第三章 再会①
「いきてる……」
自分の声とは思えないくらい擦れた声が出た。
何よりも、生きている実感があったサラは心底驚いてそう口を開いたのだ。
今まで生きていた中でここまで柔らかい寝具を使ったことはなかった。
触り心地もよく、良い匂いもする。
ここが天国だと言われても信じてしまいそうだが、体に巡る祈力からここは現実の世界なのだと実感するのだ。
意識を失う前のことを思い出すと、今の状況が全く理解できなかった。
教会から用無しとされたサラはあの時、高い場所から落とされて死ぬ運命だったはずなのだ。
そんなことを思っていると、サラの居る部屋の扉がゆくっくりと開いたのだ。
なんとなく扉の方に視線を向ける。
そこには、とても美しい男性が立っていたことにサラは驚く。
とても目を引く美しい銀色の髪は長く、後ろで一つに結ばれていた。
意志の強そうなきりりとした眉、ブルーサファイヤのような美しい瞳。
長身で程よく付いた筋肉は、彼の日々の鍛錬がどのようなものなのか物語っているようだった。
そしてその声は、低く甘やかな声をしていた。
「サラ! 目を覚ましたんだな。ああ、よかった」
そう言って、ベッドにいるサラの元に駆け寄り、身を起こしていたサラを包み込むように抱きしめたのだ。
甘く、爽やかな香り。
抱きしめられたサラは、鍛えられた腕の中がとても懐かしいと感じていた。
「ラン兄ちゃん……?」
「ああ! そうだ。ランドールだ。サラ、ごめん。遅くなってごめん」
そう言って、ランドールはサラを抱きしめる力を強めた。
痛いくらいに強い力に驚きはしても嫌ではなかった。
今まで十八年、生きてきた中でここまで本気でサラのことを思ってくれた人はランドールしかいなかったから。
「ラン兄ちゃん……。会いたかった……。うっ、うぇ、ひっく……」
「サラ……。ごめんな。俺の所為だ。こんなに痩せて」
「ううん。ラン兄ちゃんは何も悪くない」
「違う……。きっかけは俺だ。俺の所為で教会に行ったことが始まりだ」
「後悔なんてしてない。あの薬がなかったらラン兄ちゃんがどうなっていたか分からない。だから、あれで良かったんだ。だが、その所為でラン兄ちゃんが教会に……」
そう言ってサラが俯くと、ランドールはサラの頬に触れて苦しそうに告げた。
「サラは騙されていたんだ。俺は初めから教会に捕まってなんてなかった。それに……」
そこまで言ったランドールはとても言いにくそうにしながらもとんでもない真実を告げたのだ。
「この世に万能薬なんてもう存在しないんだ。それは昔のことだ……。今の教会にある薬は全て紛い物だ……」




