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騎動兵戦記ハガネが通る!  作者: 隙丸史上
第一章 すべてが始まる七日間
3/82

第三話 ウォーキャリアとヤマト級と超機獣




 シミュレーションルームは格納庫の隣りにあった。

 室内に入った二人が見たのは、三メートル程の球体が四つと、その奥の階段。

 球体の下部は半ば床下に埋まり、表面には扉の様な切込みがある。

 光沢のない黒い玉は、見様によっては奥に光の差さない洞穴にも見える。

 哲人は入口近くの球体の前に立つと、これが開閉スイッチだと精太に説明した。

 球体の一部が切り込みに沿って上に開く。


「入ったら中の座席に座ってくれ。使い方だけど……」

「大丈夫だぜ。ハガネマルのコクピットと似てるから」

「ならウォーキャリアとも造りは同じなのかもしれんな。俺がホスト側をやる。ハガネマルと違ったり分からない事があったら聞いてくれ」


 精太が乗り込んだのを確認すると、隣の球体に哲人も入る。

 内部ライトで照らされているのは、中央に配置された大きなシート。

 そこに一旦腰を掛けると、肘掛けに配置された操作盤を触った。

 二つの球体の扉が閉まる、そして。


「設定は全てデフォルトで、人機間念・波動接合(アルコンユナイト)領域(フィールド)形成開始」


 たちまち、シートが形状を変えて壁の如く起き上がり、それに合わせて哲人も再び立ち上がる。

 座って、立つ。一見無駄な一連の動作だが、しかしその足底が踏む先から、光が波紋の様に(はし)った。

 その模様は、(さなが)ら水面に立つ様に。

 光は二本の足の間を中心に半径一メートル程の円状に広がると、そこから上昇、円柱の光の柱となり――


 貝殻を耳に当てた時の、波を想像させる音を聞きながら、哲人の意識はウォーキャリアと溶け合った。


 ――これが人機間念・波動接合(アルコンユナイト)である。

 光の内側に居る人物の念波動と、人型兵器の思念対応機構を紐付ける為の段取り。

 人間と人形の垣根を取り払うのだ。

 この工程を経て初めて人機一対は成され、パイロットはロボットを十全に動かす事ができる。

 決まった動作、例えば旗振りをしながら声を出すだけなら要らない工程だが、こと戦闘行動に関してはそうはいかない。

 これにより特定のモーションパターンの選択ではない、操縦者の技量をダイレクトに反映する、機械の四肢が兵士に齎されるのだ。

 哲人は目を開いた。モニターからではない、ウォーキャリアの目を共有した視界を得る。

 目に飛び込んできたのは荒れ野と、遠くに木々の茂る森や雄大な富士の山、そして真正面に哲人の愛機と同じ型のウォーキャリア――人の形を模した、精太の操るロボットの姿。

 精太と哲人の間で通信を開く。哲人の視点にて、空中に精太の顔を映した半透明のウィンドウが浮かんだ。

 ウィンドウ上の精太の視線移動から、相手側にも同様のウィンドウが見えたと窺える。

 戦闘行動中の円滑なコミュニケーションを目的とする通信表現技術、これをフェイスプットと呼ぶ。


「精太、調子はどうだ」

「木とか、見える物が大きく感じる、設定がおかしいのかな?」

「ハガネマルの視点じゃないからな。それがウォーキャリアから見た景色ってやつだ」

「えっ、オレ、ウォーキャリアに乗ってる事になってんの?」


 勿論これらはシミュレーション上の話である。現実として精太が搭乗可能な余剰ウォーキャリアは富士大宮基地に用意されていない。

 フィールドはハガネマルお馴染みの戦場、富士山の麓。この設定は哲人が普段用いる電子模擬戦闘のそれと同じであり、デフォルトにしてこうなるという事は、杉本主任の精勤の表れでもあった。

