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第91話 五大賢人集合

「【不可視】、待ちくたびれましたよ」


「すみません、なるべく急いだつもりだったんですが」


 悪びれもせずに僕は呆れかえっていた【猛吹雪】に返答する。

 急いだつもりというのは、別に急いだ結果ではなく努力目標なので。


「その眼帯はどうした?」


 【粉砕者】は心配そうに聞いてくれる。

 そうか、よく考えたらモカちゃん以外の賢人は僕がぼっこぼこのめっためたにされたことを知らないのか。

 勿論、それを説明する必要はないわけだが。



「ちょっと転んで目にナイフが刺さりました」


 とか適当なことを言いつつ、僕は自分の席には……座らない。

 なんか座ったらロミアちゃんがまるで護衛のように、今回の主賓を立たせるというのはあまり宜しくはない。



「まあそれはいいとして、ちょっと急ぎで皆さんに用事があったんですよ」


「それはいいのかのぉ……」


 【要塞】は苦笑いを浮かべているが、どうでもいいのでスルーしておく。



「みなさんで魔王城に行きませんか?」



「…………」


 流石の沈黙。

 護衛軍団は勿論話さないと踏んでいたが、他の賢人たちすら全く話さないとは思いもしなかった。


 モカちゃんはロミアちゃんが魔王軍であることを知っているから、ある程度慣れてはいるんだろうけれど、他三人は完全にノーリアクションだった。



「ちょっと魔王からお呼ばれしているんですよ」


「……おい、少し落ち着け」


「いや、落ち着いているんですけれど、とりあえず結論から先に話そうかと思って」


 やれやれ、といった表情で呆れられた。

 少なくとも、嘘だと疑われたわけではないようだが……



「一応先に紹介しておきますね。魔王軍三大幹部の一人?ロミアちゃんです」


 一人という数え方があっているのかもわからなかったが、とりあえず隣にいる褐色美女をみんなに紹介する。


 エルザさんとアル君を除いた護衛の三人は同時に臨戦態勢へ移行。

 武器を僕とロミアちゃんに向けている。


 多分、僕が何か不審な動きをしたら即座に攻撃してきそうだ。



 ただ、流石は賢人たち。テーブルに腕を乗せたまま黙って僕らを見ている。


 ロミアちゃんはロングスカートの裾をもって軽く膝を曲げながらお辞儀をする。

 前もみたけれど、優雅な動きだ。



「……そうですか。【猛吹雪】です」

「ほぅ、【要塞】じゃ」

「はぁ……【粉砕者】だ」


 モカちゃんは黙ったままだった。

 まあ面識があるからいいんだけれども。


「意外と護衛さん方と違って冷静なんですね」


「あなたが連れてこなければ、即座に殺しているところ」


 【猛吹雪】がため息をつきながら、頬杖をついたまま答える。

 おお、それだけ僕は信頼されているという事か。まったく誰だよ、こんなに信頼できると勘違いさせている奴は。



「【支配者】、あなたも挨拶なさい」


「あ、【支配者】と護衛は面識あるんで」


 思ったよりも話が通じそうなメンツで僕は安心する。

 護衛たちは、守護する対象全員が全く戦う姿勢を見せていないことから、互いに顔を見合わせたまま後ろに引き下がった。



「で、これがその招待状になります」


 多分ロミアちゃんが渡そうとしても警戒されると思い、まず僕が受け取り、それをエルザさんに渡す。

 


「読みながらでいいんで適当に聞き流してほしいんですが、何やら魔神が復活するらしいですよ」


「……随分あっさり言うものね」



「いや、なんか溜めても意味ないかなーって思いまして」


 流し読みをするわけにもいかなかったようで、彼らはしっかりと文章の隅から隅まで視線を動かしていた。

 特に、何かしらの仕掛けがないのか、裏がないかなどを確認しているらしい。



「どうします?」


 【粉砕者】は困ったように周囲を見回した。

 対応に困っているようだ。


「ふむぅ……」


 口を開くが実際に言葉を出せない賢人。それだけ不用意な発言は危険という事だ。

 僕からしたら答えは決まっているのだけれど、それはロミアちゃんやリイランさんを知っているし、レイナさんと話したからか。



「……【不可視】、あなたはどうするつもり?」


「え、普通に行きますよ。だって選択肢ないですし。それよりも何か質問があればここにいるロミアちゃんに聞いてみては」


 ロミアちゃんの方をちらりと見ると、彼女も質問は受けてくれそうだった。



「しかし、いきなり言われてもねぇ。私は【不可視】君を信じるから行くけど」


 モカちゃんが先陣を切ってくれる。

 さて、誰か一人でもすぐについてきてくれないだろうか。


「それなら直接魔王にでも聞くさ」


 一息ついて、【粉砕者】は言う。

 つまり、彼もついてきてくれるという事だ。よかった、この二人は比較的動いてくれるとは思っていたが。


 さて、残りの重鎮の2名。



「選択肢は……なしか」


 【猛吹雪】は何を思う。

 一番長く賢人をやってきた彼女は。恐らくこの年齢であれば、もしかしたら魔神という話もある程度知識にはあるのかもしれない。勇者ということも伝説ではなく、真実だと知っているかもしれない。


 招待状の中では特に触れられていないのだが、魔族と人間族の共闘の時点で察していてもおかしくはない。



「わかりました。質問はいりませんよ」


「え、いいんですか?」


「何故あなたが驚いている?」



 流石の僕でも、もう少しひと悶着あると思ってましたよ。

 だって、休戦協定を結んでいるとはいえ敵対勢力だし。


「その代わり【不可視】、今この場であなたが知っている情報をすべて話なさい」


 僕はちらっと【要塞】を見るが、彼も異論はないみたいだ。

 ありがたいけれどってこいつらちょろいと思われるよ。



「ロミアちゃん、ごめんね。別に君がいなくてもなんとかなったかもしれない」


「いえいえ、お気遣いなく」



 とりあえずどこから話そうかな。

 レイナさんや僕については話さないとして、できる限り情報を落とす。


 普段僕が座っている場所にはロミアちゃんに座ってもらい、僕は机の上に体重を乗せた。


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