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あやかしばかし  作者: 東上春之
第一章 出会いと覚醒
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第二話 出会いと覚醒 二

更新です。Twitterで「東上春之」と検索していただければ出てくるので是非フォローしてください。「星降ル夜ノアリアドネ」という作品も書いているので是非読んでみてください。

 これは晴人には言っていないことだが、実は式神とその主は霊的なパスで繋がっており、互いを知覚することができる。

 これには「式神契約」のシステムが関わってくる。

 式神契約を簡単に説明すると陰陽師を「主」、妖を「従」として両者の間に永続的な契約を結ぶ「陰陽術式」である。この術式での繋がりによって式神は常に主から呪力を供給される。

 つまり、主と式神の間にできた呪力供給ラインを知覚し、辿ることでその存在と大まかな位置を特定することができるというわけだ。

 玉藻前が晴人の覚醒を感じ取ったのも、的確に晴人の元に妖をけしかけたのも、このパスを通じて晴人の状態を感じ取ったためであった。

 だが、もう一つ、玉藻前に晴人の覚醒が露見した決定的な理由がある。

 結論から言えば晴人の陰陽師としての力が五人の式神達では抑えきれないほどに大きくなってしまったからである。

 今まで晴人と玉藻前の間にあるパスを五人の式神の呪力で阻害していたが、年々晴人の呪力量が跳ね上がり続けたことで、遂に今日、完全に封印が解けて晴人の居場所が露見してしまったというわけである。

 覗いていたことが晴人に見つからないように朱雀、干将、莫邪の三人はこっそりと元居た大広間に戻ると酒呑童子が腕を組み、何か考えごとをしていた。


「酒呑童子、どうかしましたか?」

「・・・」


 朱雀の問いに彼は答えない。干将と莫邪は顔を見合わせ、首を傾げた。

 ひとまず、入り口に立っている意味もないため、席に着くことにした。朱雀が机を挟んで酒呑童子の正面に座ると、閉じていた目を開け、口を開いた。


「・・・お前達は「倉宮晴人」をどう見ている?」


 酒呑童子の言葉に最初に反応したのは干将だった。はぁ?とその可愛らしい顔を歪ませ、酒呑童子を睨みつける。

 そんな干将の頭を撫でて落ち着かせ、朱雀は表情を変えることなく答えた。


「どうとは、随分と上からな物言いですね」

「えーなになにぃ?やっちゃうのぉ?」

「駄目ですよ姉さん」

「俺は知りたいのだ、主と呼ぶに相応しい人間であるのかどうか」


 その不遜ともとれる物言いに姉を宥めていた莫邪の表情までも笑みを張り付けたものへと変わり、妹の異変を察知した干将が今度は宥め返した。

 朱雀としては二人ほど酒呑童子の言葉に思うところがない。それは酒呑童子が晴人と契約した背景を知っているから。どうして京の山の主が生まれて間もない赤子と契約することになったのか、それを朱雀は知っている。


「あなたは私達と違って晴人様の祖父、晴久様に調伏されて晴人様と契約を結んだわけですから、そういった考えを持つことを理解できないとは言いませんが、現状が全てを物語っていると思いますよ。考えてもみなさい。この国でも三本の指に入る妖であるあなたと玉藻前、それに次ぐ格を持つ鵺、通常とは異なる理から生まれた干将と莫耶、そしてあなた達以上の格を持つ私」


 最後に自分を持ってきたのは酒呑童子への意趣返し。朱雀は酒呑童子の晴人に対しての物言いがどうにも気に入らなかった。こいつはわざと回りくどく言葉を口に出し、何が言いたいんだと朱雀は肩をすくめた。


「こんな魑魅魍魎を許容してもなお、人としての自我と姿を保ち、玉藻前からの精神干渉をものともしない圧倒的な呪いへの耐性。これ以上の特異性を持つ人間はこの現世にはたった一人しか存在しませんよ」


 晴人の存在は異例も異例、特殊も特殊なのだ。晴人の特異性は朱雀が説明した点だけではない。朱雀は言及しなかったが、その成長速度も異常なのだ。

 朱雀達は現世に形を留め、晴人を守るため、以前から晴人が無意識に放出している呪力を供給してもらっていた。

 幼い頃は式神を一体維持するので限界だったが、年々身体に内包した呪力量が増加していき、今や六体の式神が実体化し、術を使っても何ら問題がないほどに膨れ上がっていた。

 六体もの妖と契約した陰陽師など歴史を遡っても祖先の安倍晴明くらいなものだ。彼は十二体の式神を従えていたわけだが、それと比較しても幼少の頃から複数の契約を行える陰陽師はこの国には晴人しかいない。


「だからこそだ。この俺が仕えるのだ、他を寄せつけない圧倒的な存在でなくては面白くない。だからお前達に問うたのだ。どう見ているか、と。主ということを一度横においた時、お前達はどう見る?」