 きっと自分が教官になったと聞いた日から、この状況を想定して愛機内の設定情報をシミュレーションルーム側に反映してくれていたのだろう。感謝の絶えない心尽しである。


「大人と子供の視点差、と言うには開きが大きいけどな。身体も少し動かしてみろよ」

「おう……おっ、おおっ!? 身体が軽いしキビキビ動く、これが一本下駄の成果か!」

「当然違う。巨人と小人の主観時間の違いだよ」


 まったく、人はすぐに強くはなれないとあれだけ釘を差したと言うのに。

 これも主観時間の違い――若さ故に得られる一秒の重みが見せる夢語りなのか

 幼少期の万能感。今や気付けば歳を取る哲人には遠く過ぎ去った時代である。

 でも確かに、少年と大人の吸収力や柔軟さは違うだろう、化けていく早さもだ。


「ハガネマルとウォーキャリアでは、意識を重ねた時の体感時間が変わる。大きければ大きい程、よりゆっくりに。象はのっそり鼠はちょこまかってな」

「そうなんだよ。自分の体動かすよりも、ハガネマル動かしている時の方が遅いというか、重いというか」

「そっちは同調のズレ、ヤマト級兵器の問題点に挙げられている一つだな。独自機構の特殊性から避けられないらしいが……他にも変に思う事があるんじゃないか?」

「動かし辛い、以外にもか?」

「ハガネマルの戦闘映像を自分で見返したりするとさ、確かに動きにくかったけれど、それにしてももっと素早く動いていた筈だったのに、とか」

「……おっさん、分かるのかよ!?」


 精太のフェイスプット自体が身を乗り出す勢いで哲人に迫る。

 口を閉ざして溜め込んでいたものへの理解者が現れたからだろう、その顔は喜色を露わにしていた。


「オレも言い訳っぽく思えて口にできなかったんだけど、動画で見返すと尚更遅いんだよ、敵もハガネマルも、実際に戦っていた時はもっと早いパンチだったのにとか」

「それが主観時間の違い、身長百五十センチの精太と、五十メートル以上のハガネマルに乗り移った精太が観ている時間の速度の差だ。象の鋭い蹴撃も鼠の目には足踏みなのさ」

「理由あったんだ、安心したぜ。もういっそオレもウォーキャリアに乗ろうかなぁ」


 スピードの違いに感動しているのか、精太は飽きもせずに拳を右左と前に繰り出す。


「だからって降りて貰っても困るな。欠点を差し引いても、ハガネマルにはウォーキャリアには真似できない利点がある」

「ウォーキャリアと比べて、って話は聞いた事がないな、教えてくれよ」

「固くて強い。防御力と攻撃力の次元が違う。言うなれば超巨大な念波動の増幅装置だからな。敵の攻撃なんてほぼ効かんし、その気になれば山も動かせるだろうよ」


 特に重要なのが防御力で、年端も行かない子どもが公然とパイロットをできる理由もそこにある。

 戦後、敵が現在の侵略手段を執り始めてから、それと相対したハガネマル達ヤマト級兵器が小破以上の損傷を負ったという報告はない。

 パイロットもまた言わずもがなで、戦績も負け知らず。だから敵勢力の壊滅を図れていないにも関わらず、人間社会は復興し人々の中から十五年戦争の記憶は消えつつあった。

 それもこれも、強力な念奏者と特別なロボットのタッグがあるからこそだ。


「反面、ウォーキャリアが敵に殴られようもんなら、原型も留めずぶっ壊れるだろうな」

「……一発で?」

「いえーす。ま、運が良ければコクピットは残るかな。ここだけは昔から頑丈なんだよ」


 正しくはコクピット自体の耐久性の問題ではなく、コクピットが機構上念奏者と接触し、念波動を余す所無く受け止めるプロセスを挟む結果として頑丈になる、なのだが。

 この辺りの詳細を語る上で必要になる材質、念波動を増幅する媒体、及びそれを用いた機構の説明は割愛した。今の精太に聞かせても犬に論語だろう。


「精太よ、暫くは好きにしていい。そこらを動き回ってウォーキャリアの感覚に慣れな」

