3話 エルフの王女
「一緒にですか?」
「はい。ですが今すぐ決めるのは難しいと思いますので、一度ここにいる人たちを街に送った時、返答をいただけませんか?」
「わ、分かりました」
一旦話が終わり、街に戻り始めた。
(それにしても王女様とパーティか......)
まだこの人が王女だと決まったわけじゃない。でも雰囲気や話し方、行動すべてが一般人とは違う感じがするのも確かだ。だから嘘だとも思えなかった。
街に戻るとき、王女と名乗った人が奴隷になっていた人を励ましていた。
(普通そんなことできるか?)
王女と名乗った人もさっきまで奴隷になっていた。それなのに自分のことは二の次にして、他の人を励ましている。こんなことができるのは敵が奴隷の中に潜入しているケースと、本当に肝が据わっている人のどちらかだ。
まず前者なら仲間が殺されたとき、少しばかり動揺するはずだ。でも俺はそれを確認することができなかった。だからこっちの予想じゃないと思う。
後者に関してはいろいろなケースがある。普通の人でも死を覚悟している人だっている。例えば俺みたいな冒険者。でももし冒険者だったら助けた時名乗るはずだ。だからこの場合も無い。後考えられるケースは本当に王女や貴族であること。
王女や貴族は市民を第一に考えている人が多い。なんせ市民がいなくては国は成り立たない。だから自分の命より市民の命を案ずるケースもなくはない。
(本当に王女様なのか?)
そう思いつつ観察する。すると俺の方を向き話しかけられる。
「どうかしましたか?」
「いえ、それよりも大丈夫ですか? あなたもつかまっていたので」
「私は大丈夫です」
「そうですか」
話が終わったタイミングでつかまっていた人たちが歓声を上げ始めた。何事かと思ったがすぐにわかる。
(街に着いたのか)
そして街まで送り届け、警備の人に話を通す。10分ほど話すと国が市民として迎え入れてくれることになった。
(よかった......)
つかまっていた人たちと別れる。全員がお礼を言ってくれて嬉しかった。ギルドに向かってクエスト報告しようと思った時、服を引っ張られる。
「ねぇ。話したこと覚えてる?」
「パーティを組むって話か?」
「えぇ」
そう言って俺をじっと見つめてきた。街に来るまで観察をしていたが、悪そうな人ではないと思った。それに今はフリーでありやることもない。
(これも何かの縁だよな)
「いいよ。シュットガルド王国まで届ければいいんだよな?」
「良かったわ。じゃあ少し話したいことがあるから二人きりになれるところはあるかしら?」
二人きりになれるところか......。すぐ思いついたところは俺が泊っている宿。でも女性と二人きりで部屋に入るのはまずいよな。そう思っていたが、この人は
「あなたの部屋とかはどうかしら?」
「え? でもそれは......」
口ごもってしまう。なんせ二人っきりだぞ? そんなの普通の人なら断るはずだ。王女様の顔を見るとなぜか一切の迷いがなさそうだった。
「別に私は気にしないわよ。それでどうかしら?」
「わかった」
了承して部屋に案内する。
「じゃあ私から自己紹介しますね。先ほども言いましたがシュットガルド王国第三王女、ナラカ・シュットガルドと申します」
「あ、はい。フィン・エンワードです。よろしくお願いします」
「口では王女といっても信じてもらえませんよね? なのでこのことは内密にしていただきたいです」
そう言ってナラカさんはネックレスを外す。すると耳が長くなり、髪が黒色から金色に変色していった。
「え? これって......」
「はい。エルフです」
驚きを隠せなかった。エルフって実在していたのか......。
「そしてこれを」
先ほど外したネックレスを渡されると、光り出して王家の紋章が出てきた。
「これしかできませんが信じていただけましたか?」
(本当に王女様だったとは......)
言葉が出てこなかった。エルフってだけでも驚いているのに王家の紋章を見せられるなんて......。
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