 だからこそ、酒呑童子は彼女らに問うた。

 一歩間違えれば調和を破壊し、混沌を呼び寄せることができるかもしれない者をどう捉えるのか。もちろん玉藻前が晴人を狙う理由にも関わってくるかもしれないからどう見るかという以前に守護対象であることは酒呑童子とて理解している。

 護り、支える存在であるという認識を一度横に置いて彼は彼女達に問いを投げた。


「要領を得ませんね。酒呑童子、あなたは晴人様を評価したいのですか?それとも精査したいのですか?」

「そのどちらもだ。お前の言う通り倉宮晴人は確かに陰陽師としては常軌を逸している。だが、その力や我々の力を扱うに足る器かどうか。その力に主が飲まれてしまっては我々に存在する意味はない。この意味が理解できないお前ではあるまい」


 その言葉に朱雀は口をつぐんだ。酒呑童子の問いに対して朱雀は主だからという答えしか持っていなかった。式神としてはそれで十分なのだ。

 むしろ、晴人に対して高い忠誠心を持っているという点は十二分以上と評価されてしかるべきだ。

 妖が陰陽師と式神契約を結ぶということはその時点から形成される主従関係を受け入れるということで、契約は信頼関係の上で構築される。

 朱雀はずっと己の行動に誇りを持ってきた。晴人が安全に陰陽師としての宿命から離れ、穏やかな日々を送れるように傍らで見守り続けてきた。

 度々玉藻前が配下の妖を使って晴人の住む近辺を偵察に来ていたり、統率されていない妖が晴人の周囲の人間に危害を及ぼそうとしたりした際、朱雀は常に脅威を排除し続けてきた。忠誠を捧げているという点で酒呑童子に釘を刺されるような謂れはない。

 そう、朱雀は考えていた。


「どう見ているかとはっきり言えば私は仕え、支える主だと思っています。式神契約を結んだその日から私の忠誠は晴人様だけに捧げています」


 酒呑童子が気に入らなかったのはまさにその部分であった。酒呑童子も少なからず晴人を守ってきたことを誇りに思っている。

 その上で酒呑童子はこれから本格的に玉藻前と相対することができる陰陽師を目指そうとする晴人に漫然と付き従おうとする彼らに自らの姿勢を問いかけた。

 晴人に対して特に朱雀は庇護対象に向けるような視線を向け、晴人が彼らを認識できるようになってからはそれ以外の態度も露骨になり、酒呑童子はその姿勢に疑問を抱いていた。


「私達は晴人様の武器となることが式神としての存在意義です。晴人様を支えることが私達のすべきことです」

「私もそんな感じだね。全く同じってわけでもないけど」


 莫耶と干将は概ね朱雀に近しい答えではあるが、その細部は異なっていた。

 干将については含みのある言い方をしてはいるが、彼女もこの問いが三人に問われたものではなくたった一人に問われているものであると気が付いているのだろう。

 干将は普段おちゃらけているように見えるが、それでいて常に周囲への警戒は怠らず、いつ何時だろうと晴人の盾になれるよう、自分の立ち位置を考えて行動している。

 その周到さは酒呑童子も認めるところであり、その点で酒呑童子は干将を信頼していた。それが分かっているから干将は余計なことは言わず、酒呑童子のアクションを待った。


「朱雀。俺はお前のその姿勢が気にいらない。お前は晴人を主と言いながら本質的には庇護対象と、守らなければならないと自分より下に見ている。だが、一番の問題はお前がそれを自覚していないことだ。お前は今、俺の言っていることが見当外れな文句だと思っているだろう、違うか?」

「そんなこと」


 ないと言えなかった。酒呑童子は自覚していないと言ったが、それは違う。朱雀も少しだけ、ほんの少しだけ晴人に対しての態度に迷いがあった。それは彼の言う主従の関係から逸したものなのか、朱雀には判断できないものであったが、確かにそれは存在した。

 朱雀が次の言葉を口にするより先に酒呑童子が口を開いた。


「いや、違わない。はっきり言おう、お前は主と呼んだ者を下に見ている。守らなければならない弱い存在だと見下している」


 腹の底に鈍く響く声音に朱雀も干将も莫耶も、そして扉の向こうで聞き耳を立てていた晴人も息を呑んだ。

 晴人は朱雀が自分を下に見ているとは思っていなかった。

 何も分からない自分に丁寧に陰陽の世界について話してくれたことに非常に感謝しているし、その時も下に見られているとは感じなかった。

 酒呑童子には同じ式神として朱雀の態度から自分を庇護対象として見ていると感じられるところがあったのだろう。


(それは式神にしか分からないことなんだろうな)


 この日、酒呑童子の言いたかった、伝えたかったことは晴人には分からない。それは人間と妖だからなのか、主と式神だからなのか、この時の晴人にはそれすらも理解できなかった。