「自由時間か、やりぃ! うはっ、ハガネマルよりずっと早い!」


 途端、走ったり跳んだりと、許可したとはいえ物怖じせずに軽い身体を味わい尽くす。

 ……流石に空を飛んだりはしなかった。ハガネマルの運用法に無い飛行術『重力解放』を独学でやられた日には、神の子だと認めて教官任務を返上せざるを得ない。

 それに同調のズレが無いとしても、その万能感に疑念を抱かないのも少年らしい。

 先程説明した主観時間の違いは、理屈を考えればウォーキャリアにも当て嵌まるのは自明の理だ。ハガネマル以下だろうと、それでも成人男性の約十倍の大きさである。

 なのに軽い身のこなし、反応は人そのもの、否、それ以上の敏捷を見せた。

 巨体ゆえの鈍重さを否定する現実、この食い違いにこそ念波動が噛んでいるのだ。

 ここに十五年戦争に於いて、既存の兵器を押し退けて主役になった理由がある。


「凄いだろ、これ(ウォーキャリア)は」

「ああ! 今なら何でもできそうだ、空だって飛んでやる!」

「やるなよ、大の大人がみっともなく泣くぞ。やるなら俺の見えない所でやれ」


 なんだよそれーと言いつつ跳躍から前方宙返り、それも四回転とあってはもう人間業とは言えない。人の身でもできない真似を、精太は何ら疑わずに実行する。

 ハガネマルがそうであった様に、効率の大小はあれどウォーキャリアも念波動の増幅装置である事は変わらない。

 違うのは、生じた力の大半を防御力ではなく機動性に回している点だ。

 攻撃を受けない為の超機動に、精太は魅了されのめり込んでいる。

 哲人にもこんな頃があっただろうか。戦争の渦中で、少なくとも心はこれ程自由でいられなかっただろう。でも何故か、懐かしいものが込み上げてくるのを感じた。


「……でもヤマト級は、ハガネマルはもっと凄いもんなのさ」

「そうか? こんだけ動けるなら、周囲を走り回って死角から殴り放題だぜ!」

「できるのか、超機獣(ちょうきじゅう)を相手に」


 超機獣とは、敵性存在(インベーダー)が用いる侵略兵器であり、もっぱらヤマト級が相手をしている全長五十メートル以上の怪獣の呼び名である。

 五年前、敵性存在による武力攻撃事態等の攻撃目標を人類側が制御し、ヤマト級という対抗手段を配備した事で国民の安全を確保するに至ったとして、十五年戦争は一応の終結を迎えた。

 コンタクトの手段さえ無い相手であった為に、宣戦布告も講和も無い十五年戦争であったが、当初は国力の疲弊による焦燥、或いは希望的観測に基づいた先走りと罵られ、誰も戦争が本当に終わったなどと考えてはいなかった。

 それでも大本営の発表通り、この五年間で侵略攻撃による民間人の死傷者は一人も出ていない。

 合わせて復興されていく街、地下シェルターからの解放により、人々もまた実感を以って戦争の終結を受け入れていった。

 この平和を成立させているのが、特定地点から出現する超機獣を、必ず打倒してきたヤマト級兵器なのである。

 この力関係こそ人類の生命線。ヤマト級の敗北は、即ち仮初の平和の瓦解を意味する。

 必勝を義務付けられ、その期待通りに圧倒的な力で勝ってきたハガネマル。

 それを操る精太にとっては、唯一の敵でありながら蹴散らされる為に現れる雑魚、と思われても仕方のない存在だろう。

 だが、しかしだ。


「できるも何も毎回ハガネマルで殴り合ってるし。おっさんより詳しいだろうぜ」

「十五年戦争の末期、これが初めて確認された前哨戦で、挑んだ部隊は全滅したんだ」


 ウォーキャリアが三十四機、敵性勢力と思われる未確認存在と交戦、包囲し間断なく攻撃を続けるものの、傷一つ負わせる事無く壊滅。

 出回った戦闘詳報は、読めば読む程に酷いものだった。

 とりわけウォーキャリアで随一にして唯一堅牢だと言える安全地帯、コクピットブロックをパイロット毎破壊する攻撃が確認された、この報告が当時のパイロット達を震え上がらせたものである。

