伝説の大魔王はブラック企業の社長だが世界をコントロールするためのおにぎりを山から落として叱られる
「なろうラジオ大賞2」参加により千字以内です。
本編に組み込んだので検索除外にします。
ある日の魔の山にて。
「いや、だからね。後で処理しようと思ってたんだよ? だけど余りにも多くてさ。まさか転がるとは思わなかったな〜」
「思わなかったな〜、じゃありませんよ。処理が追いつかないからと、丸く圧縮しておいたらそりゃ転がりますよ。三角のおにぎりだって転がるんだから。」
「バグをそのまま置いておいたらまずいかな〜と思っただけだよ。まさか落ちた先が穴じゃなく、人の中だったとはね。探しても見つからないはずだよね。」
「探し方がヌルいんだと思います。温泉も熱いのがお好きですよね? もっと熱を込めて探すべきでした。」
僕は猿田といいます。日本じゃ神様をやってますが、この異世界にバグ取り会社の社長として出向してきてます。
今ここで怒ってるのは、お手伝いの太田さん。僕の子孫の転生者だと思うんだ。多分ね。彼女の愛する人を僕の不手際でバグらせちゃったわけだから、怒られて当然だけどさ。お陰でいい人材をゲットできたんだから、結果オーライでしょ。
「ところで、西の分社にもバグ処理を負担してもらう提案書は読んでもらえましたか?」
西の分社かあ。あっちの神は自由だからな。絶対無理だと思うな。結局僕一人があくせく働くことになるんだな。
「うーん、太田さんも解析の方を手伝わない? 素質あると思うんだよね。」
「さすがに元素まで見るスキルを身につけるには、人の身じゃ時間が足りません。」
「じゃあ神になることを考えてみない? 悪魔でも天使でもいいけど。」
「お断りします! そもそも、アフターサービスが面倒だからって悪の振りするなんて、とても高名な神のすることとは思えません。」
「いや〜悪はいいよ。黙って拐って来ても、無事に帰せば咎められないし。厄が取れれば人生上向きって感謝さえされちゃうし。」
人がバグると厄として体に貯まるんだけど、それを取るのが部下の仕事。僕はバグを解析して、ゆくゆくは自動探知駆除システムを作りたいと思ってるんだ。
「助けた人間にいつまでも縋りつかれては困るというのは分かりますけど……」
「人手不足だからね。僕もかれこれ何百年休んでないかな〜」
「あの……私たちばかり申し訳ありません。」
「気にしないで。君たち以外は人じゃないから、数千年くらい休まなくても大丈夫。」
「それ……オフレコじゃ?」
「おっと失礼。聞かなかったことにして。」
「かしこまりました。」
僕も休んで奥さんを呼び寄せようかな。岩戸の前の裸踊りが恋しいや。
終
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