晴人よりも晴人を理解する式神達は彼の長所も彼の短所も余すことなく全てを理解している。
まず行うべきは彼女と話し合うことだ。
(わざわざ私が彼女の前に姿を晒した意味をご理解くださるといいのだけれど)
真波羽月は他者の呪力をより詳細に視認することができる。彼女の瞳には晴人の中に宿る式神達の呪力が色の違いとして視えるのだ。
晴人と奏との試合で羽月は晴人の中に酒呑童子の呪力を視た。つまり、彼女はその瞳で朱雀の中の晴人の呪力を視たということである。
羽月は晴人と共にいた女性が妖、または式神であることに気が付いていた。それでいて羽月は晴人に聞いたのだ。彼女は誰だ、と。
羽月は晴人と共にいる彼女をどう認識すればよいのか晴人に委ねた。その結果は羽月が予想していた方向だったが、想像していたものとは違ったものだった。
晴人の返答から羽月が感じたのは拒絶。陰陽師としてのはっきりとした線引きをされたと感じたのだ。
彼女がそう感じたことを朱雀は察し、晴人と改めて話をする機会を作った。晴人が羽月の瞳について思い直せば、彼女に対してその手の誤魔化しは逆効果だと気が付くはずだ。
真波羽月と良好な関係を維持したいと思うのなら晴人がするべきだったのは全く反対のこと。羽月に話してしまうことだ。朱雀は晴人なら話さないと思っていた。
だから、フードの男が温羅を連れ帰った段階で式神符を使わず、羽月に姿を視せた。晴人の意思決定に少しでも作用すればと思った。
結果から言えば、失敗ではあった。姿を晒してしまったからこそ晴人は拒絶することを選んだのかもしれない。
(彼女は恩には恩を、仇には仇を返すタイプの人間でしょうから誠実であることが何よりも重要です。それがどんな形であれ。彼女の信頼と心を得たいのなら晴人様は彼女と向き合うべきなのですよ)
朱雀は再び車に乗り、式神符を起動して形代に乗り移ってアクセルを踏む。向かうは町外れにある倉宮の拠点。
(とは言え、人の世には乙女心と秋の空という言葉もありますからね。繋ぎとめ方を間違えないでくださいね、晴人様)
キリキリ舞いさらなるGへと