 序戦での都市攻撃で数を圧倒的に減らした人類が武力を維持できたのは、生躰変(せいたいへん)での肉体強化と、コクピットの頑強さによりパイロットの生存率が非常に高かった背景がある。

 これを覆す一報に、地下シェルターへ戻る兵士が続出したのも懐かしい話だ。


「こちらの攻撃は通じず、巨体の何処かに当たれば粉砕される。強度の違いを知れば殴り合いなんて夢のまた夢。それが当時のウォーキャリアと超機獣の力関係だった」

「…………」

「そんな超機獣を屠るのがハガネマルだ、もう比べるまでもないだろう」


 少し前に、ハガネマルを次元が違うと説明した。

 それが全てなのだ。人と羽虫に喩えるのさえ烏滸(おこ)がましい。

 超機獣が、ハガネマルが進む。

 その前進を遮ろうものなら、ウォーキャリアは粉々だ。路傍の石にも成り得ない。


「……オレがウォーキャリアに乗っているのは、ハガネマルだと相手にならないからなのか?」

「だとしたらどうする? 幻滅するか」


 ぴたりと、忙しなく動いていた精太のウォーキャリアが止まる。

 そして周囲をぐるりと見回すと、森の一角に向き直り、両足を開いて腰を落とす。

 続けて左拳を前に、右拳を脇の下に置く。

 正拳中段突きの構えに似ているが、姿勢も手順も色々と足りない。

 少年に空手を習った経歴が無い以上、見様見真似のものなのだろう。

 唯一つ本物なのは、彼の持つ念波動の高まりである。

 今から自分なりに全力で殴ると、無言で哲人に意思表示をして――

 正面の虚空を殴打。直後、その腕の直線上にあった木という木が、ぶわりと音を立てて消えた。

 幹を引き裂いたのか押し潰したのか、不可視の暴力による一瞬の蹂躙。

 明らかに音速を超えた破壊現象に、しかしソニックブームは認められない。

 精太の拳圧は、大気を押し出したのではなく、木々と諸共に消し去ったのだ。

 この事象を前に、不壊の盾も塵芥と変わらない。不朽不滅の物質を己の思念で塗り潰す。

 人類への呪われた贈り物(ギフト)、科学のメスを狂わせた最も新しい魔法、これぞまさに念波動(アルコン)の真髄――現実を上書く超常現象(・・・・)の本領である。


「……おっさん、さっきの話だけど、少し違うみたいだぜ。防御力はともかく、攻撃力ならハガネマルにいい線まで近付ける」


 哲人も、強い念奏者を精太以外に知らない訳ではない。

 しかしこの一撃、三日目の超機獣を一撃で殴り倒したのも納得だ。

 これがハガネマルの大樹の様な腕で放たれようものなら、どれだけ、一体どれだけの。


「オレさ、これでも期待しているんだ」


 想像を掻き立てられていた哲人を、精太の前向きな言葉が現実に戻す。


「おっさん、オレの念波動にびびってないよな。三日前も、今もさ」


 この三日間、幾度となく向けられた真っ直ぐな目。逸らされない瞳。

 少年の穢れのない心を体現するそれは、紛れもなく赤城精太の個性と言えた。

 嘘はない。彼は確かな期待を抱いて、衛守哲人を見つめている。


「そういうのも強さの形の一つなんだろう? 杉本のじいさんに浮気しかけて悪かった、念波動の強弱が強さの全てじゃない事を教えてくれよ」


 哲人は思わず吹き出した。

 浮気なんて、興味の湧いたものに目移りするのが当たり前の歳で気にする事かと。

 可愛い事を言うな。そう言われたら、精太が選んだものにどれだけの価値があるのか、体を張って分からせてやりたくなるじゃないか。


「腰に武器がマウントされているんだが、使うか?」

「分かって言っているだろ。オレのパンチの方が強いぜ」

「だろうな。あんなもの、弾の見えない大砲と変わらん」


 対する俺はこれだと、哲人のウォーキャリアは腰からそれを抜く。

 杖、と呼ぶには些か短く、手に持つロボットの肘から指先までの半分程しか丈がない。

