7 優しさにふれた
私は記憶と夢の中で迷子の様に彷徨っている。
優しくて柔らかい繭に身体が包まれている様に温かい。
目覚める気配は無かった。
この世界でも、あの怖い感情や冷たい視線、胸ぐらを掴まれ、私は死ぬの?
これで、お父さんとお母さんのところへ行けるんだ!
って思ってたのに、何でそっちに行けないの。
「待って、私を1人にしないで!
私も一緒に連れて行って!
お父さん、お母さん!!」
走っても走っても追いつけない、待って!
私も、私も一緒に、夢の中でも意識が遠のき、現実へと戻された。
「サーシャ?」
私は不安そうなサーシャに少し微笑んだ。
サーシャは、私が気付いて良かったと抱きしめてくれ、私が気付いた事を伝えに行った。
また走って行っちゃったのね。
サーシャってば急いじゃって、可愛い。
私は窓辺で、また外を眺めていると、視線?
その視線を探したんだけど、見つける事が出来なかった。
何だったんだろ?
でも、嫌な視線ではなくてこちらの様子を伺ってる感じの視線だったのよね。
走って来る音に振り向き。
誰か来た?
勢い良くドアが開いた。
私は苦笑いをし。
「戸が壊れちゃいますよ?」
「意識が戻って良かった。
本当に良かった!」
おじさんに泣きながら、抱きしめられたよ。
後ろに居た、サーシャと目が合い、お互い苦笑いだ。
「心配かけてすみませんでした。
私がもっと正確に出来てたら良かったんですけど。
あの後、大丈夫だったんですか?」
おじさんもサーシャも『あんな親子は出入り禁止!』声がハモってる、さすが親子!
私は思わず笑っちゃった。
この10年笑った事無かったのに、ここに居ると自然と笑顔になれる。
「グウウウゥゥッ!
やだっ、恥ずかしい!」
両手で顔を覆った。
おじさんに下に行くか聞かれたので、頷いた。
よろめく私をおじさんがお姫様抱っこし食堂へと来たんだけど、冒険者の皆さんにコレも食え、アレも食えの嵐でお腹いっぱいだよ。
こんなに食べた事無いから、直ぐにギブだった。
「宿の名前の事なんだけどな、ココネが決めてくれないか?」
「えぇっ!
私なんかが名前を付けても変なのになっちゃいますよ」
「大丈夫だよ。
ココネなら良い名前が、もう浮かんでるんじゃない?
その名前を教えて」
私はモジモジした後『幸せが帰ってくる』『幸福の再来』『幸運が訪れる』の花言葉である『スズラン』を考えていた。
「スズラン」
「スズラン?
聞いたことない名前だけど、何か意味とかあるの?」
「スズランは白くて小さな花なんです。
花言葉が『幸せが帰ってくる』『幸福の再来』『幸運が訪れる』なので、この宿屋に幸運が訪れますようにって願いを込めて、スズランの言葉を考えていました」
「良い名前だな。
幸運や幸福は縁起が良い。
今日から『スズラン』にしよう!」
おじさんを含めたみんなも大賛成してくれた。
その時だった。
また誰かが?
子供?
私は思わず駆け寄り。
「どうしたんですか?
怪我、してるんですね。
直ぐ終わりますから待って下さいね」
私は、手袋をのけて子供の頭に触れると傷が消えた。
間に合って良かった。
「あんた、ここの事を誰に聞いたんだい!」
えっ?
みんなどうしたの?
何でそんなに怒ってるの。
「だ、誰にも言いません!
言いませんから見逃してくれ!」
私は今の状況が分からないし、かなり怖くてパニックになり、立ち眩みがしドーランに支えられ何とか立つことが出来ている。
ドリーに「ココネ、こっちに座って」座ったは良いが、まだ言い合いをしている。
「何で言い合いになってるの?
私のせいで迷惑をかけているなら私はここを出て……」
「ココネは、私の娘なんだ!
……迷惑だなんて思ったこともないんだよ。
ここにいるみんなも同じで、迷惑だなんて思ったりしてない。
だからここにずっといてほしい!」
おばさんの言葉に涙が溢れ、涙が頬を伝ってポロポロ落ちて行く。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「早く読みたい!」
と思ってくれたら
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