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第82話 新たなる訪問者

「ふぅ……片目って意外と不便だ」


 僕の過去を話してからは交代で介護をしてもらっていたのだが、途中でロミアちゃんが魔王城に戻り、モカちゃんは仕事をさぼり過ぎていたようでアル君に引きずられていった。

 アヤメちゃんは一度ダンゾウさんと話しに行くと帰っていったため、殆ど自分の師匠と弟子に助けられていたのだが……


 そして僕がぼっろぼろにされてから数か月後、折れた腕や刺されまくった足もかなり良くなって、今はもう一人でも生活できるようになっている。ようやく片目の生活にも慣れてきており、セリカちゃんもまた学生生活に戻っていった。


 完全に理事長の権限でセリカちゃんは休学を少しだけしていたみたいで、何故か僕が優先されていたみたいだ。

 高等部での生活が新しく始まるというのに、それを捨てて僕を介護するなんて正気の沙汰だとは思えなかったけれど、何か言って不機嫌にすると動けないことをいいことに色々悪戯をされるので僕は黙って従っていた。



「…………そうか、もうそろそろセリカちゃんと出会ってから1年くらいなのか」


 僕も19歳になったわけで、この1年がものすごいこい1年だったわけだ。

 もう5年くらいたっているんじゃないんだろうかと思えるような期間だったわけだが、それだけの期間だったわけだ。


 先月からはレイナさんがドクターを捕まえるためにいなくなってしまい、のんびり一人での生活をしていた。


 僕が行動不能の間、レイナさんが一度だけ世界樹の葉を取りに言ってくれていたが、流石に朝露に濡らすわけにもいかないので僕が取りに行くことにしていた。



 それくらいには回復しているし、そもそも僕をモンスターが襲うということが基本的に起きないので行動するのはそう難しいことではない。


 ネーカやペガス君にもたまにおやつを与えに行き、ほのぼの余生を過ごしていた。




 五大賢人について引退は保留とされており、どこで保留とされているのかはわかっていない。レイナさんが握り潰しているのかもしれないし、モカちゃんが止めているのかもしれない。


「まあ、もう僕はここから出るつもりはないし、どうでもいいか」


 モカちゃんはこの館を自由に通れるわけだけれど、精神系魔法に特化している彼女は僕を連れ出すことはできないだろうし。



「ネーカ、ごめんね。ここまで連れてくれて」


「イイ、ぜろト散歩」


 別に何か用事があってネーカと散歩をしているわけではない。


 世界樹の葉は十分に確保したし、森の異常もない。



 ネーカは僕の傷について気が付いているのか気が付いていないのかはわからないが、変わらない態度で接してくれる。

 この蛇からしたらなんでもいいのだろう。毎回器用に僕に巻き付いてくるわけだが、絶対に締め付けてくるわけでもないから傷があろうとなかろうが関係はないし。



「最近はどうだい? 不審者はいる?」


「ウーン、イナイ」


 何人か襲ったみたいだが、別に僕からしたらそれはどうでもいい。

 この森に入る時点でそれ相応の危険があることくらいは周知の事実だろうし、更に言うとネーカに敵対する時点でそれは愚行でしかない。


 人間の強さの上限はある程度わかっているつもりだが、この世界は脅威になるモンスターが無数にいるのだ。

 ネーカやペガス君も勿論そうだろうし、山の上で合体しているオールだってそうだ。


 みんなレイナさんが近くにいるから過小評価されているものの、恐らく十分にこの世界を破壊する可能性はある。



 ロミアちゃんもそうだが、実際のところどれくらい強いのかは僕にはわからない。

 台所にあるカップでペガス君のいる湖の水の量を測るようなものだ。


 因みにレイナさんの場合にはオーテルダムにある海を計測するようなものかな。


「それはよかったよ。あと、この辺でいいよ」


 ネーカは慎重に頭を下げ、その上に乗っていた僕は衝撃を多少感じながらジャンプで降りる。

 多少痛い程度であれば、最早気にならない。

 

 全て剥がされた爪が完全に治るまでは家事がかなり苦痛だったのだが、レイナさんがそれまで完璧にこなしてくれていたから滞るということはなかった。



 ……今にして思えば、僕が館に来る前には掃除がされていたのにも関わらず、来た後にはレイナさんは家事をしなくなった。

 つまり、あれは僕のやることを与えてくれていたのだ。


 心が壊れた少年に何かやることを与えることで、勝手に生きる意味を失わないようにしてくれていたのだ。そう思うとあの無茶ぶりの修業も、死を忘れさせてくれていたのかもしれない。


 恐怖感はたくさん与えられたけれど。



「じゃあまたね」


「ウン」


 名残惜しそうに彼女は僕を玄関の近くで解放してくれた。

 


 僕は扉を開けて、いつも通り紅茶を飲むために居間に向かっていた。

 最近は何もやらなくていいので、本当にのんびりだらだらとしていることが多かった。




「ごめんなさいね、勝手に入っちゃった」


「…………え、っと」


 居間には誰かがいた。

 僕の知らない誰かが。

 

 真っ赤なロングヘアーに、温和的な真紅の瞳。出会えば二度見してしまいそうな綺麗な顔立ち、長身ではないものの身体の凹凸は十分にある抜群のスタイル。ただしその凹凸をなるべく目立たせないようなダブダブの漆黒のローブに身を包んでいる女性がそこにはいた。


 ……僕はわかる。

 この人は絶対にレイナさんの親族だ。これだけは命を張ってもいい。

 見た目だけで言うと、レイナさんよりも成熟している美女だがお姉さんとか従姉妹と言われたら納得してしまう。


 そんな人がいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。


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