「私は、私は、」


 段々と朱雀の声が弱々しくなっていく。

 先ほどまでとは打って変わって力なくジャケットの裾を握りしめるその姿は酒呑童子にはまるで今まで被ってきた仮面が剥がれたように見えた。晴人を守る自分、これが彼女を彼女たらしめていた足場の一つだったのだろう。

 だが、それは妖としては異質なのだ。妖は自身を最も優先する存在であると酒呑童子は考えていた。

 妖にとって式神契約はメリットよりもデメリットの方が大きいものだが、両者の同意がなければ成立しないもののため、デメリットを上回るメリットが妖側に存在しなければ結ぶことはない。

 酒呑童子を除く式神達はそのデメリットを上回る価値を晴人に見出したから幼い彼と契約を結んだ。

 幼い頃から晴人を見てきた朱雀が晴人に多少過保護になることはおかしいとは酒呑童子も思ってはいない。しかしながら、妖らしからぬ傾倒具合に酒呑童子は異質だと感じていた。


「さて、これ以上お前を追い詰めるのは今は止めるとしよう。なんせそこの扉の向こうに入るタイミングをずっと伺っている主がいるのだから」


 酒呑童子がそう言うと朱雀も冷静になったのか背後の扉に主の気配を感じ取った。晴人も全員の視線を感じ、そっと襖を開けた。


「気づかれてた?」


 後ろ手に襖を閉める晴人。なんだか込み入った話をしているようだったからそれとなく気配を消して話を聞いていようと思っていたものの、簡単にばれてしまった。


「あぁ、我々式神とその主は距離に関係なく互いの存在を認識できる。簡単に言うと互いにどこにいるか把握することができる。だから玉藻前は封印が解けてすぐ主の居場所を探知できたわけだ」

「契約するとそんなこともできるようになるんだ。で、朱雀が落ち込んでる理由を教えてもらってもいいか?」

「単純なことだ。思い上がった鼻をへし折ったらこうなったのだ」


 酒呑童子はこともなげにそう言ったが、晴人は途中からしか話を聞けていなかったため、その前から何について話していたのかいまいち分からないが、なんとも言えない空気に覆われていた。晴人が朱雀に目を向けるとばつが悪そうに顔を逸らされてしまった。

 朱雀は悲嘆に暮れていた。酒呑童子に言い返せない自分よりもその姿を晴人に聞かれていたことがあまりにも情けなかった。

 彼の指摘に言い返せなかったのは胸の内に彼が言うようなものが一切ないとは断言できなかったから。妖に感情はない。

 あるのはその存在を形成する性質、願望、そして本能。人間の機微を感じ取ったり、その心を推測したり、そんな人間のような思考は持っていなかった。

 だから、酒呑童子は朱雀を異質だと感じていた。彼女の晴人への執着は妖の根底にある本能からはかけ離れた対極に位置し、妖を妖たらしめている「奪う」という本能を凌駕していた。

 他の四人と違う形で晴人と契約した酒呑童子は客観的に仲間達を見ており、その中でも朱雀と干将は妖らしからぬ雰囲気を感じていた。

 そんな伺い合うような三人の様子を見ながら干将は机に突っ伏し、ため息をついた。干将は酒呑童子が朱雀を訝しんでいたことはずっと分かっていた。

 また、朱雀の行動を傍で見てきた身としてはよく晴人の前で醜態を晒さぬように自制しているなと感心していた。

 彼女の内と外をよく理解している干将にとって酒呑童子が彼女の在り方を問うたとてその答えを彼女が言葉にできるわけはなく、話が始まった時点でどうせこうなるだろうなと干将の予想した通りになっていた。


(やっぱこぉなるよねぇ。酒呑童子も馬鹿よねぇ、今更、言葉にしようとしなくても見てれば分かるのに)


 干将は机の上で伸ばした腕を組み、左腕に顔を乗せて気だるげに顔を上げた。

 何をどうしようが朱雀は変わらないし、それこそ晴人が本気で迷惑だと言わない限り変わろうとすら思わないだろう。

 今、朱雀が本気で落ち込んでいるのは酒呑童子の指摘が芯を食ったからではない。

 酒呑童子に言い返せなかった姿を晴人に見られ、加えて客観的に自身が冷静ではなかったと思い知らされたことが彼女をここまで追い詰めたのだろう。

 朱雀が冷静であれば感じ取れていたはずの晴人の存在を、彼女は酒呑童子に指摘されるまで気が付かなかった。干将は晴人が襖の奥にいたのも、朱雀が晴人の存在に気付いていなかったことも分かっていた。

 その上で彼女は酒呑童子を止めなかった。朱雀が嫌いというわけではない。晴人を困らせたかったわけでもない。ただそれが一番良いと思ったから彼女は口を挟まず、莫耶に口を挟ませなかった。