 ――その先端が光ると、瞬く間に光が奔り、杖の三倍を超える長さの、僅かな反りを有する刀身を形成する。

 ここにきて刀の柄だったのだと、精太は漸く認識した。


「剣、刀ってやつか。格好良いじゃんそういうのも」

「……そうか、ウォーキャリアを使っていないとそういう反応になるのか、やり辛いな」


 言葉とは裏腹に、何故か少しだけ嬉しそうな哲人の心中を、精太は読めなかった。


「こほん。さあ、好きにかかって来な。剣と拳だ、リーチの違いを意識しろよ」

「オレのパンチを見た後でそれを言うのかよ」


 大砲になぞらえたくせにと、精太も少し笑ってしまった。

 ……少年に、手加減をするつもりはない。

 一本下駄の件を見たのだ、目の前の大男が体捌きに熟達しているのは明らかだった。

 そして恐らくは、握る得物の使い道にも。

 練達の古参兵と相手を見て、全力で挑む事を心に決めている。

 故に、リーチというアドバンテージを活かすべく、この初手に先程の必殺を放つと。

 自分の中の念波動を、腕の伸びる先に、その向こうの彼方にまでぶっ飛ばす。

 このイメージが実現する不可視の大砲を当てる為に、その目の照準を哲人から離さずに。


「念波動とは、詰まる所粘土だ」

「…………」

「ああいい集中力だ。今は考えなくていい、終わった後で考えろ。お前の抱える粘土はプールの様にでかい。それに流れるべき出口を与えて、押し流したのがあの――」


 話の最中に、容赦なく仕留めに掛かった右腕の一撃。

 精太が名前を付けていない為、念波動拳とでも呼ぶべきそれは、一撃目と寸分違わず、少年の眼前を粗方消し飛ばした。


「――パンチなんだが、怒涛の勢いは申し分なくても、如何せん発射台が未熟なのさ」


 果たしてどういうからくりか。

 哲人のウォーキャリアは、精太が繰り出した拳の右斜め前に、その剣身は右腕の上に置かれていた。

 それが意味する所は、精太にも分かる。実戦であったのなら、右腕は繋がっていなかっただろう。


「狙いが先に来ている。溜めに溜めた渾身の一撃、当てるという意志が雄弁に過ぎる。俺に当てる、何時殴ると、全身で其処まで馬鹿正直に語れば、もう分からない事の方が少ない。弾を発射した瞬間には、弾道に俺が居なかったと気付けたか?」


 無言の精太に答えを見て、哲人は敢えて強い語調ではっきりと告げた。


「念波動でゴリ押し。このままだと超機獣は倒せても、ヤマト級(にんげんあいて)は難しいぞ」


 真っ直ぐだった瞳が揺れたのを確認して、哲人は色々な疑問に合点が行った

 六ヶ月後の何かとはつまりそういう事で、それに備える目的で据えた教官か。

 対人戦の技術習得ならば、成る程、自分以上の適任はそうそう居まいと自負している。

 そして衛守哲人が適任であると理解しているのなら、経歴も洗われていた訳だ。

 ならば司令に毛嫌いされているのも頷ける。

 第二の人生を楽しめなんて別れ際の上司の甘言、信じていたつもりはなかったが……やはり人は簡単に別人になど成れないのだろう。この基地を叩き出されないだけ良しとしなければならない。


「それじゃ復帰無制限で勝負に付き合うから、頑張って念波動を空っぽにしような」

「……復帰、無制限?」

「ああ、破壊されてもその場で復活する、ウォーキャリアを動かせる念波動がある限り。だからまぁ、次から寸止めはしないぞって話よ」


 なにはともあれ、教官として教えるべきものは山ほどある。。

 まだ三日だし大丈夫だとは思うが、何かの間違いで超機獣が現れない事を祈りつつ、当初の目的であった念波動の引っ剥がしと、楽しい使い方を身体で覚えて貰うとしよう。





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