第98話 高所探し
「失礼するわね」
【粉砕者】と【要塞】は同じ部屋となり、モカちゃんとアル君も同じ部屋だ。
エルザさんと【猛吹雪】というペアを作り、余った僕は一人部屋だった。
正直一人じゃないと休まらないからありがたいのはありがたかった。
正確に言うと、今はロミア猫がいるので一人ではないのだが、眠るとき以外はそこまで気にならない。
「リイランさん、お疲れ様です」
そして現れたのは魔王。
「ごめんなさい。あんなことになるなんて思ってもみなかったわ」
「でしょうね、僕もですよ」
彼女は椅子に座り、テーブルの上に肘をついて頭を抱えていた。
多分、見積もりとしては魔神の心臓を狙うのは僕。そしてレイナさんは魔神戦に専念してもらうことで了承を得られるはずだった。
だったのだが、レイナさんが感情的で取り付く島もなかった。
「レイナちゃんがあんな風になるなんて、ゼロ君は本当に愛されているのね」
「……流石の僕でも恥ずかしいですよ、あれは」
あの時僕の顔は真っ赤だったと思う。みんな触れないようにしてくれていたんだろうけれど。
弟子を大切にしているのは勿論わかるんだけど、公私は混ぜない方がいいと思う。ただ、実際僕が同じ立場だったら同じような反応をする気もするが。
「レイナさんがどこにいるかわかります?」
「……話が早くて助かるわ」
流石にレイナさんが断った原因に僕があるので、僕が説得しに行くのが筋だろう。自意識過剰かもしれないけど、レイナさんを動かせるとしたら僕だけだと思う。
魔神と戦ってもらわなくてはいけない。
勿論、その過程で僕は死ぬかもしれないけれど、それは仕方ないのではないか。
元々死んでいるような人間だし、僕的には一度救われた命は有効活用したい。
「多分、魔王城の一番高いところにいると思うけど、連れて行ってあげた方がいいかしら?」
「あ、いえ。探すのでいいですよ。もしかして入っちゃいけないとか僕がいたらまずい場所とかありますか?」
首を横に振られるから僕は自由に魔王城を探索することにした。
そもそも魔界には昼と夜があるのかもわからないから、時間を気にせず歩いてみることにする。
「他の招待客を刺激しないように魔族を控えさせているけど、もしかしたら遭遇するかもしれないわ。レイナちゃんに会うまではロミアをつけさせてもいいかしら」
僕は了承する。
間違って魔族に襲われたらシャレにならない。
とりあえずリイランさんが立ち去ってから、ロミアちゃんは尻尾を振りながら床に着地する。
「ロミアちゃん、あまり行っちゃダメな場所の時だけ教えてくれる?」
にゃあ、と一鳴き。
よし、行こうか。僕はレイナさんを探しつつ、魔王城をぶらぶらすることにした。
魔王城をぶらぶらと歩くのだけれど、サキュバスのメイドやスライムの清掃員が多く出会う気がする。
皆僕が歩いているのを見かけると物珍し気に近づいてくるのだが、ロミアちゃんを見てすぐに自らの仕事に戻っていく。
「流石に猫ロミアちゃんでもみんな幹部だって気が付くんだね」
「……にゃあ」
不満げに鳴かれるのだが、そういえば僕の場所に来るときだけ人型なんだっけ。
「お、ここの階段登ったら上に行ける?」
ロミアちゃんは先回りして尻尾を横にふるふると動かすのを見て、僕は別の道を探すことにする。
魔王城は、正直一人で巡ったら数日はかかるであろう広さであり、魔族に使われている文字で色々場所が書かれている。
ただ、僕は読めないからあまり意味はない。
図書館や、武器庫、食堂など気まぐれに僕は観光しに行きつつこの魔王城の構造を把握していく。
その状況から、どうやったら上に行けるのかを推測していく。
通常このような要となる城では外部からの攻撃を想定されている。
そう考えると内部の中心部分から、一見いけないようなルートから外に出られる道があるはずだ。
そしてうろうろすること数時間、ようやく外に出られそうな梯子を見つけられる。
ロミアちゃんに確認をとっても、彼女はしっかり頷いている。
そしてもう彼女はついていかないようで、梯子のところで待っている。
「もしかしたらレイナさんと一緒に降りてくるかもしれないから部屋に戻ってていいよ」
上を見る。
金属で作られている梯子はかなり上まで続いているのだが、僕はとりあえず登っていく。
多分3階建てくらいの高さで登っただろうか。
上には丸い扉を抜けると、直接屋根に繋がっていた。
三角屋根でかなり角度が付いており、僕は注意深く歩みを進める。
「……空を飛びたい」
屋根を伝って進んでいくと近くには一番高いであろう塔を見つけられ、そこに梯子でさらに進んでいく。
多分僕が手を離して落ちたら即死だと思われるので、ちょっとだけほんのちょっとだけ緊張する。
うん、手汗なんて溢れてないよ。
ああ、下を見たらだめだ。
というかこれ降りるとき絶対にレイナさんに手伝ってもらわないとやばいよ、これ。
多分一般的な人が登ることを想定してないでしょ、これ。
そして風の音が気になり始めたあたりで漸く終わりが見え、塔の頂上にたどり着く。
塔の頂上は平面で数人は腕を伸ばしても寝転がれる広さとなっており、また周囲には低い壁が囲ってある。
「……何やってんのお前」
レイナさんは塔の屋上で寝そべっていた。




