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第90話 会議室へ

「ゼロちゃん、おはよう」


「おはようございます。やっぱりちゃん付けのほうが安心しますね」


 翌朝、レイナさんは朝から料理を作っていた。

 これはまた珍しい。


 昨日ずっと呼び捨てで呼ばれていたのは、ずっと緊張していたんだろう。自分の生い立ちや僕の魔力について話すと決めていたんだろうし。



「今日は魔導評議会に行くんだろ。ロミアも呼んでるから二人で行ってこい」


「レイナさんは行かないんですか?」



「あたしはちょっとやることがある」


 そうですか。それならロミアちゃんと二人で行こうか。

 こうして液体と人形の二人で魔導評議会に向かうことになる。


 毎度毎度馬車が森の外れまで来てくれるのだが、これって誰がどんな指示をしているのだろうか。

 まあ、別に関係ないか。



「ロミアちゃん。基本的に話は任せてもいいかい? それとも僕が話した方がいい?」


「どちらでもよろしいですよ。ただ、ゼロ様の方が穏便に済むかと」


 まあ、それもそうか。

 ここでいきなり魔王軍幹部が出現というのは流石にあまり精神衛生上宜しくないだろうし。


 馬車に揺られながら、褐色美女と僕はのんびりと雑談をする。

 特に魔王城での出来事や、他の魔族については興味深く、単純に面白かった。


 普段ロミアちゃんは密度を濃くした状態で猫として動いているようで、完全にリイランさんのペットみたいな立ち位置らしい。


「他の幹部とは仲は良いの?」


「そこまでですね。種族も皆違うので、魔皇帝への忠誠以外は共通点がありません」


 そんなものか。

 僕ら人間は種族としては同じだから比較的協力しやすいのだろう。



「魔力量としては恐らくゼロ様を除いた五大賢人と引けは取らないでしょう」


 なるほどなるほど。

 人間と魔族で戦争にならなくて本当に良かった。


 僕が戦場に立たされると瞬殺されてしまうではないか。


「魔王城へ来られる際には彼らとも会うことがあると思います」


「それもそっか。楽しみだね」


 完全に他人事。

 僕はあくまでも彼らの間に立つ人物であり、魔王城に観光へ行くわけだ。



「お待ちしておりました、【不可視】様」


 魔導評議会ではエルザさんが待機していた。

 別に僕はここに行くことを告げているわけではない。どこでばれたのだろうか……そう思ったのだったが、あっさりと回答を受け取った。



「レイナ様より事前に言われていましたので。他賢人たちも全員集合しております」


 僕は眼鏡をかけている彼女に感謝を伝えたのだが、そういうことだったか。

 てっきり賢人ってずっと魔導評議会にいると勝手に勘違いしていたけれど、それぞれに担当範囲がある時点で間違っていた。



「そしたら、すぐに向かおうか」


 別にどこかに行く用事があるわけでもないのでそのまま会議室へ向かう。

 ロミアちゃんはその床まで着く長い銀髪を棚引かせて踏まないようにしている。というかそれ邪魔なんだったら短い方がいいと思うけれど。


「エルザさん、この前はありがとうございました」


「いえ、私はレイナ様の命令に従ったまでです。それよりももう大丈夫なのですか?」


「はい、完治……はしないですけど」


 僕は眼帯をつけている方の目を軽く触りながら答える。

 当たり前ながら、潰された眼は復活することなく片目で生きることを余儀なくされている。


 こういう時魔力があればな、とは思うけれど。



「でも、こっちの方が僕は男前じゃないですか。気に入っているんですよ、この眼帯」


 真面目な話題にならないように、僕はいつも通りの口調のまま冗談を言う。

 因みにこの眼帯はレイナさんが作ってくれたものであり真っ黒い布で作られているのだが、黒髪黒目に黒い眼帯、黒い服装なんて僕自身に色は少ない。



「そうですね、元々男前だとは思いますよ」


 ……金髪美女にあっさり流される。

 渾身のギャグがスルーされるなんて悲しいな、僕は。



「さて、と」


 くだらないことを言いながら、会議室に向かった。


 そういえば、あの事件以来この部屋に入るのも初めてだ。

 前回は騙されて五大賢人セレモニーに巻き込まれたわけだし、全く誰のせいだか。



 さて、今一何を話さないといけないのかを理解はしていないが、単純にみんなで魔王城に遊びに行こうってことが伝わればいいはず。


 ……今更だけど、魔王城ってどこにあるんだろうか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] レイナさん墜ちたかぁ…感慨深いものだ()。眼帯がカッコいいと思った。(小並感) [一言] 後10話で百話ですか…。これからも無理をなさらずに頑張って下さい。
2020/11/06 10:18 ハリケーン
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