「まぁちょっとだけ聞いてたけど。酒呑童子もあんまり朱雀を追い詰めなくていいからな、悪気があるわけじゃないんだし。それに正直、俺は嬉しいよ。それだけ真剣に俺を護ってくれていたってことだろ?俺のことを主って肩書じゃなくて俺個人として考えてくれてたんだから俺としてはそっちの方が嬉しいんだけど、って言ってもか」


 晴人なりに朱雀のことを考えて話をしたつもりだったが、彼女は顔を伏せたままで、晴人の言葉は全く届いてはいなかった。

 それほどまでに酒呑童子の言葉が彼女を強く揺さぶったのだろう。力なく落ち込む朱雀の姿を見て晴人は考えた、言葉が響かないのであればそれ以外の方法で意識を向けてもらえばよいと。机を回り、朱雀と向き合うように片膝を折った。


「朱雀」


 ただ名を呼んでも反応しない。だから、頬に手を伸ばし、顔を上げさせて瞳を覗く。


「朱雀」


 まだ足りない。まだその眼は何かを求めている。頬から手を離し、朱雀の閉じた脚を挟むようにしてその膝に腰を下ろした。

 そして、腰に腕を回し、その腕に力を込めて強く抱き締めた。彼女が折れても構わないくらい、持てる熱が伝わって彼女を溶かしてしまうくらい強い抱擁に朱雀が吐息を漏らす。


「俺は朱雀の気持ちを迷惑だなんて思わないし、朱雀が俺のことを主以上に思ってくれてるのはすごく嬉しいよ。それを庇護されてるとは思わないし、それを重く受け止める必要もないからな。ただ、もう少しだけ自分のことも労ってあげてほしいな。無理せず自分のしたいことをしてもいいからな」


 酒呑童子の言いたかったことは恐らく式神としてとか妖としてとかそういったことではなく、もう少し自分のことを考えろと言いたかったのだろう。

 彼女の好意は素直に嬉しいし、その好意に応えられるような人間になりたいとも思っている。

 だからこそ、自分と自分の周りの人達には悲しい顔をさせたくない。

 酒呑童子の言うように朱雀が晴人のことを考え過ぎて自分のことが疎かになっているというのはあながち間違ってはいないはずだ。十年以上共に時間を過ごしたからこそ朱雀の機微がこと細かに分かるのだろう。

 酒呑童子も、干将も、莫耶も、鵺も、そして、朱雀も、お互いにお互いのことを分かっている。けれど、理解はしていなかった。

 分かっていても理解はできない、その在り方が、その有り様が。酒呑童子は朱雀の式神としての在り方が気に食わない。それが朱雀にとっては思ってもみなかった指摘だったというだけ。

 すれ違ってぶつかり合っただけ。それは人間にとってはごく当たり前のこと。しかし、彼らは式神で、妖なのだ。

 その在り方も、生き方も人とは異なる価値観で、異なる倫理観で彼らは生きている。彼らには彼らにしか言えないことがあるように晴人にも晴人にしか伝えられない、言葉にできないものがある。


「本当に、今まで色々と頑張ってくれてありがとう。これからの方が大変になるかもしれないけど嫌にならずまた助けてくれると助かるよ」


 主として、何より今まで護ってもらった者として感謝と労いを晴人は伝えたかった。

 人と妖で時間に対する考え方や受け止め方は当然違う。晴人に捧げた十年という時間を彼らがどう捉えていたのかは分からないが、これから彼らの主になるのなら彼らの使ってきた時間に値するような陰陽師を目指していかなければならないと思っている。


「・・・晴人様に、私は必要ですか?」

「必要に決まってるじゃん、当たり前だよ。もちろん朱雀だけじゃなくて干将も莫邪も鵺も酒呑童子も皆必要だよ」

「私の行動は余計でしたか?」

「余計じゃない。絶対に」

「これからもお傍に居てもよろしいでしょうか?」


 そう弱々しく聞くと晴人は朱雀の腰に回していた腕を肩に置き、額を朱雀の額にぴとりと合わせた。

 朱雀を抱き締めた時や干将と莫邪の手を握った時にも感じたが、やはり彼らの体温は異常に低い。人間だったら生きていられないようなひどい冷たさが直接身体に流れ込んでくる。

 朱雀もそれを感じたのか晴人の額から身を離そうとするが、そんなことはお構いなしに今度は晴人から左手を彼女の指に絡ませた。


「あぁ、もちろん。これからも俺のことを助けてよ」


 真っ直ぐな晴人の瞳に射貫かれ、朱雀は喉まで出かけていた言葉を一度飲み込んだ。そんな言葉を今ここで口に出すくらいなら、と思い直し、閉じた瞳を開いて


「はい、喜んで」


 と、そう答えた。

ゆらゆら

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