第二十四話 出会いと覚醒 二十四
更新です。Twitterで「東上春之」と検索していただければ出てくるので是非検索してみてください。「星降ル夜ノアリアドネ」という作品も連載しているので見てみてください。
ふぅと息を吐き、晴人は背もたれに背を預ける。身体的外傷は朱雀のお陰で回復したが、急激に大量の呪力を放出したものだから精神はかなり参っていた。
初めて行使した倉宮の術式と祓魔術式に陰陽術に慣れきっていない晴人の身体は意識している以上に疲労してしまっていた。段々と瞼が重くなっていく感覚があった。目を開けているのが、苦痛で仕方がなくなっていく。
(というか、何で朱雀は自分の姿を羽月に見せたんだ?塾に戻るだけなら式神符の人形でも使えば羽月に見られなかった、の、に)
疲労による睡魔に襲われ、晴人はそれ以上深く考えることができなかった。
隣に座っていた晴人が力なく俯き、長椅子から落ちそうになると羽月は反射的に席を立ち、晴人を抱えるように抱き寄せた。急に倒れ込んだから大丈夫かと思ったが、呼吸は安定しており、疲労しているようだった。
焼け焦げた制服、火傷の生傷が残る肌、そして何より、黒く焼け爛れた脚。奏を圧倒した晴人があそこまで消耗したということはあの妖との戦闘は苛烈なものだったのだろう。
自分を守るためにその身を賭して戦ってくれた。脚にも残っていた傷は跡形もなく消えてしまっているけれど、彼が、「倉宮晴人」が負った怪我はすべからく私、「真波羽月」のために負った傷。
晴人の頬に手を触れ、晴人が生きていることを確かめる、とも考えたが、急に突き放した腹いせにぷにっと頬を軽く摘み、すぐに離す。
「私のために傷を負っても戦ってくれて。でも秘密を明かしてはくれない」
(勝手に期待して、勝手に失望して。私が晴人君を信じているのと同じくらい私は晴人君に信じられていると思っていた)
だが、それは傲慢と言うものだ。私は見返りを求めてしまった。無謬の信頼という最大にして唯一のものを。
生まれて初めて、何かが欲しいと思ってしまった。何かを望んでしまった。
生まれて初めて、彼に何かを求めてしまった。何かを願ってしまった。
長椅子に座らせた晴人の身体を横にして寝かせ、羽月は晴人の頭を自身の太ももの上に乗せた。
「・・・馬鹿だな、私」
(こんなに「馬鹿」になるなんて)
思わなかった。想像もつかなかった。考えもしなかった。私が私じゃなくなるみたいな。私が誰かになっちゃうみたいな。
ふわふわとした不安定な感覚。今まで頭の片隅にさえ出てこないような想像が走るようになった。怖いけど、嫌じゃない不思議な感覚。
(君のせいなんだけどな)
小さく寝息を立てる晴人の髪を撫で、ぷくっと頬を膨らませる羽月。
だが、すぐに表情を崩し、瞳を閉じて天井を向く。
ギリギリ愛いけないボーダーライン




