もう目を開いて大丈夫だよ
十人の子供が遊ぶ約束をして集まった。
その内、九人は小さい頃からずっとずっとお友達。
だから、いつも皆で遊んでいた。
残りの一人は新しい子供。
まだまだ皆の事を知らないから、ちょっとだけ居心地が悪そう。
だけど九人の友達は「気にしないで」って笑う。
「いつも通り皆で遊ぶだけなんだから」って笑ってくれる。
だから、一人の子供はほっとした。
さて、今日の遊びはなんだろう。
九人の友達の内の一人が言った。
「神様を呼ぼう」
それを聞いて残りの八人の友達も「そうしよう、そうしよう」と言った。
一人の子供は混乱して尋ねた。
「神様を呼ぶって?」
すると九人の友達が皆で丁寧に説明してくれた。
村で古くから恐れられている怖い神様。
昔からこの土地に住んでいて、悪い子供を攫うのだと言う。
だけど、普段は遠い場所に住んでいて、まず人の前には現れない。
「なら、呼びようがないじゃない」
話を聞いて内心怖くなってきた子供は安堵して言う。
「いや、だけど呼び方があるんだよ」
九人の友達の内の一人が言った。
聞けば、神様を呼ぶおまじないがあって、それをするのには十人必要なんだと言う。
「やらなくていいでしょ」
恐怖が戻ってきた子供が慌てて言うが、友達は皆聞きもしない。
「怖がっているの?」
「そもそも悪い子なんていないから何も起こらないって」
なんて、皆から馬鹿にされる始末。
だから、子供は渋々九人の友達と一緒におまじないをすることになった。
呼ぶのには髪の毛と爪の端っこ、そして血が必要らしい。
皆でジャンケンをしたら、九人が全員チョキを出して、一人だけパーの子供が痛い思いをすることになった。
仕方ないので髪の毛を少しむしり、爪をその場で噛んで、深爪で出来た血を少し取って全部一緒にしてから火をつける。
「それじゃ、皆で目を閉じて」
九人の友達の内一人の号令に合わせて皆一斉に目を閉じる。
そうしてからおまじないの言葉を皆で口々に唱えていく。
今日、初めて神様を知った子供だけがおまじないを唱えるのが遅かったけど、それ以外は問題はなさそうだった。
さて、おまじないを唱え終わったわけど何も起こらない。
かといって、目を開くのは皆怖い。
「誰か目を開けよ」
「君こそ開けよ」
なんて言い合いをし合う。
誰だって怖い。
だけど、逆に言えば一番に目を開いた子は一番勇気があるってことだ。
「なんだ、何にもないじゃん」
九人の友達の内、一人が言った。
「ほんとだ、何もない」
「怖がって損した」
皆が口々に言い出した。
他の友達の声を聞きながら、一人の子供はまだ目を開けなかった。
「皆、もう目を開けたの?」
なんて、思わず聞くと九人の友達が笑って言う。
「開いてないのは君だけだよ」
友達のそんな言葉を聞いて、子供は安心して目を開く。
目を開いた時、その場に居たのは目を閉じたままの九人の友達。
なんで? なんて思う間もなく、一人の子供は上へ上へと持ち上げられていくのを感じた。
それで、その子供の人生はこれでおしまい。
少しして、残された九人の友達の内、一人が勇気を出して目を開いた。
そこに子供が一人居ないことに気がついて思わず悲鳴をあげる。
その悲鳴を聞いて残りの八人の友達も目を開いて次々に悲鳴をあげた。
だけど、どれだけ悲鳴をあげてもあの子供は帰って来ない。
やがて、九人の友達は皆その場を逃げ出した。
後日、あの子が行方不明だって話になってあの子の親や学校の先生、そして警察までやって来たけど、九人の友達は全員で結託して「何も知らない」と言った。
だから、あの子の話はこれでおしまい。
九人の友達はその後、大人になっても、ずっとビクビクしていたけれど、結局何も起こらなかった。
だって、怖い神様は自分を悪戯で呼んだ悪い子供にお仕置きを既にしているんだもの。
だから、このお話しもこれでおしまい。
現実世界もこんなもんですよね




